日本の問題は数多い。
政治、経済、地震、原発、年金、TPP、ヤクザ、風俗、国民のモラル低下
どれも耳が痛いほど良く聞く。
『日本の問題』は
それらの問題を題材に、演劇という形でなにか一つ問題の解決をしようという試みだった。
僕が観たのは、Aチーム。
感じたのは、日本の問題は皆が共有している大きな問題だということ。
芝居を見るまでもなく、それら全てが問題であることを知っている。
その上で、演劇でないと表現できない物を探す作業だ。
なので、問題を提起されるだけでは、同じ日本人なら、「そんなことわかってるよ」
となる。
解決できないから、みんな困っているのだ。
その中でも、一つの問題解決を見せてくれたのは、
2作目のMrs.fictions『天使なんかじゃないもんで』
ヤクザの二人と、女の子の話。
役者三人による会話劇、終止笑いの絶えない三人のやり取りが、お客の心を掴んでいた。
どうも、この作品、他の人の感想では、日本の問題が題材になっていないじゃないか?
という意見が出るほど、日本の問題と言う物についてほとんど触れていない。
これは、コンセプトに反するのでは?と思いがちになるのだが、
これを観劇した人は忘れてはいけない。
登場人物達は救われていたということ。
ヤクザ、風俗、地震、原発などの問題を抱え、
ただ、暗く悲しい死への週末を受け入れるしかないという三人の話。
しかし、
覚悟を決めていた三人が、偶然知り合ったことで、
人とのふれあい、ぬくもり、やさしさを些細なやり取りの中から三人は覚える。
このあと死んでしまうという避けられない未来と対峙する三人。
どうしようもない絶望の中で、
去り際にはなす、ヤクザの言葉。「人間って死ぬとどうなるのかな」
返事を返す女の子。
この言葉、いや、やり取り全体を通して、
この作品は、日本の問題を救うはできなかったけど
登場人物の三人の心は救われたんです。
名言のような名言は一切出てこないけど、
それでも、一つ一つのやり取りには、なにか大事な物を感じさせてくれる暖かい物がありました。
この作品は、
大きな事象にばかり目を向けるのではなくて、
ほんとに小さな、一個人の心(日本の問題)を救ってみせることで、
この物語は成立しているのだと思いました
結局、人を救えるのは、神でも国でもなくて、人、なのかも知れませんね。
楽しい観劇でした。ありがとうございました。