ウクレレとSwing(スヰング)音盤

A Night of Ukulele Jazz/Live At McCabe's (2001) / Lyle Ritz & Herb Ohta


この年は3つの国と地域、都合4つのレコード会社からオータサンのCDが一挙リリースされている。

アメリカ本土から、
・Flea Market Music (本作) 新録、ライル・リッツとの共演盤(ライヴ録音)

日本から、
・ビクター(Globe Rootsシリーズ) 新録、ライル・リッツとの共演盤(スタジオ録音)
・ポリドール 70年代日本吹き込みアナログLPのCD復刻盤

ハワイから、
・M&H  オータサン初のソロ(独奏)ウクレレ、新録

このように多くの新録を含むCDが届けられた中、本作では90年代から数多くのアルバムでベーシストとしてオータサンを支えたライル・リッツが、ジャズ・ウクレレのレジェンドとして本格的な共演を果たしている。ウクレレでの両者共演は、遡る事5年前の「Magical Ukulele (1996)」が伏線であったろう。アメリカ本土のFlea Market Musicからリリースされたライヴ盤(本作)と、日本制作のスタジオ盤(ビクター盤)の両方がこの年リリースされた。

ライヴ収録が行われた録音日は記載がなく不明だが、ビクターのスタジオ共演盤のライナーノーツにあるサザン関口氏のコメントによれば、本作の録音されたライブは前年の2000年で、そのあと同じパッケージで日本でのコンサートツアーも実施されたとの事で、時系列ではこちらのライヴ収録がスタジオ盤より先・・・と言いたいところだが、このあたり少し込み入った事情がある。(詳しくは次回の更新記事で!)

カリフォルニアのサンタモニカに現存するギターショップ「McCabe's」でのライヴ録音。以前に一度店に立ち寄ってみたことがあるが、プロのギタリストがメンテナンスに愛器を持ち込むような老舗の楽器店で、店内にライヴスペースを併設しており、音楽や朗読などのイベントを時折開催してるようだった。

ハワイのオータサンにとって南カリフォルニアはアメリカ本土の中でもとりわけハワイとの繋がりが強く、多くの熱心なハワイ音楽やウクレレの愛好家がいる土地柄で、受け入れられやすかっただろう。ライル・リッツにとってはかつてレッキング・クルーの一員として数々の名盤に参加したお膝元であり、多くの音楽ファンが長年のベーシストとしてのキャリアを認知していたに違いない。

なお、ライル・リッツはそもそもスタジオワークを生業としたミュージシャンのため、ライヴ録音盤も数多いオータサンに対して、本作はライル・リッツがウクレレ奏者として生前に遺した唯一のライヴ実況録音盤(映像作品を除く)であり、その意味でも貴重な音盤と言えるだろう。

1. Lulu's Back In Town
- ライル・リッツ
2. Triste
- ライル・リッツ
3. Where Or When
- ライル・リッツ
4. Tonight You Belong To Me
- Emily Ritz & Lyle Ritz
5. Bluesette
- ライル・リッツ
6.The Very Thought Of You
- ハーブ・オオタ
7. September Song
- ハーブ・オオタ
8. I'll Remember April
- ハーブ・オオタ
9. Song For Anna
- ハーブ・オオタ
10. Stompin' At The Savoy
- アーティスト: Herb Ohta & Lyle Ritz
11. Joy Spring
- アーティスト: Herb Ohta & Lyle Ritz
12. Fly Me To The Moon
- アーティスト: Herb Ohta & Lyle Ritz

前半がライル・リッツ、後半にオータサンそれぞれのパートがあり、最後に両者共演という体裁をとっている。また演者はクレジットがなく不明だが、ウッドベースが加わっている。4.はリッツ家の微笑ましい親娘共演(DVDでも共演していた)。両者共演のパートでは、いつもマイペースな二人の大ベテランも興が乗って大熱演を聴かせている。

アルバムの立役者はアメリカ本土におけるウクレレ再評価の仕掛人であるFlea Market MusicのJim Beloff。同じくファンとして自分が聴きたい夢の競演アルバムだったに違いない。


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