仙台市陸上競技場、開会前にトラックを走ってウォーミングアップができるのは、Aブロックのエリートランナーだけだ。
我らは競技場の周りをゆっくりジョギングして、身体をならす。
だが喉がいがらっぽく、痰が絡みついて呼吸がしづらい。
本来であれば風邪薬を飲んでいるような半病人は、出場しないほうがいいのだが、せっかくだからやるだけやるのだ。
10時5分、号砲とともにランナーの列が動き出す。
オヤジが並んだDブロックの集団が走れるようになるのにおよそ3分かかり、スタート地点の檀上から笑顔で手を振る「Qちゃん=高橋尚子」に見送られ、ランナーの集団は杜の都に走り出てゆく。
師匠はBブロックに並ぶ予定だったが、Fブロックのかあちゃんと小僧に付いて走ってくれることになったので、とりあえずは安心だ。
競技場を出て仙台駅方向へ、1㎞地点の通過タイムが5分11秒。
1万人弱のランナーが道路いっぱいに溢れ、なかなか前へ進めない状態が4㎞過ぎまで続く。
広瀬川を渡り仙台城の坂を上り、美術館の手前を右折、再び広瀬川を渡ったところで今回の最速スプリットタイム4分38秒を出すも、息はゼイゼイ、唇はカラカラで、7㎞の手前の給水所に救われる。
それにしても陽射しが暑く、やがて定禅寺通のけやき並木に入ると、その木陰にまた救われ、沿道の応援の熱さにも元気をもらい、仙台市役所のところで折り返して9㎞の辺りの中央分離帯寄りを走っていると、なんと「Qちゃん」が笑顔でハイタッチしてくれているではないか
可愛らしいランスカの「Qちゃん」の手は小さく、数百、数千のランナーとハイタッチしたせいか温かかった。
折れそうな心をねじ伏せ、青葉通を進んで10㎞通過、行きに通った道路の反対側を進んでJRのガードをくぐり12㎞の給水所へ。
喉の中が引っ付いたようで息ができない、コップの水でうがいをして、頭から首筋へ水をかける。
鼻の中もカラカラに乾いて、鼻呼吸が辛い。
もうチョッとのんびりしたいという気持ちを振り切り、あと半分の道程を走りだす。
呼吸がしにくいから脳に血液がいかないのか、貧血をおこしそうな気分で、腕の付け根から肘へかけてしびれが出てきた。
右の大腿四頭筋はテーピングをしてもらってはいたが、すでに違和感が出ていて、両腿がつりそうな感じだ。
フルマラソンの30㎞過ぎのダメージを味わいつつ、しだいにペースダウンするのがわかるが、どうにもならない。
スプリットタイムが6分12秒まで落ち、このまま失速を続けてしまうのかと思ったとき、後方が賑やかになり、「あと半分がんばろー」という黄色い声がしたので振り向くと、すぐ後ろに「Qちゃん」が迫っていた。
元気をもらいたいランナーの一団を引き連れ、金メダリストは軽やかにオヤジを抜き去ったが、そのほっそりした後姿に吊られて、1㎞ほど一緒に走った。
だがしだいに遅れはじめ、「Qちゃん」の姿はどんどん遠くなっていった。
それでもなんとか5分30秒台をキープしていたが、18㎞のあたりからガクッとペースが落ちた。
両脚がつる寸前で堪えながら走っていたが、もうそんなに持ちそうにない。
19㎞の最後の給水所で立ち止まり、ストレッチ&深呼吸&手鼻をかんで仕切りなおし。
八重桜の花びらがハラハラ舞う中を、フィニッシュの陸上競技場へ向かってスパートをかける。
競技場のブルーのトラックを半周したところで、再び「Qちゃん」が出迎えてくれて、本日2度目のハイタッチをした。
そして一気にFINISH
NikeのGPSWatchのタイムは1時間58分24秒、とうぜん公式タイムはもっと遅いのは間違いなく、まったく不甲斐ない成績というほかない。
競技場を見おろすベンチにすわって着替え、もう30分以上はハイタッチを続けている「Qちゃん」を見ていると、遠くにモグTシャツが現れた。
小僧と、その背中を押して走る師匠が制限時間内に帰ってきた。
師匠が手を離したら確実に歩いてしまう速度で、「Qちゃん」とハイタッチして小僧が完走した。
一昨年末の「足立フレンドリーマラソン」以来のハーフマラソンだった。
残るはかあちゃんただ一人。
制限時間はとっくに過ぎているが、最後の関門を通過していればもうじき帰ってくるだろう。
だが途中でリタイアして収容車に乗せられているかもしれず、最悪どこかでぶっ倒れているのではないかと気にしていると、小僧を連れて戻ってきてくれた師匠が、競技場の入り口を指さし「来た」と叫んだ。
オヤジにはまだ遠くてわからなかったが、腰が落ちたオバチャンフォームは間違いないという。
確かに歩いた方が速いような速度で「Qちゃん」の前で立ち止まったかあちゃんは、両手で握手して「お帰りなさい」と言われてフィニッシュした。
まあ無事にみんな戻ってきてよかった。
それにしても今までになくキツイハーフだった。
先月、先々月のフルマラソンよりもずっと辛かった。
体調不良の時にマラソンを走るという無謀は、やっぱり自重しなければいけないという当たり前の教訓を得た大会であった。
だから来年また抽選に当たったら、絶対リベンジしてやる
ありがとう仙台
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