お好み夜話-Ver2

悪魔のようなK氏-3(第10夜 2005-09-11 04:41)

  
映画「亡国のイージス」のラストのCGが気にいらないという。

原作と映画の“時間”のちがいは、まあしょうがないという。

けれど、「アスカ・ラングレー」のフィギアはぜひ欲しいともいう。

あんたは、ワガママだという。

俺ももう若くないから、帰るという。

上野、午前0時を回った、最終すれすれの時刻。

3軒の店をはしごした、壊れる寸前のおっさんふたり。

K氏は、小林克也ばりの眼鏡で、ポケットチーフを覗かせるジャケット、プラダかなにか、オヤジには計り知れない、ピカピカに磨かれた靴を履き、有害を訴える広告が、せっかくのデザインを台無しにするマルホロをくゆらせ、空のグラスにマッコリを注げと差し出す。

それにしても、粉ものを扱うオヤジが、その旨さにおかわりするほどのチヂミを出す、この店の名前も知らない。

たらふく芋焼酎を飲んだのに、まだ飲み足りなくて、メチャ辛いカクテキにむせびながら、激論を戦わせる始末に負えないおっさんふたり。

韓国語が飛び交い、異国の有線が流れる店内。

もうそろそろお開きだ。

彼の決意は固い。

横浜で再び、亡国の民にならなければよいがと、若干心配するオヤジを尻目に、店を出てすたすたとJRに向かう足取りは、まあ大丈夫か。

こうして、久々のK氏とのバトルが終わった。

「もう、若くないのだから」

その言葉に一言もないオヤジだった。

「俺を悪魔に仕立てたのは、お前の陰謀だ」

という疑惑を指摘された。

帰りの最終電車に乗ったものの、鬱屈した思いで北千住を通り越し、乗車券は松戸までの片道切符となり、タクシーで痛い目をみる羽目になったのである。


懲りないおっさんたちは、そろって反省期を通り過ぎ、肉体と精神の衰えに抗うように、屁理屈をこね回しながら生き続けている。
よし、再び言葉を交わしたときから、時が動き始めるのだ。
友よ、また会おう。

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