




先週、名古屋のキングスゾーンが出走した川崎競馬の「スパーキングサマーカップ」。
私の本命馬だったブルーローレンスの鞍上に的場文男騎手の名前はナシ。
その前日のレースで落馬負傷し、肋骨骨折が判明したからです。
的場文男騎手と言えば、言わずと知れた地方競馬を代表するビッグネーム。
50歳を過ぎても、なお群雄割拠の南関東で活躍し、現在も厩舎関係者のみならず、ファンからも絶大な信頼を得ている大井競馬所属のベテランジョッキーです。
そんな的場文男ジョッキー。
なんと昨日~日曜日からの大井競馬の今開催に、すでに騎乗をしている!?
すごい気力、精神力、そして騎乗への意欲です。
肋骨骨折。。。
部位が部位だけに、痛みはあっても動くことに差支えがなければそれも可能?なのかも知れませんが、それでも普通では考えられないことです。
この時期は2歳馬のデビューなども控えた時期であり、今後のことを考えれば是が非とも有力な素質馬の騎乗チャンスを逃したくないということもあるのでしょうか?
この数々の栄誉を手にしてきたベテランも、いまだ地元の最高の舞台”東京ダービー”は、なぜかこれまで無冠。
有力な2歳馬に乗りたい。。。
そういう気持ちがあっても不思議はありません。
もはや50を過ぎた彼にとって、それはお金の問題だけではないのでしょう。
彼にとって、騎乗は仕事ではなく、騎手こそ我が人生。
騎手は”的場文男の人生そのもの”ということなのかも知れません。



ただしかし安易に、それが何よりも素晴らしいことであり、そうでなければならない、騎手がそうでありえなければダメだ、と言う話はありません。
また、そういった時代でもありません。
経済的な部分で何もかも最低限に保証されなければならないと決められている国の、なおかつ精神的なモラルの部分でも価値観の多様さを容認されるような比較的自由な時代。
特に、大いなる未来をその手に持った若者であれば当然、まだ自分の人生の選択肢も多く、また、まだまだ遊びたい盛りで好奇心も旺盛、たったひとつのことだけに全てを賭けるということな生き方はしづらいでことしょう。
また、さまざまな視線、見方、考え方ができるようになるために、心を、人生を、豊かにすることも大切です。
自分の意思や意図とは関係なく、今後何が起こるかわからないような地方競馬の現状でありますし。。。
思えばどんなプロスポーツのアスリートであっても、若いうちはその成績や記録にムラがあるもの。
それは一般論としても成り立つ話でしょう。
時にものすごい素質を秘めた選手であっても、それは同じです。
むしろ、若い頃からコンピューターのように沈着冷静、計算されソツのない完璧なパフォーマンスをするような選手は、当然世間一般から期待はされるでしょうが、とてもそのあとの実績を顧みれば期待外れだったことが多いです。
またあまりにも周りからの期待が大きすぎてプレッシャーに押しつぶされ、人生の階段を踏み外してしまった人間もいます。
結婚前の若い時代は、遊びたくて当然!
夜更かししたくても当然!
女の子と毎日デートしたくても、それは当然なのです!
未知の世界が見たいのは誰も同じ。
そうですよね?
そんなんでコンディションが安定するわけがない。。。(笑)
しかしながら逆に言えば、その”ゆらぎの部分”が、そのあとの大きな伸びシロの部分につながるもののように思えます。
やはり、心技体でいえば”心”の部分が、長く競技を続けていくようなプロアスリートには一番大切。
でも、それは一番育てるのが難しい部分です。
どんな教科書もマニュアルもありません。
ただひとつ、私がこれまでの経験から思うことは、右へ左へ揺らぎながらまるで螺旋軌道のように大きく振幅する選手ほど、将来大きく伸びるという気がするのです。(もちろん社会的常軌を逸しない範囲で。)
ただ忘れてならないのは、やはりどんな肉体的コンディションであっても目標を明確にして進める”心の強さ”を持った人間、そうして日々フィジカルの鍛錬やテクニックを磨くことを忘れないで進むことができるアスリートでなければならないのでありましょうが。。。
競技ごとの細かい部分は私には到底わかりませんが、騎手をはじめとするプロスポーツだけでなくどんな事柄であっても(例えば仕事も)、スイッチがオンになったときには集中力を持ってそれに全力を傾けることが、誰にとっても成功のためには必要なことでしょう。


仕事が人生。。。そう聞くと少々寂しい感じがします。
また現代では、特に若者はそれを忌み嫌う風潮もあります。
それはやはり、仕事がお金儲けの手段でしかないからです。
当然です。
大部分の人間にとっては、それはごく当たり前の考え方と思います。
でも、もし”幸せの尺度”があるとすれば、それは全くもって別の次元の話。
その人間自身の心の在り方の問題。
それはどんな不遇の境遇の人間であろうとも、平等に持つ事ができるのです。
仕事とは?
幸せとは?
的場文男騎手は可哀想な人生を歩んでいるのでしょうか?
かつて元巨人軍の長嶋茂雄は、こう言いました。
「プロ野球は、人生そのもの。」
きっとそれは、周りへの最大級の”感謝”と自分のこれまでやってきた仕事への”自信”と、そして過ぎ去ってしまった時間に対する”大きなため息”が詰まった価値のある言葉であるように思いました。
大きく話が逸れてしまいましたが、そんなベテラン的場文男騎手の今回の早期の騎乗開始には、敬意を払わなければならないほどの価値と重みがある”生きざま”を感じざるを得ません。
きっと的場文男という人間にとって、今回の騎乗は決して仕事への苦痛は感じていないでしょう。
むしろ、肉体的な痛みはあっても、精神的にはポジティブに満ち溢れているように思います。
本日月曜日、7鞍騎乗。
そして驚異の4勝。
痛みはあるのでしょうが、決して追い方に手を抜いているようには見えません。
むしろ骨折前より迫力満点、必死さが伝わって来るようでした。
テレビ画面に映った第4レースが終わって引き上げてくる泥まみれの的場文男騎手の表情に見えたものは・・・・・、
騎手こそ、我が人生。
そう自信に満ち溢れて、私に語りかけて来るようでした。。。

的場文男、50歳。
34年目にして、通算5325勝。
本日の4勝で、今年のちょうど100勝となりました。
今年は早々にケガで長期休養などもあり、本人には不本意な時期の達成ではありましょうが、それでも連対率の高さは今年も健在。
今だ彼の対するファンへのカリスマ性は凄いものがあります。
ひとまず区切りの100勝達成、おめでとうございます。
オトコやねぇ~。。。
カッコ良すぎるわ。。。。。
明日もまた、彼は、これまでに競馬場を去っていった先輩諸氏、共に切磋琢磨してきた同年代のライバル達の想いを胸に、競馬場のコースの上に颯爽とその勇姿を見せてくれるのでしょう。
でも、体だけはお大事に。
それでは、また。