「なんで、こんな一段一段なんだろう。」
バンクーバー五輪、女子モーグル、上村愛子選手。
ワールドカップでは、ツアー年間総合優勝も経験している彼女。
オリンピックは4度出場し、7位、6位、5位、そして4位。
その言葉には、12年間の深みと、重みと、誇りが示されている。
他人のインタビューで、記憶にないほど久しぶりに涙した。
結果は、決して望んだものではなかった。
それでも彼女は、その言葉を決して暗いものには響かせない。
それは、誰にでもできることではないと思う。
それはもしかしたら、メダルよりも価値のある彼女の財産なのだろう。
性格は地味でも、誰にでも好かれる華のあるアスリートだった。

<中日新聞 2月15日付 朝刊 1面記事より>
「愛子はゆっくり成長できる人。よく頑張った。」
それに呼応するような、母の彼女に対する言葉。
短い言葉の中に、これほどの意味を込められるものか。
こんな子になりたい。こんな親になりたい。
心底そう思った。
→ 上村愛子本人のオフィシャルブログ (大会翌日掲載分)
映画「食堂かたつむり」 パンフ。

「人間はみんな誰かの子どもで、
みんな何かを食べて生きています。」
(監督、富永まい)
柴咲コウ演じる主人公の倫子と、上村愛子が少しだけ重なった。
世の中の速さに付いて行けなくとも、ひとつひとつゆっくりと自分自身が納得できるまで考え進んでゆく。
それは弱さでもあり、また強さでもある。
「大器晩成」。
それが出遅れた人に対する慰めの言葉ではなく、過去の人々の知恵と経験から生み出された優れた言葉であるならば、それは彼女達のためにある言葉なのだと思う。