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支流からの眺め

コロナ禍における森発言問題(1)―その問題点は

 新型コロナウイルス感染症の流行が収まらず、東京オリンピックの開催が危ぶまれている。その中にあって、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長が、女性を蔑視するような発言を行った。それに対し国内外から批判の声が上がり、ボランティアや聖火ランナーの辞退もおこった。五輪開催の懸念が更に高まる事態となり、遂に森氏が辞任した。この顛末について、コロナ関連事項として考えてみたい。

 まず、一次資料として問題発言の全文を記す。
 これはテレビがあるからやりにくいんだが、女性理事を4割というのは文科省がうるさくいうんですね。だけど女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります。これもうちの恥を言いますが、ラグビー協会は今までの倍時間がかる。女性がなんと10人くらいいるのか今、5人か、10人に見えた(笑いが起きる)、5人います。
 女性っていうのは優れているところですが競争意識が強い。誰か1人が手を挙げると、自分も言わなきゃいけないと思うんでしょうね、それでみんな発言されるんです。結局女性っていうのはそういう、あまりいうと新聞に悪口かかれる、俺がまた悪口言ったとなるけど、女性を必ずしも増やしていく場合は、発言の時間をある程度規制をしておかないとなかなか終わらないから困ると言っていて、誰が言ったかは言いませんけど、そんなこともあります。
 私どもの組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます。みんな競技団体からのご出身で国際的に大きな場所を踏んでおられる方々ばかりです。ですからお話もきちんとした的を得た、そういうのが集約されて非常にわれわれ役立っていますが、欠員があるとすぐ女性を選ぼうということになるわけです。

 この発言が、日本オリンピック委員会(JOC)の評議員会での挨拶であった。公式発言ではないが評議員向けの談話、それも40分ほどの一部らしい(喋らせ過ぎだが)。内容は、①女性を理事会に入れるよう文科省がうるさい、②女性が入ると会議が長くなる(と、ラグビー協会の恥を晒す)、③女性は競争意識が強く誰かが発言すると自分も発言したがる、④女性の発言が長くて困ると言っている人もいる、⑤組織委員会の女性委員はわきまえていて話は的を得ている、となろう。

 発言内容は、男性社会に女性が入ることに伴う男性側の困惑とボヤキであり、同様の印象を持つ人の受けを狙ったクスグリともとれる。最後に聴衆の女性に配慮したものの、わきまえるという表現が逆効果になっている。森氏の年齢(育った時代)から見て、女性の社会参加を快く思っていない、女性への蔑視、少なくとも特別視が根底にあることは確かであろう。五輪開催の最高責任者の発言としては、間違いなく不適切である。ここで問題にしたいのは、①辞任に値するほどの失言なのか、②どうして一様に批判が起こったのか、③どうしてこのタイミングなのか、である。

 ①:この発言はオリンピックの精神に反すると言われる。クーベルタンが唱えたオリンピックの精神とは「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって、平和でよりよい世界の実現に貢献すること」とある。東京大会の基本コンセプトは、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、「一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」の3つである。多様性と調和の説明に、「人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治、障がいの有無など、あらゆる面での違いを肯定し、自然に受け入れ、互いに認め合うことで社会は進歩」がある。

 クーベルタンの精神には、性別のことは明記されていない。文面を読む限り、森発言が精神に著しく反するとは思いにくい。東京大会の理念でも、基本コンセプトのひとつの多様性の中に8つの例を挙げ、そこに性別が含まれている。ことさら女性差別とも書かれていない。女性委員を排斥したというなら話は別だが、この程度の嫌味で挫けるようでは委員も勤まるまい。芸能人の脱線発言なら許されたものであろう。しかし、会長という重職で実権のある人の発言であれば、おふざけでは済まない。不快感から、辞めてほしいと思う人もいるだろう。

 ②:発言報道を受けて、国民が一様に「森辞めろ」モードになった。五輪には協力しない(ボランティアを降りるなど)と言う人も現れた。国際的にも批判が起こり、当初は擁護的であったIOCも完全に言を翻した。スポンサー企業も、自社のイメージを守ろうと攻撃側に回った。そうなると雪崩を打ったようになり、世の中の集中砲火を浴びる形となった。一斉に強烈な批判が上がった。謝罪したのだから、職務を全うしてもらえばよいという擁護的な発言はほとんど聞かれなかった。その示し合わせたような一様さが異様であった。世界中が何か共通する心理状態にあることが疑われた。

 ③:森氏は昔から問題発言が多い。記者にネタを提供するという意味で有難がられた面もあるらしい。7年も会長職にあって、この間に不適切発言がなかったとは思えない。それがどうして今ここで、やり玉に挙がったのか。五輪中止を策動する勢力が暗躍したという陰謀論には与しない。しかし、中止を支持する人が増えていたことも確かであろう。現政府を追い込もうとする政治利用の意図も、一部の人にはあったろう。しかし、ここまで広がったのは、説明がつかない。

 ②と③から考えるに、ここにコロナ流行が関係しているのではないか。このことを、次のブログで考えたい。

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コメント一覧

sekoisyougioyaji
オリンピック中止の責任押し付けですね。
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