宇宙人は柴犬と

SFコメディー小説です。

第34話:根が真面目だからコメディしか書けない 2/2

2010-11-21 20:52:10 | 日記
【力と技】
吠える狼。
テー家の言葉で意を発する。
狼頭王『この場にいる非戦闘員を全て避難させよ。この場にいる敵は、全て私が相手をする。騎士の戦いは己と家のすべて。表現せよ。』
ヂェット「正気か?」
彼はテー家の言葉がわかる。
ぴろウき「あ?なんだって??」
ヂェット「私たち全員を、狼の王一人で相手なさるそうだよ・・」
正気で無かろうが、狼が吠えたこと。
テー家の騎士なら、ましてやその精鋭たちなら、彼の言葉を半語とて疑うことはない。
それは宗教に似て理由が無い。
強いて根拠をあげるなら”狼頭王であるから”。
その場にいた9人の騎士、指令を受け付けたロボットのように、一斉に敵に背を向ける。
無防備な背を刺されるなどとは考えていないか?
いや、狼の言葉を形にするのが大事。
迷い無き我々ならその形を芸術にできる。
我々は素晴らしい。
天に授かった才能。
鍛え上げられた肉体。
高く、高く積み上げた知識。
知の頂に立つ気高い魂。
そして、目の前に広がる風景は狼頭王その人。
美しい宗教画である。
なな「くっ・・」
19体の怪人をノートパソコンで操作する少女。
千載一遇のチャンスだが、無防備な敵を攻撃できない。
判断しかねて、ぴろウきの方を見る。
ぴろウき「まぁ・・(攻撃)できないわなぁ。」
文月ななの眼はさらに言う。
”私たちも、一般人の避難に強力すべきでは?”
顔を見合わせ、お互いの気持ちを確認するヂェットとぴろウきCEO。
ヂェットが狼に話しかける。
ヂェット「足長き商人の狼よ。」
足長き商人とはテー家を意味する、宇宙人同士ならではの呼び方だ。
テー家は国として認められていない。
だが散歩する惑星の圧倒的な輸送能力で、遠隔地・辺境の惑星との商いを成立させてきた。
例えば地球。
ヂェット「テー家の騎士はいかなる場合でも結果を出さねば評価されない。これは間違いないか?」
狼頭王「違いないぞ。」
ヂェット「貴様はテー家の騎士か?」
狼頭王「我はテー家の騎士である。」
ヂェット「では私の行動がいかなるものであっても恨むまいな?」
狼頭王「くどい!」
濁り無き一括は、ビリビリと空気を震わし天へかけ登る。
聞いていた騎士たちの口元がわずかに緩む。
”見ろこれがテー家だ”
ヂェットはちらりとCEOに目で合図。
すべきことは決まった。
ぴろウき「なな!エールラー!狼を総攻撃だ!!」
そう叫んで、いの一番に狼に飛びかかるCEO。
激しく地を蹴ったため、足首から下の骨が砕けた。
しかし、空中を飛び進むうちにみるみる治ってゆく。
それをななが目ざとく見つけた。
なな「ほうほう、これはびっくり。」(棒読み)
CEOの正体に気付いた。
忌まわしい血が流れていることを知った。
ヂェット「無茶しやがって。」
ぴろウき「ぬおおおおおおおぉっっ!!」
狼の顔面を殴りつけた・・
・・拳が砕ける。
まぁ、あっというまに治っては行くのだが。
ぴろウき「かっ・・てぇええ・・」
ちょっと変な形に拳が治ってしまったので、左手の指でペキペキと押し砕いて形を整えた。
いったん下がるCEOと入れ替わり前に出る大柄な影。
次に拳を打ち込んだのは、”じぃ”ことギュンター・エールラー。
その衝撃波は30m先の子供たちを吹き飛ばした。
子供たちを抱きとめる騎士と怪人たち。
怪人を一般人の保護にあてることは、CEOの指示に逆らう行為だがそれでよい。
ぴろウきは、ななが万が一のときはそういった判断をできる人間だと信じたからこそ、”狼を総攻撃”と言い切ったのだ。
しかし狼はじぃの全力に微動だにしない。
√4陣営で最大のパワーを誇るじぃの拳が通用しない。
逆に厳しいのはじぃだ。
じぃ「ぬおおおおおっっ!!」
反動に後ずさりしそうになるのをこらえる。
肉が引き裂かれそうになるが、衝撃を和らげるために足をさげることはしない。
痛みに叫び声が出かかるが、歯を食いしばり飲み込む。
脳が震え視界が歪むが体の芯を真直ぐに保つ。
退かぬ己の戦い方を貫き通す青年を、じっと見下ろす狼。
じぃの戦いは前にも見ており、気に入っていた。
命に代えても曲げぬか・・
やがて優しい笑みとともに、半歩下がった。
前のめりに倒れるじぃを抱きとめる狼。
なな「じぃっっ!!」
怪人2体でじぃを奪い取る。
別の4体で四方からとび蹴り。
まったく効いていないようだが、じぃを連れて帰るまでの時間稼ぎになればそれでいい。
4体は狼の左腕の一閃でなぎ倒された。
ヂェット「流石だな、力の狼。」
狼頭王「来たな、技の7番。」
CEOから数えて7番目に戦いを挑むのは、宇宙警備隊最強の戦士。
捕まえに来た狼の腕を右に払い、脛を斜めに蹴る。
特にひるんだ様子はないのだが、続けて脇に掌を打ち込むと、いかなる攻撃にも微動だにしなかった狼がヨロリと退がった。
ぴろウき「おお、最強は伊達じゃねーな。」
呑気に驚くだけのCEOをみて、文月なながいら立つ。
なな「ええい!なにをしている!!」
怪人2体を操作し、狼の頭上から蹴り。
ヂェットとななはコンビを組んで2年近く、どうすればいいのかは良く判っている。
片膝をつく狼。
ぴろウき「なるほどな。」
2人は教えてくれた、最強の戦士ヂェットが隙を作った後なら、無敵の狼にダメージを与えられる。
じぃ「それしかないか。」
さがらない方針を変える気はないが、ヂェットに頼る作戦はやむなしと受け入れた。

立ち上がる狼。
彼の鋭い視線に応え、一歩前に出るヂェット。
ヂェット「力よ!」
狼頭王「技よ!」
ヂェット「お前の力はいかなる速さも、技も凌駕すると聞く!我はそれを知るか!?」
狼頭王「知るだろう!お前の技の切れ味は不足無し!」
ヂェット「心躍ることよ!!」
狼頭王「技よ!」
ヂェット「力よ!」
狼頭王「お前の技にはいかなる速さも力も屈すると聞く!それはまことか!?」
ぴろウき「す、すげぇな・・」
迫力ある二人の口上にだれも割って入れない。
もし、それができるとしたら、そいつは宇宙一空気の読めない・・・・

バクテー「ガパオさーん!そっちわヤバそうだから行っちゃだめーっ!」
来た来た、バカ到着。

第34話:根が真面目だからコメディしか書けない 1/2

2010-11-21 20:52:03 | 日記
宇宙人は柴犬と


※今回は真面目な文章のみ・・ギャグが無いと本当に書けない。真面目展開を書くってタールの海を泳ぐようなものなのですね・・と、いうわけでいつもより短めです。すいませんです


第34話:根が真面目だからコメディしか書けない

【消滅】
阿仁木「最後に今一度、ぴろウき様の腕に抱かれて眠りたかった。」

その台詞が発せられた地点から離れること約80km。

ぴろウき「最後も何も!そんな事実はねぇ~っっ!!」
4分の1とはいえ、B26暗黒星雲人の血。
その迫力。
本気で叫び声をあげると、テー家の騎士ですら驚き思わず首をすくめる。
その隣、宇宙警備隊最強の戦士が素っ頓狂な声に目を丸くする。
ヂエット「ど、どうした。」
すいません。
無理やりギャグ入れました。
もうしません。
許してください。

チャンネル√4銚子倉庫 地下65m・・最下層。
水槽のチャイの部屋の前。
入口を守る阿仁木とウルトの前に、すでに8人の騎士がいるのだが、さらに3人やってきた。
他のフロアを調査し退路を確保、そのうえで3人を追加投入してきた。
11人、阿仁木はその人数を見て覚悟を決めたのだ。
”この人数と引き換えなら悪くない”
長引く戦いに疲弊する阿仁木とウルト。
敵を警戒はするが、味方に注意する余裕などない・・何のことかって?
ウルト「何をするっ!」
阿仁木は若き戦士の肩を掴み、自分の後ろに投げた。
そして11人の騎士に向かい突進。
騎士たちはその奇妙な攻撃の作法に”何かある”と警戒、安易に阿仁木の接近を許さない・・
つもりなのだ・・が・・
ウルト「速い!」
地を滑るように進む。
まるで、床と彼の足の間に摩擦が存在しないよう。
それは、ほぼ事実。
今までの物語に書いた事実を今一度紹介したい。
⇒ 彼は筋肉を振動させて可聴音を作り、会話を成立させた。
⇒ 彼は掌を振動させガラスのひび割れをふさいだ。
彼は超振動の男。
足の裏と床の摩擦抵抗は、振動によりその存在を無視できるほど小さくなっているのだ。
騎士たちがその異常なスピードを認識したときはもう遅い。
阿仁木「とっておきを見せるのは一度きりだ。」
キイイイイイイィィィィッッ!!!!!!!
鼓膜を引き裂くごとき高周波。
阿仁木の皮膚が泡立つ。
肉体が超振動の熱で沸騰しているのだ。
その体で騎士に触れると相手は蒸発、消滅した。
床を滑り、次々と騎士を捕える。
ウルト「お、お前・・」
阿仁木自身も薄くなり、消えてゆく。
阿仁木「ぬおおおおおっっ」
おのれの肉体を滅する苦痛に耐え、振動を続ける。
そしてついに騎士11人と阿仁木、全て煙と消えた。
立ち込める髪の毛を焦がしたようなにおいにむせる。
若い戦士の傷ついた体に、疲労が一気に来る。
膝をつき、一筋だけ己の頬に涙が這うのを許した。
ウルト「まいりました。」
喪失感に体にも心にも力無く。
だが、礼をあらわさなければと口にした。
せめてもの一言。


【無感覚】
水槽のチャイの部屋。
瀬瀬博士に無造作に近づく騎士一人。
そうだろう。
痩せたその科学者の白くか細い腕に、抵抗する力があるなどとは考えない。
横に犬がいるが、噛まれたところでどうということはないだろう。
科学者は武器を隠し持っているかもしてない?
例えば銃か?
それがどうした。
今、彼が手にしているのは携帯端末一つ。
ポケットに拳銃があるとして、それを取り出される前に相手を無力化できるだろう。
犬がかみついた隙に取りだすか?
見え見えの手順だ。
判っていればそれを許さず回避できる。
従って、無造作に近づく行為は間違っていない。
やっさん「あー、君・・」
呼びとめる声に騎士は耳をかさず、ただ足を進める。
必要無いからだ。
騎士の目的は水槽のチャイの確保。
目の前の博士は邪魔立てせぬ限り相手をしなくてよい。
この国では逮捕権はないからね。
やっさん「君は鍛え上げたその体に自信があるのだろう・・だが、脳はどうだい?」
なぜそんな質問をする。
テー家の騎士は皆慎重。
思わず足をとめた。
彼の細い指がブラックベリーの小さなキーを撫でたとき、しまったと思った。
”相手に攻撃のチャンスを与えてしまった”
それを確信した。
やっさん「脳も強靭なぁのかい?」
部屋に設置されている3つの大型スピーカーから音・・いや、衝撃が発せられた。
神経を逆なでする不快な音に押しつぶされる。
黒板を爪でひっかくような音や、胃の中のものが逆流してくるような低周波。
すさまじい音量。
耳をふさいでも、音が体にしみて骨を伝い全身に行き渡る。
気が狂いそうだ。
犬の形をした人造生物Xはすでに嘔吐。
音源を破壊しなければ。
歪む視界や言うことを聞かない足と戦い、スピーカーを目指す。
その騎士の首に腕をまわし、のしっともたれかかる瀬瀬博士。
やっさん「やっぱり音楽は最高だねぇ。」
鼻歌を歌いだす。
この男は何ともないのか?
敵に近寄られた危機感より驚きが勝る。
やっさん「げぼおぉっ!」
吐きやがった。
高そうなソファーに汚物を撒き散らしやがった。
やっさん「ク、ククク・・あ~ぁ、すっきりした~・・あはははははははははっ!らんらんらぁー。ホぉラァ、君も歌いなよ!」
狂っている。
やせ我慢なんかじゃない、この状況を楽しんでいる。
体力的に劣るはずの眼鏡の優男。
狂っているのか??
・・・・この男はヤバイ。
やっさん「良い音楽には、最高の光の演出が似合うのさぁ~。」
ぎくり、背中に冷たいものが走った。
まだ何かやる気だ。
ブラックベリーのキーを押す。
部屋の棚に置いてある投光機のようなもの10個以上。
仕舞ってあるだけと思ったら、電源につながっていた。
熱く汗をかくほどの光量で激しく点滅。
目を開けていると痛くて耐えられない。
光量がありすぎて、周りの物をまともに認識できない。
物の輪郭が無い、影が無い。
マッドサイエンティストの乱れた歌声。
騎士は彼の細い腕が、己の首を徐々に締め上げてゆくのに気づくことが出来なかった。

やっさん「ぼくは見た通りのもやしっ子だよ・・ああ、体は弱いよ。だけど脳は、脳はねK-1ファイター並なんだよぅ。頭が良いって意味じゃなく、人体組織として強靭なのさ。だれよりも頑丈な脳なのだよぅ。ふっ・・ふはははははははは!!」
力を失った騎士の手から剣を奪い、喉元に・・
いや、床に落とした。
やっさん「エックスぅ・・」
呼ぶ声に反応し、ガタガタと身を震わせる人造生物。
やっさん「お前がとどめをさしておけ。コイツのさぁ・・」