カメラを持って出掛けよう

仕事と音楽の合間に一眼レフとコンデジで撮った写真を掲載しています。

久し振りに訪れた

2022年07月02日 | 竹田城跡
短いながらも梅雨空が続いていた先月半ば、偶然休日と晴天が重なったので久し振りに竹田城跡へ行ってみました。
高速道路を利用せず播州から丹波を越え但馬まで一般道を行きました。


長い間来なかったうちに綺麗に整備された立雲峡への道を上り、昔カメラをセットした場所で撮影しました。
雲海の季節になるとさぞかし人が増えるだろうと思いながらシーズンオフの時間を一人で満喫しました。







次回の撮影場所は何処にするかはさておいて今年の雲海シーズンには必ず戻って来ると心に決めて山を下りました。





小説「Obralmの風」



「ほらっ、君と最初に大山のペンションで出会った日の前日に主治医から言い渡されたんや」
「じゃあ、あの時は傷心の旅行だったんですか?」
「そうや、急に人生の幕切れを悟らなあかんように思えたから」
「私、久保さんが入院したくない気持ちが何となく判るような気がします」
美華は小さく何度も頷いた。
「これで僕の話は終わりや、今度は君の番やで」
「えっ私?だって何も話すことはないですよ」
「仕事は?」
「仕事って定職には就いていません。もっぱらアルバイトです」
彼女は自ら話を打ち切ったかのようにそれ以上は語らなかった。
「えっ、それだけ?何だか拍子抜けやな」
「私の人生なんてろくなことないからこれ位でいいんです」
「まあ、レディーのことを根掘り葉掘り聞くもの無粋やけど、美人の君がどうしてろくな人生を送らなあかんのかが不思議やなあ」
彼女は缶ビールを一口飲んで微笑んだ。
「偏屈だけどいい人の久保さんがどうして末期癌に罹らなければならないのかと同じです。人それぞれ宿命のようなものがありますから」
「若いのにえらい悟ったようなこと言うなあ」
岳は彼女の意外な一面に驚いた。
もしかすると同世代の若い女性に比べると彼女は何らかの苦労を重ねていたのではないだろうか。
「私ね、実はクォーターなんです」
その美しい顔が淡く恥じらいの色に染まった。
「えっ?クォーターと言うことは?」
「そうです父親が外国人とのハーフでした」
「そうか、それで美人なんや」
「そんなことはありませんよ、どちらかと言えば日本の血の方が多いと思っています」
缶ビールをテーブルに置くと両手で否定をした。
「アハハ、それやったら日本の女性は皆ブスに聞こえるやないか」
彼女は少し睨み返すような目で下唇を噛んだ。
「そんなつもりで言ったんじゃありません」
「ごめん、君が美人を否定するからつい言うてしもた。ところでその外人と言っても国はどこ?アメリカ?」
「いえ、オーストリアです」
「ああオーストラリアね」
「違いますよ、ヨーロッパのオーストリア」
再び睨み返す顔が可愛く見えて、少し眩しく感じられる・
「そうか失礼。でも今はご両親はおられないんやね」
「ええ父親は私が幼稚園の時に交通事故で死に、母親はそのショックで精神不安定となって私を残したまま入院先の病院の屋上から・・・」
つい今まで気丈に話していた彼女は急に言葉を詰まらせ目頭を手の甲で拭った。
その仕草にはわずかな幼さが漂っている。
(彼女は幼児期に幾度となく、このような涙を流して来たのではないだろうか)
「判ったよ、もう話さなくても僕には想像がつくわ、もうええよ。それより兄妹は?」
「ええ、私一人でした」
「苦労したんやろうなあ。君の芯の強さにはそんな苦労の積み重ねがあったやね」
彼女は元の様相に戻って再び缶ビールを持つと高く掲げた。
「二度目の乾杯!もう止しましょう身の上話は。私の事より久保さんの病気は自覚症状がないのですか?」
「それが何もないんや、そやから手遅れになっちゃったんや。医者はいずれ食欲が落ちて諸症状が出るだろうって言っているんやけど、いつのことやら」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 懐かしの名曲を見つけた! P... | トップ | 母に残された時間 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

竹田城跡」カテゴリの最新記事