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支流からの眺め

武漢コロナ感染症を巡る夏の議論(1)―なぜ第2波で重症者が少ないのか

Wuhan由来の感染症WARS (https://blog.goo.ne.jp/tributary/e/84da922cdd25a87b24d80a3e0c6df67b)  の流行に特化したBlogに戻る。

 冬に発生したWARS流行は春にはいったん収まったが、夏になって再び発生し今も続いている。便宜上、患者数が4月末で最大となった流行を第1波、7月頃から増えてきた流行を第2波とする。この第1波と第2波は様子が異なる。患者数は第2波で多い(2倍以上)のに、重症者数は少ない(2、3割くらい)。重症化率や死亡率でいえば1桁違うだろう。

この理由・要因はいくつか考えられる。
①検査対象の違い:第1波ではPCR検査の適応を絞り、第2波では適応を若い人や無症状の人まで広げたので、重症者の割合が小さくなった。
② 比較時期の違い:重症者は発症から1-2週間で増えてくる。今の第2波は、第1波でいえばまだ立上がりで、時間が経てば重症者が追い付いてくる。
③防衛意識の向上:第1波の経験で糖尿病などの合併があると重症化することが分かったので、合併症のある中高齢者が特に予防や早期受診に心がけた。
④治療方法の進歩:第1波の経験からサイトカインストームや血栓形成が重症化に関与することが分かり、早期発見や対症的治療が一般化した。
⑤免疫能の向上:第2波の前に不顕感染や他のウイルスによる免疫の賦活があり、感染しても重症化しないで済んでいる。
⑥ウイルスの変異:第2波のウイルスは病原性が下がる変異を起こしたので、重症化しにくくなった。

 ①(検査件数の増加)は的外れかもしれない。重症化するのは殆どが高齢者なので、高齢者だけを比較する必要がある。それでも第2波で重症化率は下がっている。②(時期尚早)の可能性はあり、今後の経過を見る必要がある。しかし、重症者数の推移は依然だらだらとしていて、急激な上昇は起こっていない。③(高齢者の行動変容)の社会的要因、④(治療の進歩)の医療的要因、⑤(免疫能の向上)と⑥(ウイルスの変異)の生物的要因は、いずれも可能性があり、厳密な科学的検証が必要かつ可能であろう。③については社会調査、④は治療方法の調査や各施設での病歴の見直し、⑤は抗体や特異的T細胞の検査、⑥はウイルスの遺伝子検査などで検証できる。それらの研究成果を待ちたい。

 理由のいかんは問わず、第1波と第2波の違いの解明がWARS流行の制御に重要であることは間違いない。

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