桜陰堂書店2

ここは「超時空要塞マクロス」(初代)の二次小説コーナーです
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HOLIDAY   

2009-07-04 21:25:48 | HOLIDAY
「冒険者たち」
ロベール・アンリコetフランソワ・ド・ルーべ
作品と監督、音楽家に感謝を込めて。

僕達の世代の男は、皆、レティシアが眩しかった。
そして、ローランとマヌーの男の友情に憧れていた。

                          桜陰堂

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  (1)

 晴れた空の下、長い髪をなびかせて、未沙がジープを走らせている。
 初夏のマクロスシティ、郊外へ向かう長い直線道路を、未沙の運転するジ
ープが140kmの猛スピードで突っ走ってる。
 行先は遠くに見える黒い森の向こう、スワン飛行場。
 (まったく・・・、飛行機の事になると、まるで子供なんだから、輝は)
 そんな事を思いながらも、未沙の顔は微笑んでいる。
 隣の助手席には、輝の代わりに二人分の昼食と飲み物が入ったバスケット。
 遥か彼方の森まで続く緑の平原を、カーキ色のジープが只一台駆けて行く。

 「輝、どうしたの・・・」
 ベッドを出る気配を感じて、未沙が目を開けた。
 「うん、ちょっとね・・・、俺、先に行っててもいいかな」
 「先って、今、何時?」
 「5時を回ったところ」
 「ねえ、輝、私も少し早く起きるから・・・一緒に行きましょ」
 「未沙はゆっくり寝てて、お弁当作って予定通りでいいから。未沙を乗っける
前に、ちゃんと自分で整備したいんだ」
 「私、どうやって行くのよ、車、一台しか借りてないのよ」
 「俺、自転車で行くから」
 「スワンまで30キロ以上有るわ」
 「平気だよ、30キロなんて」
 そう言うと、輝は未沙を置いて、そそくさと部屋を出て行った。

 彼方の黒い森の上を、小さな飛行機が飛び越えて来た。
 飛行機はそのまま地上近くまで降下すると、一直線に未沙の車へ向かって
来る。
 まるで絵本の中に出てくるような、古めかしい銀色の複葉機。
 未沙がクスッと笑った。

 「今日さ、訓練飛行の帰りに複葉機、見かけたんだ」
 勤務から帰ってきた輝が、開口一番、未沙へ言った、
 「複葉機?今時、そんなの有るの?」
 「俺も吃驚してさ、帰ってから調べたんだ」
 「それで、遅かったのね、輝」
 「スワンに有る教習所の持ち物だった、教習所の所長が練習用にって趣味
で作ったんだって」
 「まあ、電話までしたの?」
 「ああ、ちょっと懐かしくてね」
 「呆れた!」
 あれから一ヶ月。
 輝が所長と掛け合い、一日だけ借りられる事になった。
 「ピクニックがてら、お弁当持って二人で空を飛ぼうよ」
 「未沙の操縦訓練にもなるしさ、もう、随分、操縦桿握ってないだろ」
 「何とか晴れてくれないかな、二人でノンビリ空を飛ぶなんて、初めてだよ
ね」
 この所、ずっと輝は子供のようにはしゃいでいる。
 楽しそうにしてる輝を見て、未沙は嬉しくもあり、呆れもしながら、少しだけ
淋しい気もしてる。
 「私より、飛行機なの・・・?」

 ブォーン!!
 未沙のジープのすぐ横を、輝の複葉機が超低空で飛び抜けて行く。
 機首を上げ、宙返りをするように高度を上げるとクルッと半捻りして、今度は
未沙の車を追い駆ける。
 疾走する未沙のジープの後ろへ、輝が近付いてくる。
 少しスピードを緩めながら、振り返る未沙。
 操縦席には、いつもと違う皮ジャンと飛行帽を被り、白いマフラーとゴーグル
を着けた輝が、こちらへ向かって手を振っていた、口元が笑っている。
 未沙も笑いながら、手を振り返す。
 軽く敬礼しながら、輝が未沙の横をすり抜けて行く。
 その輝に、未沙は可笑しそうに敬礼を返した。
 じゃれ合うように輝の複葉機と未沙のジープが、緑の平原を駆けている。
 未沙の右を、次には左を、未沙の上を跳び越えて行く複葉機の車輪は、未
沙が立ち上がれば手が届く程だった。
 再び、未沙の左傍を飛び抜ける時、輝は一杯まで速度を落としながら大声
で叫んだ、
 「飛行場で待ってる!!」
 勿論、聞こえはしないが、未沙には「待ってる」という口の動きが解った。
 大きく頷く、未沙。
 それを見ると、複葉機は高度を上げ、森の向こうへ遠去かって行く。
 未沙の目の前には、いつの間にか大きな森が迫っていた。

 「また、危ない事を」
 「脇見運転だって、危ないと思うよ」
 「誰がさせたの?」
 何も言わず、輝が笑う。
 そんな輝に、バスケットを差し出す未沙。
 「はい、お弁当」
 「ありがとう」
 バスケットを受け取ると、輝は未沙の腕を取り、滑走路脇の駐機場へ引っ張
って行く。
 そこには、つい先っきまで空を駆けていた証のように、熱気を含んだ二枚羽
根の複葉機が腰を下ろしていた。
 「本物、初めて見たわ」
 未沙が思わず呟く、
 「ここの人達が総出で作ったんだって、心がこもってるのかな、すごく素直で
癖の無い飛行機だよ」
 「輝、昔、こういうのに乗ってたんだ」 
 「俺が初めて乗った飛行機さ、オヤジや先輩に乗せられて、これで操縦を覚
えたんだ」
 「ふふ、目に浮ぶわ、子供の頃の輝が・・・、あ、ゴメン、辛い事、思い出させ
て」
 「今じゃ、みんな、掛け替えのない思い出だよ、未沙」
 そっと、未沙が翼に触れる、
 「バルキリーに較べて、柔らかい感じがする」
 「そうだろ、やっぱ、飛行機はこうでなくちゃ。さ、早く未沙も着替えて、二人
でこれを飛ばそう」
 再び、輝が未沙の手を引くと、小さな飛行場の小さな建物へ向かって歩き出
した。

(2)

2009-07-04 21:24:36 | HOLIDAY
 未沙の着替えを待つ間、再び飛行機へ戻りチェックに余念のない輝。
 そんな輝の前に、未沙はヘルメットを持ち、軍のパイロット・スーツを着て
現れた。
 直ぐに輝は、操縦席のドアを開け、用意の物を引っ張り出す、
 「そのヘルメットは止めよう、こっちの飛行帽を被って、この方が楽だよ」
 「でも」
 「あのさ、未沙、今日はデートなんだよ、軍のメットにパイロット・スーツじ
ゃ、仕事みたいじゃないか」
 輝が笑う。
 「あ、ゴ、ゴメン。これなら汚れてもいいと思って・・・」
 「ふふ、未沙らしいけどね・・・、それから、昔の飛行機は風防が無いか
ら、これを着て、このマフラーも」
 そう言いながら、輝は未沙の後ろに回り茶色のジャンバーを着せ掛ける、
袖が通ると前に回り、ファスナーを引き上げた。
 「似合うよ、未沙・・・、上だけはね」
 少し可笑しそうに言うと、ライトベージュのマフラーを未沙の首に巻き付
ける。
 「お~い、一条大尉!」
 駐在所のような小さな建物から、小太りの所長が走って来る、息を切ら
しながら二人の前まで来ると、
 「気の早い人達だな、まったく。上に上がる前に、みんなでお茶でも飲も
うと思って、用意してたんですよ」
 「す、すいません、何か、これ見てると、離れられなくなっちゃって」
 「これは、あなた達の貸切、どこへも逃げないんだから、奥さんだって、
着いて直ぐじゃ可哀そうってもんですよ」
 「それも、そうかな」
 未沙を見ると、彼女が笑った。
 三人がちっちゃな管制所へ歩き出す、所長が未沙へ声を掛けた、
 「少佐って聞いてたんで、どんな、怖い人かと思ってました」
 「私、怖く見えます?」
 「全然!みんなで驚いていたんですよ」
 「あのう、本当は怖いんですよ、こう見えて」
 輝が、混ぜ返す。
 すかさず、未沙の肘打ちが見舞われた。
 「イテテッ、ほらね!」
 所長が笑い出す、
 「大尉、そう云うのは世間じゃ、「じゃれてる」って言うんですよ」
 「・・・所長、今日はプライベートなんだから、その階級で呼ぶの止めて下
さいよ」
 「あ・・、そうでした、野暮はいかんですね、失礼しました。でも、一条さん、
朝の6時過ぎに叩き起こされたんですから、これで、オアイコですよ」
 「えっ、輝が叩き起こしたんですか・・・、済いません、この人、飛行機の
事になると子供みたいで」
 思わず、未沙が申し訳なさそうになる、
 「いいんですよ、起きようと思ってた所なんですから。私も、三度の飯より
飛行機いじってる方が、好きな性分ですから、こんなに、飛行機が好きな
人と知り合えて嬉しいですよ」
 「そんな事言って頂いて・・・本当に済いませんでした」
 「気にしない、気にしない。奥さん、それより上がる前に、お二人の写真
を撮りましょう、今日の記念に」
 「所長、その時は、ここから上で撮って下さいよ」
 輝の手が、未沙の腰の辺りを行き来する。
 二度目の肘打ちが、輝の脇腹に喰い込んだ。
 「痛いってば!」
 「あはは、本当に仲がいいんですね、お二人は。これからも、ちょくちょく
遊びに来て下さいよ、待ってますから」
 所長が、にこやかに事務室のドアを開け、二人を招き入れた。


 

(3)

2009-07-04 21:24:23 | HOLIDAY
 僅かな風除けを乗り越えて、六月の風が未沙の頬に吹き付ける。
 二人を乗せた銀色の複葉機が、滑走路を加速していた。
 未沙にとって、それは初めての経験だった。軍の訓練で使用した飛行機は、
当然の事ながらフルカバーの風防が付いている、外気を直に感じる事は無い。
 輝が操縦桿を引くと、フワッと身体が浮いた。
 風を感じながら昇って行く青空を見ていると、未沙は鳥にでもなったような気が
した。
 「どう、気分は?」
 「素敵!」
 「良かった」
 マイクを通して、輝の声が聞こえる。
 大きく旋回しながら、どんどん高度を上げていく二枚翼の飛行機。
 ひっそりと佇む滑走路、黒く拡がる針葉樹林、その先には所々、荒地を見せな
がら緑の大地が続き、流れる川面がキラキラ光っている、遠くには小さくマクロス
シティが見えた。
 高度800mまで上がると水平飛行に変わった。
 「イースト・ピークの方へ行ってみようか、森や湖が有って綺麗なんだ」
 「おまかせするわ」
 未沙が、マイクを手に取って答える。
 輝は機首を東へ向けた。

 眼下には、深い緑と所々に水面を光らせている池や湖が見える。
 やがて二人は、湖沼地帯へやって来た。
 すぐ傍には荒々しい岩肌を見せ、白い雪を載せた山々が屹立している。
 「本当に綺麗ね、この辺り・・・、こんなに自然が戻ってる」
 「いつか、未沙を連れて来たかったんだ」
 輝がグッと操縦桿を引きながらスロットルを上げた、
 「きゃっ!」
 たちまち景色が逆さまになる。
 大きく弧を描きながら、機体が宙返りをした。
 「輝!驚かさないでよ」
 未沙が後ろを振り返りながら、マイクに叫ぶ、
 「ははは、驚いた?、ちょっと悪戯・・・、ほら、もう一度いくよ!」
 再び、風景が引っくり返る、森が頭の上に、足元に青空が拡がる。
 マフラーを靡かせながら、マイクを握り合う輝と未沙、
 「怖い?」
 「残念でした、平気ですよ。私だって操縦出来るんだから」
 「久し振りに、操縦してみる?」
 「いいの?」
 「勿論!・・・未沙、操縦、そちらへ渡すよ」
 「じゃあ」
 未沙が操縦桿を握る、手に軽い重みを感じる、久し振りの感触だった。
 「未沙、ちょっと右へ旋回してみて!」
 ペダルを踏み、バランスを取りながら操縦桿を右に倒す、機体が傾き、機首が
回り出す。
 「スロットルを、もう少し上げて!」
 未沙の手が、スロットルを少し押し上げる、
 「はい、戻して!」
 「次は、左旋回!」
 「未沙、ペダルの踏み込みが甘いよ、機体が揺れてる」
 「レバーもスロットルも、もう少し優しく動かして!少し乱暴だよ」
 「はい、今度は宙返り!」
 「そんな一遍に引っ張らない!もっと優しく!!」
 宙返りを終えると、未沙はマイクを取った、
 「ねえ、輝、私、教習に来たんじゃないのよ!デートでしょ、そんなに文句言う
んなら、輝が操縦しなさいよ」
 「ゴメン!未沙。つい、いつもの癖で・・・」
 「おとなしく、私の操縦に任せる?」
 「どうぞ、どうぞ!俺だってノンビリ飛んでみたいんだから」
 「私の操縦じゃ、ノンビリ出来ないんでしょ?」
 「そんな事ないさ、覚悟は出来てる」
 「言ったわね、輝!」
 操縦桿を押し下げ、急降下する機体。
 銀色の複葉機が、陽を受けて輝く湖面の上を滑るように駆けて行った。

 やがて、再び操縦桿を握った輝が、未沙を真っ白な雪に覆われた山へ連れて
行く。
 尾根を飛び越え、向きを変えると、大きく拡がる白い雪渓をスレスレに駆け下り
て行く。遥か前方の地上には、もうすぐ夏を迎える緑の大地が、何処までも続い
ていた。

(4)

2009-07-04 21:23:35 | HOLIDAY
 「午後は、海の方へ行ってみようか、未沙」
 広げたシートの上で、バケットをかじりながら輝が聞く、
 「いいわね、もう何年も、ゆっくりと海を見た事なんてないから」
 コーンスープをカップに注ぎながら、未沙が答える。
 教習所のスタッフ達が「一緒に」と言うのを、「天気がいいから」と言い訳
しながら、バスケットをぶら下げ近くの草地へ来た二人。
 何機もの飛行機が見える場所で、二人は昼食を摂り始めた。
 「ふふふ・・・」
 輝が、可笑しそうに未沙を見る。
 「何よ、その笑い方、嫌な感じ」
 「未沙って、車だけじゃないんだ、もしかして、あれが地の性格?」
 「何の事かしら?輝」
 「また、トボける・・・、だってさ、普段だって、他の車に抜かれると、必ず
抜き返すし、空へ上がればフル・スロットルでぶっ飛ばすし、おまけに、
荒っぽいしさ」
 心外そうな顔をする未沙。
 「そんな、抜き返すなんてしてないわよ、今日だって、どれ位、スピード
が出るか試しただけよ」
 「でも、荒っぽい」
 「解りました!!では、午後はお気に入るよう、お淑やかに操縦してみ
せますわ、教官殿」
 未沙が輝の前に、嫌いなサラダを山盛りにして差し出す。
 「野菜も、ちゃんと食べてね、輝!」
 「え、こんなに・・・、俺、ウサギじゃないんだよ」
 「そんな大きな兎が居るもんですか、何でもいいから、ちゃんと食べなさ
い、せっかく作ったんだから」
 時折、吹き渡る風の中、、二人の食事が進む。
 コーヒーを飲み終わると、輝がゴロッと寝転んだ。
 未沙もバスケットに片付けを終えると、輝の隣で横になる。
 輝の腕が伸び、未沙を抱き寄せた。
 輝の腕枕で、二人は白い雲が浮ぶ青空を見上げる。
 直ぐに二人は、午後の気怠るい、まどろみの中へ入っていった。

 海岸線から遠く離れ、見渡す限りの蒼い海原の上を、二人の飛行機が、
のんびりと散歩している。
 高度を上げ、何処までも続く水平線を眺めると、今度は降下して海面直
近を飛んで行く。
 「潮の香りがする、懐かしいわ・・・」
 「寒くない?」
 「大丈夫よ。ほら、あれ見て!カモメが飛んでる」
 子供のように、指をさす未沙。
 少し傾き出した陽射しの中、銀色の飛行機がカモメ達を追い越した。
 「驚かしちゃったかな」
 「可哀そうよ、輝」
 二人で交互に操縦を代わりながら、複葉機は飛び続ける。
 やがて、海岸線へ戻って来ると、今度は、低空で海岸線に沿いながら飛
んで行く。砂浜を駆け抜け、断崖を飛び越え、再び、どこまでも続く砂浜を、
波打ち際を飛び抜けて行った。
 「誰もいないわね」
 「うん、ここは、街から随分離れてるからね」
 「何処まで行っても、私達だけなんて・・・ちょっと、淋しい気もする」
 「俺が居ても?」
 「ふふ・・・何を言わせたいの?」
 「さあ、何かな?」
 エンジンの音が大きくなり、あっという間に高度が上がる。
 二人を乗せた銀色の機体が、東へ向きを変え、ゆっくりと遠去かって行っ
た。


 夕陽を一杯に受けた平原の中、マクロスシティへ向かう一本道を、輝達の
ジープが戻って行く。
 「何も、未沙まで整備を手伝う事ないのに、俺一人で良かったのに」
 輝が、助手席の未沙を見た、
 「二人でやった方が早く終わるでしょ、一日、お世話になったんだから、私
だって、何もしない訳にはいかないわ」
 「顔、汚れちゃったよ」
 「輝もね」
 二人が、笑い合う、
 「楽しかった?」
 「とっても・・・、今日、少しだけ輝の気持ちが解った気がする、空を飛ぶの
が、こんなに楽しいなんて、私、知らなかった」
 「本当?」
 「本当よ、鳥になって広い空を、思いっきり飛んだ気がしたわ。輝、また連
れて来てくれる?」
 「勿論さ、未沙が、そんなに気に入ってくれるなんて・・・、良かった」
 「こちらこそ、素敵な一日だったわ、ありがとう」
 未沙の手が、シフトレバーに置かれた輝の手に重なった。
 「でも、流石ね、輝」
 「何が?」
 「操縦。私の操縦とは、やっぱり、全然違うもの」
 「そりゃ、未沙とは年季が違うよ」
 ニヤリと輝が笑うと、未沙を見る。
 「帰ったら、今度は未沙を操縦しようかな」
 未沙の指が、輝の手を抓る、
 「直ぐ、調子に乗るんだから!」
 「ヘヘ、ゴメン!」
 輝の元へ、未沙が身体を寄せた。
 耳元へ囁く、
 「操縦の仕方、教えてあげようか?輝、いつも、いつも乱暴なんだから」
 チラッと、未沙を見る輝、
 「俺、乱暴?」
 「そう、乱暴よ。今日の私より、ずっと」
 沈みかかる夕陽の中、二人を乗せたカーキ色のジープが、突然、スピード
を上げ、勢いよく走り出した。


                                       (終)

                                H21.7.4 桜陰堂



 

     

   









(映画の中で)飛行機が出てくる、好きなシーン~あとがきに代えて~

2009-07-04 19:02:37 | HOLIDAY
 桜陰堂、実は飛行機が大の苦手でして。
 高所恐怖症だし(おかしな事に、昔、沢登りをしてた~これ、大概、途中で
幾つも滝を登っていくんですが)、ジェット・コースターも嫌いです。
 そんな桜陰堂にも、飛行機が出てくる好きなシーンは有ります。
 「トップ・ガン」みたいにカッコ良く、メカニカルなタイプではなく、恥ずかしい
けれど、叙情的なタイプのシーンです。
 まず、今回のSSのヒントになった「冒険者たち」(1967年、R・アンリコ監
督、F・D・ルーペ音楽、A・ドロン、R・バンチュラ、J・シムカス、仏映画)。
 マヌー、ローランの男二人組とレティシアが初めて顔を合わせ、お互いの
心が通い出すキッカケとなる美しいシーンです。
 SS冒頭のピンボケ写真にも有りますが、ド・ルーペの「冒険者たち」のテー
マ曲(有名な「レティシアのテーマ」とは違う)が流れる中、銀色の複葉機とレ
ッカー車が、まるで、飼い主と犬がじゃれ合うように疾走する2分位のシーン。
 多分、この映画を好きな人にとって、もう一つの超有名なシーンと合わせて、
思い出に残ってるシーンだと思います。
 1970~80年代、幾度もTVで放映され、名画座の定番でもあったこの映
画、僕達の世代から一回り上の世代まで、そこに居る映画好きの人達(男)
にとって、一種の「青春のバイブル」的な映画でした。
 男ばかりでなく、女性陣もA・ドロン目当てで見に来て、ファンになった人達
が沢山います(この村の人達は、R・バンチュラのカッコイイおじさんがウケル
かもしれない(笑))。
 映画は、今見ると、「甘い砂糖菓子」みたいな感じもしますが、やっぱり、
「青春へのレクイエム」とも言える甘酸っぱい味は、忘れられないものが有り
ます。
 僕の洋画ベスト10には、必ず入る作品です。

 そして、もう一本は「華麗なる賭け」(1968年、N・ジェイソン監督、M・ルグ
ラン音楽、S・マックイーン、F・ダナウェイ)
 持ち前の明晰な頭脳で、地位も名誉も得てしまった主人公(S・マックイーン)
が、完全犯罪(銀行強盗)に挑む。
 結局、それも成功してしまい、人生に何の目的も見出せず、大きな虚無を
抱え込む男。僅かなスリルを求めてグライダーで空を飛び回るが、先日、出
会った保険調査員(F・ダナウェイ)の印象から、漠然と敗北の予感も感じ始
めている。~ま、突然、目の前にコロンボが現れたようなもんで(笑)~
 M・ルグランの曲「風のささやき」(歌N・ハリソン)にのって、流線型のグライ
ダーが大空を当てもなく旋回している、何故だか知らないけど好きなシーンで
す、「風のささやき」って曲が大好きだからかも知れませんが。
 映画の出来もそこそこ良く、面白いと個人的には思っています、何年か前
「The Thomas Crown Affair」(「華麗なる賭け」の原題)のタイトルでリメイク
されてます。
 ただ難点は、いかんせん、S・マックイーンにインテリの役は似合わない(笑)、
濃厚なラブ・シーンも似合わない(濃厚なHシーンでは有りません)、あの70
秒間は拷問に近かったような気がします。
 P・ニューマンだったら、もっとオシャレで素敵な映画になったんじゃないかな、
それとF・ダナウェイの衣装がちょっと・・・、特に、Aラインタイプのミニスカートが
実に合わないんではないかと。

「あとがき」が随分、長くなってしまいました。
 他に「飛べ!フェニックス」なんかも書こうと思ってたのですが、長くなりすぎ
ましたので、この辺で終わりにします。
 
 SS、最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

                                  H.21.7.4
                                     桜陰堂


 ※「華麗なる賭け」は、記憶だけで書いたので、幾分、間違ってるかもしれま
  せん、御容赦下さい。

 ※ようつべ「冒険者たち」予告編。上記のシーンが、ほんの僅かですけど出て
  います。
   http://www.youtube.com/watch?v=gAhipgwTyhw
 
 ※ようつべ「華麗なる賭け」、記事にしたシーンです。
   http://www.youtube.com/watch?v=fUm7SVLTIQw&feature=related

 ※「風のささやき」フルコーラスはこちら、「華麗なる賭け」のオープニング・タ
  イトルの場面です。 
   http://www.youtube.com/watch?v=tg-XaYrbX-o