地元松本の飲食店のおかみさんから、メニューを英語化してほしいと頼まれていると「ジョニー」が言ったことではじまった会話だ。
「サケ、鮭ならサーモンだろ、生っていったら刺身のことだから、刺身サーモンでいいんじゃないの」
そう応えると「ジョニー」肩をすくめて、
「オウッ、ソウジャナイヨ。モグパパノスキナ、『サケ』ノコトダヨ」
なんだ、生酒のことか。
それなら、火入れをしていない混ぜ物のない日本酒のことだろうから、「ピュアサケ」でいいんじゃないの。
すると「ジョニー」、
「ジャアネ、ジュンマイギンジョウトダイギンジョウハナンテイウ ? 」
ん ? そりゃあんた、そのまんまでいいんじゃないの。
スコッチはスコッチという意外にないんだから、純米吟醸や大吟醸を無理やり英訳するこたぁねぇだろさ。
説明文をつけてやればいいでしょ。
「ジョニー」先生、英語教師の集まりがあって東京に出てきたんだそうな。
彼と会うのは去年の12月、長芋掘りのあと松本に1泊したとき以来だ。
ずいぶん自身の英語教室は繁盛しているみたいで、4歳になった娘の「エレン」の世話と仕事に終われ、走る時間もなく、畑仕事も野沢菜漬けもおろそかになっていると言う。
ちなみに「ジョニー」の日本語(下世話なエロい言葉)の師は、このポンコツエロオヤジである
12年前の雨の夜、背の小さな日本人の女の娘と背の高い白人の男性がモグランポのカウンターに座ったことから始まったつき合いが、これほど長く家族ぐるみで続くとは思わなかった。
背の小さな女の娘は現「日本天然党・松本支部長」で「エレン」のママで、ヘンな外人はもちろん「ジョニー」だ。
あの日「ヒカル」ママが、彼は日本語を覚えているところなので英語で話さないでくださいと言ったので、オヤジは得意の英会話を封印して正しい日本語で話したのだった。
そして会話がすすむうちに、この外人エロネタに妙に反応するぜぃ、と内心ほくそ笑んで色々話しかけて親しくなった。
「ジョニー&ヒカル」のカップルは来店する時間が早く、当時の常連さんたちとはすれ違いだったので、彼らの存在を知る人はほとんどいなかった。
ところが野心に燃える浅草のチョキチョキ野郎、元祖調子コキの「バーバーくん」が何を血迷ったか日本語もろくに解さないくせに、ロンドンにチョキチョキ修行に行きたいと言い出したので、それなら付け焼き刃でもモノホンの英国人に教えを乞えと引き合わせたことで、一気に歯車が回りだした。
それからは「ジョニー&ヒカル」も常連さんたちと頻繁に顔を合わせるようになり、みんなともすぐに打ち解けた。
そしてモグランポ改装前の最後の夜、「ジョニー」がみんなの前で結婚宣言をして大盛り上がりに盛り上がったのはもはや伝説的だ。
いやはや、「ジョニー&ヒカル」との出会いは我が家には幸運だった。
また「バーバーくん」や「akkoちゃん」や「auちゃんパパ」もいてくれてありがたかった。
「アノネ、ワタシタチヒッコシタヨ」
なに ? あの南松本の昭和の香り漂う一軒家から越したと ?
「コンドハキタマツモトノエキノチカクニ、3カイダテカイマシタ」
えっ 買ったって ? 住宅を ? 戸建てを ?
「3カイノマドカラマツモトジョウトアルプスガミエマスネ。3カイハツカッテナイカラ、ミンナデトマリニクレバイイヨ」
ほんまかいなー、そうかいなー、そりゃやるもんだ。
そんならお言葉に甘えて、とっとと仕事を終わらせて今から行こう。
「ホントニ ? イマカライク ? デンシャナクナッチャウヨ」
冗談たい。
でも12月の長芋掘りのあと、泊めてもらえるならうれしいね。
「ジョニー」はほんとに遠謀のできる男だ。
物件情報をネットで調べて5分で決断、1週間後に契約したというからすごい。
それでも自分の仕事、娘の通学、もしリタイアした時でも売れるかどうかも考えた上での不動産購入で、遠い異国の地で自らの力で生きている実行力はさすがだ。
この生き様をヤカラたちや、千住の自宅組のみんなは見習わなきゃね。
「ジョニー」からの伝言。
「シバラクアッテナイダカラ、モグノミンナノカオワスレテキチャッタデスノデ、マツモトヘキタラトマッタライイダヨ。イイオミセザガシテオクヨ」
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