次の日の朝。
輝が目覚めると、未沙がベッドの横に座っていた、既に制服を着ている、
「お早う、輝、痛みは?腫れは大分引いたけどアザになってる・・・。今
日は静かに休んでて、パーティは私一人で大丈夫だから」
「お早う・・・、もう、大丈夫だよ、一晩氷で冷やしたから、あんなに痛か
った親知らずの痛みも消えたし」
「だって、そのアザ酷いわ」
未沙が済まなそうに言った、
「私、もう行かなきゃ・・・。やっぱり、今日は一日休んでて、本当に昨
日は御免なさい」
「大丈夫だよ。きっと、これも今迄の天罰さ」
「輝・・・」
未沙が立ち上がった、
「御免ね、私、行かなきゃ。何か有ったらメール頂戴、無理しないでね」
思いを振り切るようにドアへ向かう未沙へ、輝が声を掛けた、
「そうだ、いい考えがある、これなら大丈夫だよ、きっと」
「何なの、それ?」
「秘密、ヒ・ミ・ツ、今日のパーティ出るよ、ホールで会おう、未沙」
「教えてよ」
「未沙、時間だろ、みんなが待ってるぞ」
「意地悪!」
そう言って、未沙が出て行った。その後を追うように、輝がベッドから出
る、洗面所で鏡を見た、
「酷えな、こりゃ・・・でも、何とかなりそうだな」
暫くして玄関のドアが開いた。中から出てきたのはパイロットスーツに
ヘルメットを付けた輝、そのまま医務室へ向かう。プライベートエリアで輝
のその姿は異様だった、みんなが振り向いた。
「先生、一条少佐です」
看護婦の声がして少しすると、異様な男が入って来た。
「一条少佐、何だねその格好は」
医師長のローランが笑いながら聞く、輝はローランと二人だけなのを
確認するとヘルメットを外した。
ローランが又、笑う、
「一条少佐、何、悪さしたの?それにしても凄い力だね、艦長。中々こ
こまでにはならないよ」
「先生じゃあるまいし、悪さなんてしてませんよ、僕。これは事故です・
・・、信じてもらえないでしょうね」
「まあいい、まあいい、そこへ座んなさい、今、薬塗ってあげるから」
「先生、薬は結構です。実は先生にお願いが有って来ました」
「何だね、そりゃ。薬要らないのなら医者に用は無いんじゃないの?」
「先生この前、絵の個展開きましたよね、12階のロビーで」
「ああ、見たのかね、恥ずかしいな。ちょっと遊びの積りで描いてたもの
を艦長に見付かっちゃってな、艦長、えらく気に入ってくれて、個展開くよ
うに薦められちゃって。勿論、断ったんだけど、どうしてもって言うから。あ
の顔で頼まれたら誰だって断れないよ」
輝が真剣な表情で言った、
「そうだったんですか、でも、良かったですよ先生。そこで、先生にちょ
っとお願いが有るんです」
30分程して輝が出て来ると、看護婦が吹き出した。輝の右頬には統
合軍のマークをバックにした愛機「スカルー1」がしっかりペインティング
されている。
そのまま廊下へ出て部屋に戻る、何人もの人達から声を掛けられた、
「大隊長、まだ朝ですよ、もう、お祭り気分ですか」
「あれ、夜ですよ、気が早いなあ」
誰もアザに気が付かないようだった。
艦長席の電話が鳴った、
「艦長、小会議室でフォッカー空軍司令以下7名が艦長に面会を求め
ていますが、いかが致しましょう?」
「空軍司令が・・・、解りました、すぐ行きます」
未沙が航海長に声を掛ける、
「少しの間、小会議室に行ってます、後を宜しく」
未沙がブリッジを出て行った。
未沙が小会議室に入ると、フォッカー以下、昨日の面々が直立不動
で敬礼する。
未沙が敬礼を返し、言った、
「フォッカー司令、何でしょうか、こんなに朝早くから」
フォッカーが直立不動のまま答える、
「実は昨日の事、雁首揃えて謝りに参りました」
「フォッカー司令、それにみんなも、私、気にしてません、忘れて下さ
い」
「艦長、そういう訳にはいきません」
フォッカーが号令を掛けた、
「全員、気をつけー!みんないいな、1,2の3!昨日は済いませんで
した、御免なさい!」
全員が声を揃え、頭を下げる。
「そ、そんな、止して下さい。みんな、頭を上げて、お願いします」
未沙の慌てた声で、全員が頭を上げた、
「昨日の事は、私が悪かったんです、ぼっとしてて、みんなの話を聞
いてなかったんだから」
フォッカーが相変わらず、直立不動のまま答えた、
「いえ、何がどう有ろうと、あれだけ艦長を笑ってしまったのですから、
どのような処罰も全員受ける覚悟でここに来ました。艦長、営倉でも
謹慎でも何でも結構です、言って下さい」
「みんな、そんな、困ります・・・」
未沙がますます狼狽する。その時、ふっと閃いた、
「あ、一つだけみんなにお願いしていいですか、それさえ守ってくれ
れば、今度の事は無かった事にします」
「何でしょうか?」
「実は、輝、いえ、一条少佐が昨日事故で親知らずが抜けました、
今日、顔が腫れています。今夜、少佐を見ても笑わないで下さい、そ
れさえ守ってもらえば結構です。それで、宜しいでしょうか」
「艦長、了解であります。おい、みんな良かったな、パーティに出ら
れるぞ、艦長の仰った事、みんな肝に銘じとけよ、輝の事笑ったら、
俺が営倉にぶち込むからな、その積りでいろよ、みんな!」
全員が声を揃えた、
「了解しました!」
未沙が済まなそうに言う、
「みんな、こんなに朝早くから来てくれて、みんなに心配掛けちゃっ
て御免なさい・・・、今日は本当に有難う」
素直に未沙が頭を下げた。
「艦長もお忙しいと思いますので、全員これで失礼します。艦長、ま
た今晩お会いしましょう、楽しみにしてますぜ、ドレスアップした艦長
の姿・・・。それでは、失礼します」
フォッカーはそう言って、全員を引き連れ部屋を出て行った。すぐ、
クローディアが戻って来た、
「ちょっと、いい?」
「ええ、あまり時間はないけど」
「何かあったの、貴方達?昨日は普通じゃなかったわよ」
「ちょっとね。でも、もう大丈夫、心配掛けて御免ね、クローディア」
「そう、それならいいけど」
クローディアがほっとした顔で言った、
「それでは、改めて失礼します、艦長」
ウインクしてクローディアが出て行った。
輝が目覚めると、未沙がベッドの横に座っていた、既に制服を着ている、
「お早う、輝、痛みは?腫れは大分引いたけどアザになってる・・・。今
日は静かに休んでて、パーティは私一人で大丈夫だから」
「お早う・・・、もう、大丈夫だよ、一晩氷で冷やしたから、あんなに痛か
った親知らずの痛みも消えたし」
「だって、そのアザ酷いわ」
未沙が済まなそうに言った、
「私、もう行かなきゃ・・・。やっぱり、今日は一日休んでて、本当に昨
日は御免なさい」
「大丈夫だよ。きっと、これも今迄の天罰さ」
「輝・・・」
未沙が立ち上がった、
「御免ね、私、行かなきゃ。何か有ったらメール頂戴、無理しないでね」
思いを振り切るようにドアへ向かう未沙へ、輝が声を掛けた、
「そうだ、いい考えがある、これなら大丈夫だよ、きっと」
「何なの、それ?」
「秘密、ヒ・ミ・ツ、今日のパーティ出るよ、ホールで会おう、未沙」
「教えてよ」
「未沙、時間だろ、みんなが待ってるぞ」
「意地悪!」
そう言って、未沙が出て行った。その後を追うように、輝がベッドから出
る、洗面所で鏡を見た、
「酷えな、こりゃ・・・でも、何とかなりそうだな」
暫くして玄関のドアが開いた。中から出てきたのはパイロットスーツに
ヘルメットを付けた輝、そのまま医務室へ向かう。プライベートエリアで輝
のその姿は異様だった、みんなが振り向いた。
「先生、一条少佐です」
看護婦の声がして少しすると、異様な男が入って来た。
「一条少佐、何だねその格好は」
医師長のローランが笑いながら聞く、輝はローランと二人だけなのを
確認するとヘルメットを外した。
ローランが又、笑う、
「一条少佐、何、悪さしたの?それにしても凄い力だね、艦長。中々こ
こまでにはならないよ」
「先生じゃあるまいし、悪さなんてしてませんよ、僕。これは事故です・
・・、信じてもらえないでしょうね」
「まあいい、まあいい、そこへ座んなさい、今、薬塗ってあげるから」
「先生、薬は結構です。実は先生にお願いが有って来ました」
「何だね、そりゃ。薬要らないのなら医者に用は無いんじゃないの?」
「先生この前、絵の個展開きましたよね、12階のロビーで」
「ああ、見たのかね、恥ずかしいな。ちょっと遊びの積りで描いてたもの
を艦長に見付かっちゃってな、艦長、えらく気に入ってくれて、個展開くよ
うに薦められちゃって。勿論、断ったんだけど、どうしてもって言うから。あ
の顔で頼まれたら誰だって断れないよ」
輝が真剣な表情で言った、
「そうだったんですか、でも、良かったですよ先生。そこで、先生にちょ
っとお願いが有るんです」
30分程して輝が出て来ると、看護婦が吹き出した。輝の右頬には統
合軍のマークをバックにした愛機「スカルー1」がしっかりペインティング
されている。
そのまま廊下へ出て部屋に戻る、何人もの人達から声を掛けられた、
「大隊長、まだ朝ですよ、もう、お祭り気分ですか」
「あれ、夜ですよ、気が早いなあ」
誰もアザに気が付かないようだった。
艦長席の電話が鳴った、
「艦長、小会議室でフォッカー空軍司令以下7名が艦長に面会を求め
ていますが、いかが致しましょう?」
「空軍司令が・・・、解りました、すぐ行きます」
未沙が航海長に声を掛ける、
「少しの間、小会議室に行ってます、後を宜しく」
未沙がブリッジを出て行った。
未沙が小会議室に入ると、フォッカー以下、昨日の面々が直立不動
で敬礼する。
未沙が敬礼を返し、言った、
「フォッカー司令、何でしょうか、こんなに朝早くから」
フォッカーが直立不動のまま答える、
「実は昨日の事、雁首揃えて謝りに参りました」
「フォッカー司令、それにみんなも、私、気にしてません、忘れて下さ
い」
「艦長、そういう訳にはいきません」
フォッカーが号令を掛けた、
「全員、気をつけー!みんないいな、1,2の3!昨日は済いませんで
した、御免なさい!」
全員が声を揃え、頭を下げる。
「そ、そんな、止して下さい。みんな、頭を上げて、お願いします」
未沙の慌てた声で、全員が頭を上げた、
「昨日の事は、私が悪かったんです、ぼっとしてて、みんなの話を聞
いてなかったんだから」
フォッカーが相変わらず、直立不動のまま答えた、
「いえ、何がどう有ろうと、あれだけ艦長を笑ってしまったのですから、
どのような処罰も全員受ける覚悟でここに来ました。艦長、営倉でも
謹慎でも何でも結構です、言って下さい」
「みんな、そんな、困ります・・・」
未沙がますます狼狽する。その時、ふっと閃いた、
「あ、一つだけみんなにお願いしていいですか、それさえ守ってくれ
れば、今度の事は無かった事にします」
「何でしょうか?」
「実は、輝、いえ、一条少佐が昨日事故で親知らずが抜けました、
今日、顔が腫れています。今夜、少佐を見ても笑わないで下さい、そ
れさえ守ってもらえば結構です。それで、宜しいでしょうか」
「艦長、了解であります。おい、みんな良かったな、パーティに出ら
れるぞ、艦長の仰った事、みんな肝に銘じとけよ、輝の事笑ったら、
俺が営倉にぶち込むからな、その積りでいろよ、みんな!」
全員が声を揃えた、
「了解しました!」
未沙が済まなそうに言う、
「みんな、こんなに朝早くから来てくれて、みんなに心配掛けちゃっ
て御免なさい・・・、今日は本当に有難う」
素直に未沙が頭を下げた。
「艦長もお忙しいと思いますので、全員これで失礼します。艦長、ま
た今晩お会いしましょう、楽しみにしてますぜ、ドレスアップした艦長
の姿・・・。それでは、失礼します」
フォッカーはそう言って、全員を引き連れ部屋を出て行った。すぐ、
クローディアが戻って来た、
「ちょっと、いい?」
「ええ、あまり時間はないけど」
「何かあったの、貴方達?昨日は普通じゃなかったわよ」
「ちょっとね。でも、もう大丈夫、心配掛けて御免ね、クローディア」
「そう、それならいいけど」
クローディアがほっとした顔で言った、
「それでは、改めて失礼します、艦長」
ウインクしてクローディアが出て行った。