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大阪のおばちゃんのお話

つれづれ日記・創作・童話・エッセイ 

ちょっと 創作 {遠い 記憶  その2 }

2009-04-01 21:06:37 | 童話
 ふと 気が付くと もうラジオ体操はとうに終わり 周りではそれぞれザワザワと 塗り絵をしたり 折り紙をちぎって下絵に貼り付けていく作業や クロスワードやに 仲間とそれぞれ興じている。
 男組の二人は いつもどおり将棋をさしながら 若い頃の下らん遊びに呆けたことを 自慢げに話をしている。他の一人は もう本当に惚けているのか 一日中 あらぬほうを見つめているだけだ。もう一人は 体調が悪いのか 一日中 ベットで横になっている。女組は 全体ににぎやかで元気だ。やかましいくらいだ。
 
 みんな しょぼくれた服を着て しょうもない話に しかもレコードのように同じ話を繰り返して・・・ イヤだ! イヤだ! 私は まだ80歳前なのに。
 働いて働いて 会社を大きくし家を作り 家族を守り 頑張って頑張って生きてきたのだ。ココにいるようなちんたらちんたら生きてきたヤツらと違うのだ。
 たまらない。情けない。風呂でさえ 人の手を借りなければならない体になってしまうなんて考えもしなかった。
 たまらない。腹が立つ。何の心配もないはずだった老後を 馬鹿息子に破滅させられた。最終的には 夫婦で 共に苦労した妻と共に邸を売り 温泉付きの有料老人ホームに入る予定にしていたのに。妻が先立ち 邸を失い コツコツとためていた預金の大部分は 息子の不始末で路頭に迷わせて仕舞った従業員への退職金に使ってしまった。

 こうして このデイ施設にきて 週二回通い過ごす時間の大半を 私は ”遠い記憶”を 思い出している。
 子どもの頃は 貧しかった。中学を卒業するとすぐ 近くの工場に働きに出て 運転免許証を手に入れると 友人と二人で 小さな運送会社を始めたのだ。
 少し お金が貯まると その一部で苦労していた母を 年に2回ほど近くの温泉場に連れて行ったものだ。
 そのたび 母は”極楽・・・ 極楽・・・”といい 温泉の湯に赤らんだ顔を ほころばしたものだった。その言葉で 私は エネルギーを貰い 辛い仕事にも耐えられたと思っている。
 母は 貧しさの中で もちろん内湯など無く 本家の貰い風呂で 本家全員が入った後の 垢の浮いた風呂の流し場で 私の背中を洗いながら  
 「ワシの宝物じゃけん。誠は。ええ子になりや。ええ子いうんは 優しい子いうことじゃけんな」
 といったものだった。
 母の 手ぬぐいの感触が まだ 私の背中に残っている。母は 私が会社を大きくし 檜の家を新築し 広い檜の風呂に 大病をしてやせ細った母を入れ 背中を流してやったとき 号泣した。
 「幸せや。幸せや。ほんとに誠は ええ子じゃった。母ちゃんは 幸せじゃ」 
 と いった。母の背中を流している私のほうが 何倍も幸せだと思ったものだ。 私も 母の細い体を洗いながら 涙を流した。このときのために 私は 時とすれば寝もやらず 仕事に頑張ってきたのだ。
 その母も その家に2年も住まないまま逝き 私を支えてくれた妻も 程なく逝ってしまい 馬鹿息子は会社をつぶし 私は 今 ここにいる。

 会社が潰れたとき 今まで 私に親しんでくれていたもの 近づいてきてチヤホヤしていたものが 潮の引くようにという言葉があるが それこそ ”見事”というほどの勢いで去っていった。かなりの苦境を救ってやったものでさえ。
 それは 私の心を壊した。会社倒産の飛まつを浴びないようにという自己本能だろう。飛まつなど浴びせはしないのに。

 ただ 母も妻も 会社が倒産し邸も全財産を失ったことを知らないまま逝ったことは 私に取っての唯一の慰めだ。

 「本田さん。入浴の時間ですよ」
 と うながされ 私は職員の手で 浴室に連れて行ってもらい 自分で洗える範囲内の部分は自分で洗い 洗い残している部分や背中を 丁寧に洗ってもらう。
  その時 毎回 一瞬 私は子供に返り 母の手ぬぐいの感触を思い出し遠い記憶の中に浸っている。
 
 

 もう3ヵ月だ。このデイ施設に来て。
 自分の体の不自由さや 人の世話にならなければ生きて行けない自分を嘆き 過去の自分の栄光を浴びた人生を懐かしがってばかりいて 倒産と同時に裏切り 去っていった者たちへの恨みに浸るのではなく 人の好意を信じて生きてみようかと”武士は食わねど高楊枝”ではなく 意地を張らず素直になって 人に頼るところは頼って生きてみようかと ほんの少しだが思い始めたいる。
 
 今日 私を入浴介助をしてくれた職員の手から 子どもの頃 私の背中を流してくれた母の手ぬぐいを 思い出して私は思ったのだ。
 息子も許そうと。
 そう長くはない人生だ。
 人を悪く思うのではなく 一日でも 自分も回りにも感謝して生きねばならないのではと。その方が 高楊枝を気取り 意地を張って生きるより楽ではないかと。

 母は ”いい子いうんは 優しい子じゃけん”いうたたではないか。遠い記憶の中の母が ”極楽 極楽”といっていた母の顔と重なった。母の 痩せた背中を流して 涙した自身を思い出した。

                    おわり   

ちょっと 童話 {やまおくの おにのかなぼう  その2}

2009-03-19 22:12:36 | 童話

 とおくからきこえているのは たたかいのおたけびでした。
 むらびとたちは おそれました。
 ずっとまえ こんな声をきいた よくじつ むらがやきはらわれたのです。

 かぜになっていた おにのこどもたち ふたりも 
 そのはなしを とうちゃんおにから きいたことがありました。

 かぜになっていた おにのこどもたち ふたりは
 おおいそぎで おたけびがあがったほうに ふいていきました。

 かぞえきれないほどの よろいをつけた 男たちが
 かたなや やりをもって むらをめがけてはしってきています。


 そのときです。
 
 はしってくる男たちが みあげた空に
 おおきな まっくろなくもが もくもくとわき
 つよいかぜが たつまきのように ふきあれました。

 おとこたちは おそろしくなって あしをとめました。
 「おそろしや~~ おそろしや~~」
 と おおさわぎになりました。
 「こらっ これしきのあらしを おそれるな! すすめ! すすめ!」
 と たいしょうがどなりましたが
 「いやぁ~~ これは かみさまのたたりやぞぉ」
 「そうだ。つみもないものをころすなということに ちがいないぞ」
 「そうだ。そうだ」
 男たちは はげしいかぜと雨の中で たちどまり
 やがて きたほうこうに はしりだしました。

 「とまれ! とまれ! にげだしたものは ころすぞ!」

 たいしょうは さけびました。

 かぜになっていたおにのこどもは そらをみあげました。
 「とうちゃん!」
 ふたりは どうじにさけびました。

 とうちゃんおには くろいくものうえで
 いかりをあらわし ふたりがみたこともない こわいかおで
 にげまどうおとこたちを みていました。

 とうちゃんおにのかなぼうが ぐわぁ~~んと ふられました。

 いばりちらしていた たいしょうのからだが
 とうちゃんのかなぼうで どわ~~んと とばされました。
 たいしょうは とおいとおいそらのむこうに とんでいってしまいました。

 けらいの男たちは いっせいににげだしました。

 くろいくもも あらしもきえました。
 とうちゃんおには また かなぼうをふりました。

 こんどは かなぼうは むらのはずれの
 ちいさな 川にそって ゆっくりとうごかされました。
 ちいさなかわは おおきな河になりました。

 とうちゃんおには 
 「これで だれもせめてこれない。おおきなか河をわたれないからだ。これで 村のひとびとは たたかいにまきこまれないで しあわせにくらしていける」
 と いいました。

 こどもおにのふたりは もとのおにのすがたにもどって
 とうちゃんおにのりょうかたのかたにすわって むらをみまわしていました。

 むらのひとびとは はたけやたんぼややまで
 たのしそうにはたらいていました。

 おにのかぞくは それをみて しあわせでした。
 そして
 とうちゃんおにの かなぼうは どうくつのおくで
 きんいろに かがやいていました。


                       おわり 

ちょっと 童話 {やまおくの おにのかなぼう その1}

2009-03-18 22:35:28 | 童話

          お    江戸かるた    鬼に金棒
               尾張かるた    陰陽師身の上知らず
               上方かるた    負うた子に教えられ


 むかしむかし ある山のおくに おにのいっかが 住んでいました。
 とうちゃんおに かあちゃんおにと おんなのこのおに おとこのこのおに。
 4人は 山のてっぺんの どうくつに住んでいました。

 山のてっぺんには ちいさなじんじゃがあり そのじんじゃのおくは
 岩の どうくつになっていました。
 そのどうくつに 4人は仲良く住んでいたのです。
 
 たまに 村の人が とれたてのくだものややさいやおこめや
 あまいおはぎや つきたてのもちなどを じんじゃに供えに
 山にやってきました。
 それが おにのいっかのたべものでした。

 どうくつのおくに 大きなかがみがあり 
 そのかがみには むらのようすが いつも うつしだされていました。
 いつも それを見ている 子どもおにの二人は 
 むらのこどもたちと いっしょに 
 あそびたくてしかたがありませんでした。

 おんなのこおには むらのこどもたちが おてだましたり 
 あやとりしたり なわとびしたりしているのが
 うらやましくてしかたがありませんでした。
 
 おとこのこおには むらのこどもたちが さかなをとったり
 おにごっこしたり はしりまわってあそんでいるのが 
 うらやましくてしかたがありませんでした。

 「とうちゃん かあちゃん むらのこどもたちと あそびたい」
 ふたりが いいました。
 「おには おにだ。にんげんたちとは あそぶことできん」
 とうちゃんおにが いいました。
 「そうだよ。にんげんは たのみごとや なやみごとや つらいことやをいいにこのじんじゃにきて おがむの。”おにがみさま” おねがいしますってね」
 かあちゃんおにが いいました。
 「わたしは かみさまなんかいや。ふつうのにんげんになりたかったもん」
 おんなのこおには なきながらいいました。
 「かみさまなら とうちゃん おれを にんげんにしてくれ」
 おとこのこおには おこっていいました。
 
 とうちゃんおにと かあちゃんおには こまりました。
 「にんげんには なれないが ”かぜ”にしてやろう。むらのこどもたちには おまえらのすがたは みえないけど いっしょにそばで 走ったりあそんだり できるかもしれないからなぁ」
  とうさんおには そういうと とても大切にしている(かなぼう)で ふたりのこどものあたまを なぜました。
 ふたりのこどもおにのすがたが 消え
 かぜが ごおっとおこりました。

 かざになった ふたりのこどもおには
 やまを かけおりて むらのまんなかの ひろばにやってきました。

 「なんだか。かぜが やまからおりてきたみたいだ」
 「さむくなったぞ」
 「だいじょうぶさ。これくらい。さぁ こんどのおには きくちゃんだ」
 「よ~~し。きくちゃんが ”じゅう”かぞえているまに かくれんるぞ~」
 「いち にい さん しいい・・・     」
 きくちゃんは 大きなしいの木のしたにいくと 
 木におでこをつけて かずを かずをかぞえはじめました。

 「ねえちゃん あの子 きくちゃんというこ”おに”って いわれていたよ。おれたちと あんなじなの?」
 「・・・ どうみても にんげんよね」
 「あのこに きいてみようよ」
 「そうね。あのうあのう~~~ あなた きくちゃんは おになの?」

 きくちゃんは ふしぎそうに周りをみまわしました。

 だれも いません。かぜの音がするだけです。

 きくちゃんは かけだしました。
 あちこちで 
 「けんちゃんみつけた! あぁ ふろばのまきごやで ごんちゃんみぃつけ!
きょうちゃんみっけ!・・・ 」
 きくちゃんの はずんだこえがきこえ にんげんのこどもたちの わらいごえがゆうひにてらされた むらむらに ひびいていました。

 かぜになったふたりのおにのこどもも きくちゃんのそばで やわらかいかぜになって はしりまわりました。うれしくて うれしくて。
 
 ふたりとも にんげんのこどもといっしょに わらいましたが・・・
 にんげんのこどもたちには ふたりのわらいごえは きこえていません。

 でも おにのこどもたちは しあわせでした。

 とおくから うまのひずめと 
 「うわぁ~~~」というこえがきこえてきまた。
 むらのこどもたちが おそろしさに かおをみあわせ 
 いっせいに いえにむかって はしりだしました。

                   つづく   

ちょっと 童話 {石ころと スエばあちゃん }

2009-03-16 21:04:08 | 童話

       ゐ  江戸かるた   芋の煮えたもご存じなく
          尾張かるた   ゐり豆に花が咲く
          上方かるた   鰯の頭も信心から

  ”ゐ”という字は わたしの子どもの頃でさえ めったにお目にかかったことがなかったとおもいます。でも なんか ちょっと(ロマンチック)な(芸術的)な字のような気がしています。今の子どもは ??? な字でしょう。


 むかしむかし ちいさな村に スエさんというばあちゃんがいました。
 ばあちゃんは ひとりぼっちでくらしていました。
 
 ちいさなはたけで おいもや だいこんや にんじんをつくり
 ちいさなたんぼで おこめをつくり
 ちいさなにわで にわとりをかい
 ちかくのかわで おさかなをとり
 おおきな犬と なかよく くらしていました。

 スエばあちゃんは まいにち まいにち
 にわのすみにある まんまるな石に
 「きのうも元気でくらせたましたわ。ありがたいことで」
 と いいながら 石ころを しわくちゃな手でなぜました。
 「きょうも よろしく おねがいいたしますわ」
 と いいながら 石ころを しわくちゃな手で トントンとたたいていました。

 村の人々は
 「あんな石ころ おがむなんてバカだ」
 と わらっていました。
 でも スエばあちゃんは いつもニコニコと きいていました。
 
 スエばあちゃんは 
 村の中に びょうきの人がいれば 
 じぶんのはたけでとれた おいもでつくった おかゆや
 にわでかっている にわとりのたまごを もっていってあげました。

 スエばあちゃんは
 村の中に ケガをした人がいれば
 じぶんのはたけのしごとを ほっておいても
 ケガをした人のはたけを てつだいにいきました。

 いつも ニコニコして

 そして
 いえにかえると まんまるな石ころに
 「ゆきさんの びょうきが早くなおりますように」
 「じろうさんの ケガが 早くなおりますように」
 と おねがいしていました。

 ある日のあさ スエばあちゃんが 
 いつものように まあるい石ころを おがんでいると
 石ころが とつぜんピカッピカッとひかりはじめました。

 スエばあちゃんは びっくりしました。
 石ころは どんどん ひかりをましていきました。
 とうとう 石ころは 金のかたまりになりました。

 その金のかたまりの上に 小さな小さな女の子がいました。
 「タケばあちゃんは いつも なんにでも”ありがとう”といい 人々にやさしくて とっても いい人だから この石ころを 金のかたまりにしてあげた」
 スエばあちゃんは
 「そんなもんいらねぇ。もとの石ころさまにかえてくれ! わしは あの石ころさまが 好きなんだ。あの石ころさまは わしのだいじなものだ。わしは元気で 毎日くらせたら なんにもいらない。あの石ころさまが いいんだ」
 と いいました。
 「この 金のかたまりを 売ったら すごいかねもちになれるのに」
 「お金? なんかいらねぇ。金なんかあってもなんにもならねぇ。いらねぇ。いらねぇんだ」
 「お金のいらない人間なんて。しんじられないわ」
 「お金は 人間をわるもんにするんだ。お金がなくても 石ころさまと 元気な体と 村の人たちと仲良く くらせたらいいんだ」

 あっというまに
 金のかたまりは もとの石ころになってしまいました。

 スエばあちゃんは 石ころさまのまえで
 ニコニコしながら いつまでもいつまでも 手をあわせていました。
 

  

ちょっと 童話 {おにが わらうわけ }

2009-03-06 19:42:31 | 童話



          ら    江戸かるた    楽あれば苦あり
               尾張かるた    楽して楽しらず
               上方かるた    来年のことをいうと鬼が笑う
 ぼくは オニの子。
 とうさんオニは あおいろオニ かあさんオニはきいろオニ。
 ぼくは みどりいろオニなんだ。
 とうさんオニは オニのくにのおおさま。
 かあさんオニは おきさきさま。
 ぼくは おおじさま。

 けらいが たくさんいるんだよ。かぞえきれないほど。
 くろいろオニ だいだいいろオニ ももいろオニ ちゃいろオニ しろいろオニ
 みんな とっても やさしい オニばかりなんだ。
 オニのしごとは にんげんたちを みはることさ。

 やさしいにんげん。しんせつなにんげん。おもしろいにんげん。
 うそをつくにんげん。いじわるなにんげん。わるいことをするにんげん。

 オニたちは せかいじゅうにいるんだ。ひとりのにんげんに ひとりのオニ。
 ひとりのオニが ひとりのにんげんの”かた”に のっているんだよ。
 みんなしらないだろ? みたことないだろ? 
 だって
 にんげんには ぼくたちオニのすがたはみえないんだもの。
 おとなのオニのおおきさは にんげんがたべる おまめさんくらい。
 こどものオニのおおきさは おまめさんのはんぶんくらい。

 あさも ひるも ばんも ずっといっしょ。
 にんげんのねているあいだは オニもねているんだけど。

 それで にんげんのやること にんげんのこころにうかんでいること・・・
 みんな オニはみているんだよ。

 ぼくは とうさんに きいてみたことがあるんだ。
 「どうして そんなこと ぼくたちオニがしているの?」って。
 「それはさ。てんにいるかみさまに ねんいちど にんげんのしたこと こころにうかんだことを ほうこくするんだよ。もちろん ひとりひとり ほうこくするんじゃないよ。いま にんげんが ”ぱそこん”とかいうもので すごいはやさで じょうほうというものを こうかんしあっているけど わしたちオニから かみさまにほうこくするのは もっとはやいんだ。なんじゅうおくにんものオニの ほうこくをしゅんかんに かみさまに ほうこくできるのさ。エライだろ?」
 とうさんは りっぱなひげを ぴーんとひっぱりながら いいました。
 
 「それで かみさまは どうするの?」
 「そうだね。かみさまは またしゅんかんに そのほうこくされたことを にんげんの”いのち”に きざみこむのさ」
 「えぇ~~ ”いのち”にきざむって?」
 「そうだね。にんげんは いまいきているだけじゃないのさ。ずっと ずっと ”いのち”はつづいていくのさ。オニは しんでしまったら おわりだけど にんげんは しんでも また”いのち”をえて このよのなかにうまれてくるのさ。それで まえにいきていたときのしたこと こころにうかべたこと みんな もって またうまれてくるんだ。にんげんに うまれかえれないのもいるよ。たくさん」
 「よく わからない・・・ 」
 「いいんだ。わからなくても。にんげんたちは じぶんのしたこと こころにうかべたことを ずっと せおっていくのさ。わたしたち オニは それをかんしし みまもって かみさまにほうこくするという じゅうようなやくめを おおせつかっているのだよ。だから にんげんは なんとなく オニをこわがって むかしばなしや せつぶんで オニを わるものにするんだね」
 「そうか・・・ オニって にんげんのきらわれものだものね」
 「だから こんなにちいさな にんげんのまめつぶほどなのに おはなしでは にんげんより おおきくて こわいかおに かかれているのだよ」
 「ふ~~ん。オニってえらいんだね」
 「にんげんが わるいことしても オニは にんげんに ばつをあたえることができないよ。でも にんげんは じぶんでじぶんのおこなってきたことを じぶんでじぶんに ばつをあたえるんだよ。じぶんで じぶんの”いのち”に」
 「よけい わからないなぁ」
 「わからなくて いいさ。にんげんは いずれか じぶんのしたことは じぶんでせきにんをとらなければ ならなくなるっていうことさ」
 「ちょっと わかったきがする」
 ぼくは とうさんにいった。

 「だから そのとしのおわり おおみそかに せかいじゅうのオニが いっせいにわらうのさ。にんげんは {らいねんこそ らいねんこそ}って ちかうけど おおくのにんげんは よくばりで うそつきで ひとのいたみにきがつかないで しらんふりして じぶんのことだけをだいじにして いきるにちがいないからさ。また らいねんも オニたちが かみさまにほうこくすることが いっぱいたまるからね。にんげんより オニのほうが ずっと やさしいから にんげんのこと わらってやるのさ」

 ぼくは わらった。
 オニって すごいんだ。

                     おわり 

 



 

ちょっと 童話 {幸せな猫の ミケ  その3 }

2009-03-04 20:03:43 | 童話

 おじいちゃんとミケは 小さなアパートの小さな部屋で幸せに暮らしていました。おばちゃんは 毎日のように おじいちゃんの家にやってきました。
 このアパートは おばちゃんの家の近くにありました。おばちゃんが そうしてほしいといったのです。ずっと そばで お世話したいといって。

 おじいちゃんの部屋の窓には あの大きな家の庭に咲いていた 桜草やチューリップや百日草の小さなうえきばちが置いてありました。ミケは その花のにおいをかぐことが大好きでした。
 
 おばちゃんが おいしい肉じゃがを持って来てくれた ある日のこと
 「だんなさん 少しおちつかれましたか? あんな大きなお邸から こんな小さな家に・・・ 」と おばちゃんが 悲しそうに言いました。涙が ポロッとこぼれていました。
 おじいちゃんは
 「いいよ。いいよ。便利でいいし。ミケと散歩できる公園も 近くにあるし。タケさんも よくしてくれるし」
 「清さんは どうしておられるのですか?」
 おばちゃんは 少し怒った声で言いました。
 「あぁ 清の会社は倒産・・・ 会社 つぶれてしまったよ」
 「おやぁ。まぁ。なんていうこと! あのお邸を 売ってしまってまでしたのに。なんという 親不孝な! こと」
 おばちゃんが もっと怒っていいました。
 「あぁ~~ いや。いいんだ。あの家を売ったお金は ぼくが社長をしている頃から いっしょうけんめいぼくを助けてくれた社員たちの退職金にしたんだ。それを条件に あの家を売ったんだよ。清は 今 無一文さ。ようやく 自分の身勝手さとわがままさと 自分の力のなさを わかったようだよ」
 「あら・・・ 」
 おばちゃんは おどろいて おじいちゃんをみつめました。
 
 かなり前に ミケは ときどき 息子の清と おじいちゃんが この部屋で話しこんでいるのを おじいちゃんのひざで うとうとしながら聞いていました。
 「清 今からは自分の力で立つときだ。まぁ 大丈夫だ。自分の”痛み”を知って 人の”痛み”を知ることができるんだぞ。いい経験をさせて もらったんだ。今まで 力の無いお前を 支えてくれた社員に せめて・・・ 最後の 責任をとらなくてわ。ぼくの財産も お前の財産もすべて 取引先の会社や 社員たちに支払うんだ! お前だけが悪いのではない。ぜんぶ ぼくの責任だ。ぼくは 清が 子どもの頃から 甘やかせてきてしまった。”猫に小判”だったんだよ」
 猫という言葉に ミケは ビクッとしました。ミケは 人間の言葉は よく分かりませんが”猫”という言葉には 反応しました。 ”なんだろう? わたしのことのこと? でも この男の人・・・ おじいちゃんに 悲しい辛い思いをさせているのだわ。この人 キライ!”と感じていました。
 「いや。ミケには関係ないよ。”猫に小判”は (大事なものを与えても 本人は その値打ちがわからない)ということだよ。ぼくは 清には 清が欲しがるものを 何でも与えてきたんだ。大人になってからも。清は それに甘え 感謝や 他の人にたいする思いやりを忘れて・・・ いや 何も気がつかないまま・・・ こうなってしまっていたんだ。みんな ぼくの責任さ」
 「お父さん・・・ おれ・・・ 」
 「清! いい機会だよ。一から出直して・・・ 生まれ変わって これからは いきていくんだ」
 「・・・ そうだね。そうするよ。お父さんを こんな目にあわせて」 
 「いいさ。この部屋で ちょうどいい。楽しいよ。この猫のミケが 今では ぼくの宝物さ。何よりもの家族さ。今まで生きてきて 今が 一番幸せさ」
 「お父さん・・・ すいません」
 そういうと 清は帰っていきました。

 おばちゃんは そうしたおじいちゃんと清の話はわかりませんでした。でも おじいちゃんの顔が 大きなお邸に住んでいるときより ずっと幸せな顔をして 元気そうなので 安心しました。

 ミケは 散歩の途中で 太った猫のじゅにあと カラスのくろと トイプードルのぴーと ぴーちゃんを連れているあいちゃんという女の子と 友だちになり 楽しい毎日を過ごしていました。
 なによりも おじいちゃんとのくらしは ミケに取って幸せでした。それは おじいちゃんが ミケといることを幸せと思ってくれていることを 知っているからでした。
 ”だれかを 幸せにしている”・・・ ということが 一番 自分に取って 幸せなことだからです。


                     おわり   

ちょっと 童話 {幸せな猫の ミケ  その2 }

2009-03-03 21:51:18 | 童話

  ミケが 朝 目をさますと おじいちゃんがいませんでした。ミケは おどろいて 大きなベットの上でウロウロしました。”どうしょう・・・どうしょう”ミケは 心配で 心細くて 大きな声で鳴きました。

 「おや おや。目をさましたのかい?よくねむれたようだね。よかったね」
 おじいちゃんは しんしつのドアを開けながらいいました。
 ミケは おじいちゃんのむねに とびつきました。クゥクゥいって 甘えながら。おじいちゃんは ミケの頭をなぜて ぎゅっとだきしめました。
 ミケは 幸せでした。ミケをだいたまま おじいちゃんは 階段を下りリビングにいきました。

 そこには とても太ったおばさんがいて
 「まぁ かわいい子。牛乳をあたためていますよ。あとで 買い物に行ったとき ミケちゃんに合う キャットフードを買ってきましょうね。さぁ 牛乳を お飲みよ」
 そういうと 赤いお皿を置きました。
 「そうそう・・・ おしっこのシートや ミケちゃん用のベットとかもいるよね」
 ミケは 今度は 牛乳をためらわずに飲みながら ”おいしぃ~~ あのおばさんが言っている キャットフードってなんだろう?”と 思いました。

 それから もう何ヶ月もすぎ
 ミケは おじいちゃんにも おばちゃんにも愛されて 幸せに暮らしていました。おばちゃんは 朝きて おじいちゃんの食事を作ったり おそうじしたり 庭の手入れをしたり ミケと遊んだりして 夕方になるとかえって行きます。
 ミケは ずいぶん大きくなりました。

 ある日
 おじいちゃんの玄関のドアが ばぁ~~んと開くと ミケが見たこともない男の人が入ってきました。ミケは おどろいて リビングのテーブルの下にかくれました。おじいちゃんも おばちゃんもおどろいているようでした。
 男の人は テーブルをド~~ンたたくと
 「おやじ!さぁ。何回も電話しているだろっ! おれ もう 死ぬか生きるかなんだっ! 会社 もうダメだ! ダメなんだ。金が いるんだよ! なんとかしなくっちゃならないんだ」
 と どなりました。
 「清さん! そんなにどならないでください! だんなさんは しんぞうに ご病気を持っておられるのですよ!」
 と おばちゃんがいいました。
 「タケさんは だまっとってくれ。関係ないんや」
 「そんなこと ありませんよ。清さん。だんなさんは もうじゅうぶん清さんのこと守ってこられたのですよ」
 「とにかく この家を売って 金 作ってくれ! それでないと おれは死ななくちゃならないんだ。一人で こんな大きな家住んでもしかたないだろっ」
 「そんなこと・・・・」
 おばちゃんは いうと おじいちゃんは
 「いいんだよ。タケさん もういいんだ。僕は もう決めていたよ。清の言うようにしようと。これが 最後さ。僕は ミケがいればいい。タケさんも もうとしだ。息子さんが 言ってくれてるのだろう? いっしょに住もうと。それならば 僕は安心だ。小さなアパートで 充分さ。ミケといっしょなら」
 「そうか・・・ よかった。おれ 助かるわ。じゃぁ さっそく 手続きするからさ。よかった。よかった」
 そういうと その男の人は また 玄関の戸を バァ~~ンとさせると かえっていきました。
 おばちゃんの顔から おおつぶの涙がこぼれていました。
 こわくて ふるえていたミケは おじいちゃんにだかれたまま おじいちゃんの顔を見ました。
 おじいちゃんの顔は おだやかでした。ミケをだいている手の力が 少し強くなっていましたが。
 
 それから おじいちゃんと おばちゃんと ミケは 良く手入れされた庭を 何ども回りながら 時には足を止めながら散歩しました。
 美しい いろいろな花がたくさん咲き きぎはみどりの葉をしげらせていました。
 ミケには よく分かりませんでしたが ”おじいちゃんとおばちゃんは さみしがっているのね。悲しんでいるんだろうね。きっと”ということは 感じました。

 それから 何日かたって 
 おじいちゃんとミケは とってもせまいけど 日当たりだけはいいアパートに住んでいました。その部屋は おじいちゃんのしんしつの半分くらいの 大きさでした。でもミケは 幸せでした。おじいちゃんと いっしょにいるだけで。


                     つづく

ちょっと 童話 {幸せな 猫のミケ  その1}

2009-03-02 21:31:57 | 童話
 ミケは女の子です。生まれてすぐ 捨てられてしまいました。
 雨のふる 寒い日でした。

 公園の小さなベンチの下で 寒さでふるえていたとき 今 ミケのかいぬしの おじいちゃんに拾われたのです。
 もっとも このときには まだ ミケという名前ではありませんでしたが。
 おじいちゃんは ミケをやわらかいタオルでふくと だっこして おおきなストーブの前にすわり やさしく頭をなぜながら
 「寒かっただろう? かわいそうに。心配いらないよ。今日から この家が お前の家さ。そうだ・・・ 名前は ミケにしょう。ミケや。 安心して ここでいっしょにくらそうよ」
 ミケは ストーブのあたたかさに おじいちゃんのやさしさに 心がほこほこしました。
 「そうだ。おなかすいただろう。牛乳のむのかなぁ~~ ちょっと待ちなよ。あたためてあげよう」
 そういうと おじいちゃんは ミケをストーブの前の ふかふかソファの上の置くと その部屋から出て行きました。
 
 ミケのおなかが ぐっうぐっうなっています。ミケは ほんの少し前まで お母さんの あたたかい体にくるまれて おっぱいをのんでいたのです。
 とつぜん 
 ミケは 人間の手にもちあげられると ”どうしたのだろう?”と思うまもなく ダンボール箱につめられ気をうしなってしまいました。
 気がつくと・・・ あの 公園のベンチの下にいたわけです。

 おじいちゃんが 帰ってきました。
 「どうかな? 牛乳 飲めるかなぁ? お母さんのおっぱいの味とはちがうと思うけど・・・ さぁ 飲んでごらん。あたためてきたよ」
 そういうと おじいちゃんは 牛乳の入った赤いお皿を ミケの前に置きました。ミケは おそるおそる くんくんにおいをかいてみました。
 ”なんだろう? これは? お母さんのおっぱいのにおいと違うわ。でも・・・
ちょっと似ているみたい。こわいわ。でも おなかすいてるし。ちょっとだけ ちょっとだけ 味見してみようかしら”ミケは 思いました。

 ミケは ほんのすこしだけ舌をだして お皿のなかの牛乳をなめてみました。”ちがうわ。おっぱいとちがう。でも お腹すいてるし・・・ ちょっとおいしいかも”ミケは そう思いながら 今度は 舌をいっぱい出すと すごいいきおいで 飲み干してしまいました。

 「ほっほっほっ・・・ よかった。よかった。おいしかったかい? おなか いっぱいになったら ねようか? 私の しんしつにいこう。私と いっしょにねよう。今日から ミケは ぼくの子どもだ」
 そういうと おじいちゃんは ミケをだくと 階段をあがりました。

 おじいちゃんのしんしつは ミケが ミケのお母さんと住んでいた家くらいの大きさがありました。
 おじいちゃんのベットは まるで ひとつの部屋のような大きさでした。
 ふかふかの あたたかいベットの中で おじいちゃんに抱かれながら ミケは眠りました。

 幸せだと思いました。
 おじいちゃんのこと だいすきになりました。


                        つづく

 
 

 

ちょっと 童話 {トイプードル ぴーちゃんのぼうけん その6}

2009-02-25 20:01:55 | 童話
 「おそかったな。まちくたびれたよ」
 からすのくろが いいました。
 「ぴーちゃんが ねぼうしたのさ」
 じゅにあが いいました。
 「えっ・・・ そ そう・・・ ごめんなさい」
 ぴーちゃんは くろに すまなそうにいいました。
 「まぁ いいさ。さぁ しゅっぱつだ。ふとっちょねこと かわいいいぬとのたびだから・・・ きっと にんげんにみつかり おいかけられるよ。だから ちいさなみちを えらんでいこう。おれが みちあんないするから」
 「よし くろちゃんが そらをとぶから それをみて そのしたのみちをとおっていこう」
 と じゅにあ
 「だいひょうぶ? また まいごにならない?」
 と しんぱいそうに ぴーちゃんがいいました。
 「だいじょうぶ! だいじょうぶ。くろちゃんのあとをおいかけよう」
 じゅにあは とびあがったくろちゃんを みあげて はしりだしました。

 ぴーちゃんは じゅにあのあとを おいかけてはしります。

 そらをひくく くろがとびます。にんげんは きみわるそうに くろをみますが くろは なれているので どうともおもいません。
 そのしたを ふとっちょねこと かわいいいぬが はしっていくのをみて また おどろいて みています。
 こどもたちが おいかけていきます。
 「あぁ! そこのけーきやさんとまんしょんのあいだを ぬけて!」
 くろが そらからさけびました。
 「えぇ~~ こんなせまいとこ ぼく とおれないかも」
 じゅにあがいいながら ほそいほそいたてものあいだを なんとかとおりぬけました。
 とおりぬけると ちいさなこうえんにでました。

 「ここで ちょっときゅうけいだ」
 くろがいうと こうえんのてつぼうのてっぺんに とまりました。
 ふとったじゅにあは はぁはぁいっています。
 「うんどうぶそくだなぁ。じゅにあさん。それとも としのせいかい?」
 くろが にやにや わらいながらいいました。
 「なに へいきさ。ちょっと さいきん はしっていないから・・・なぁ」
 じゅにあは いいながら 
 「ぴーいちゃん だいじょうぶ?」
 と ぴーちゃんに きいてくれました。
 「だいじょうぶです。いろいろなみちをとおって おもしろいです」
 といいました。
 それからも ぴーちゃんとじゅにあは くろちゃんがとびながら おしえてくれるみちや ろじや たてもののあいだを とおりぬけながら はしりました。

 「よーし ついたぞ」
 くろが そらからいいました。
 そこには いつも ぴーちゃんがあいちゃんと さんぽのとちゅうによる まんなかにさくらのきがある こうえんがありました。
 「あぁ いつものこうえん。あいちゃんとくるこうえんだ。あぁ! あいちゃんだ! あいちゃん! あいちゃん!・・・」
 ぴーちゃんは さくらのきのしたで ないている あいちゃんをみつけました。
 「ぴーちゃん! ぴーちゃん! 」
 あいちゃんが はしってきました。
 そして ぴーちゃんをだきしめました。
 あいちゃんのめから おおつぶのなみだが ほおを ながれていました。
 「ぴーちゃん。どこにいってたの? しんぱいしていたんだよ。ごめんね。りーどをはなしてしまって」
 「あいちゃん あいちゃん ぼくまいごになって・・・ あの じゅにあさんとくろさんに おくってもらったんだよ」
 「えぇ? なんなの。どうやってかえっこれたの?」
 「だから・・・ あの ねこのじゅにあさんと からすのくろさんに おくってもらったの」
 「なあに? うれしいのね。よくかえってこれたのね。よかったわ」
 「だから・・・ あのねこの・・・ 」
 といいながら ぴーちゃんが さっきまでいっしょにいた じゅにあとくろをさがしましたが いなくなっていました。
 「あぁ! じゅにあさん~~。くろさん~~」
 と よびましたが じゅにあもくろも ぴーちゃんのそばに いませんでした。
 「どこに いったのですかぁ~~」
 ぴーちゃんはさけびました。
 こうえんのずっとさきのみちに そらをとぶくろと とことこはしるふとったじゅにあがみえました。
 「ありがとう。ありがとう」
 ぴーちゃんは さけびました。
 「どうしたの?ぴーちゃん おおきなこえだして。あぁ よかったわ。ぴーちゃんかえってこれて。このさくらのきにおねがいしていたの。ぴーちゃんが ぶじにかえってこれるようにね」
 ぴーちゃんは まだまだ いぬごが ときどきつうじないあいちゃんに きっとじゅにあと あのおばあちゃんのように なんでもはなせるひがくると おもいました。

 そして あいちゃんのあたたかい うでのなかで さくらのはなびらが ぱらぱらふるのをみながら ”しあわせ”と おもいました。
 そして ”たびはみちずれ よはなさけ”を おもいだしました。
 そして ”なかよく”が ”しあわせ”のもとだということも。

 そして
 ぴーちゃんは これからは みんなとなかよくしようと おもったのです。
 ”なかよく”を いっぱい このさくらのはなびらみたいに ふりまいて 
 ”しあわせ”を いっぱい このさくらのはなびらみたいに つもらせようと。


                       おしまい 
  
   

ちょっと 童話 {トイプードル ぴーちゃんのぼうけん その5 }

2009-02-23 21:06:57 | 童話
 ぴーちゃんは めをさましました。
 「あいちゃん~~ 」
 いつものようによんでみましたが・・・
 いつも とんでくるあいちゃんの あしおとがしません。

 ・・・ それで ぴーちゃんは おもいだしました。
 まいごになって じゅにあのいえにやってきて ねむったことを。

 じゅにあがやってきて
 「おぉ! めをさましたかい。よくねむれたかい? ごはんたべたら あのこうえんにいって くろちゃんといっしょに きみのいえに おくってやるからな」
 「ありがとう。よくねむったよ。はやく あいちゃんにあいたいよ」
 
 そこに おばあちゃんが きのうのよるたべて とってもおいしかった どっくふーどをもってきてくれました。
 「よくねむれたようだね。つかれていたんだね。じゅにあが きょう おうちにつれていってくれるよ。おうちのひとも きっと とってもしんぱいしてるよ」
 「はやく かえりたいの。でも このごはん すごくおいしかったんだ。これ たべてから じゅにあさんに おくってもらうの。おばあちゃん ありがとうね」
 「なんでもないよ。わたしは ねこもいぬもだいすきなんだよ。いえにかえってから また あんたのかいぬしさんと いっしょにうちにおいでよ。まっているからね」
 「ありがとうね。ぼく まいごになっちゃったけど じゅにあさんや くろさんにあって おばあちゃんに おいしいごはんもらって すごくしあわせだよ。ぼくのぼうけんになったよ。すてきな いちにちだったもん」
 「おやぁ。このどっくふーどを おいしいといってるのかい。うれしいなぁ。ぼうけんだって・・・ まいごでかなしんでいても それを ぼうけんっていうのかい? いいかんがえかただね。このぼうけんが あんたにとって これからのいきかたに きっといいことだよ」
 「おばあちゃんは ぼくのことばわかるの?」
 「はっはっはぁ~~~ わたしは じゅにあだけでないよ。きんじょのいぬたちとも いつも おはなししているから ねこごもいぬごも みぃんなわかるのさ」
 「すごいね。すごいね」
 「とにかく はやくごはんをたべて おうちにかえりね。おうちのひとも とってもしんぱいしているよ」
 「うん」
 ぴーちゃんは そういうと いきおいよく どっくふーどをたべました。

 「さぁ。でかけよう。ぴーちゃんのうちまでのぼうけん・・・ たびのはじまりだ。”たびはみちずれ よはなさけ”・・・ おれとくろちゃんとぴーちゃんのたびのはじまりだ」
 「たびはみちずれ・・・ ?」
 「”たびはみちずれ よはなさけ”っていうんだ。まぁ みんな であったひとは おたがいにたすけあい なかよくしようって ことさ」
 「ふ~~ん。なかよく・・・ 」
 「そうだな。なかよく・・・ が いちばんたいせつなことだよ」
 「そうか なかよくって だいじなんだね」
 「だいじさ。にんげんも いぬも ねこも どんなどうぶつも しょくぶつも みんななかよくしたら みんなしあわせになれるんだよ」
 「しあわせ・・・ 」
 「そうだよ。じぶんだけのしあわせをかんがえたら だめさ。みんな みんなしあわせ・・・ これが いちばんたいせつさ」
 「みちずれ・・・ なんだね」
 「そうそう そうさ。さぁ しゅっぱつだ。くろちゃんといっしょに」
 
 おばあちゃんに みおくられて ぴーちゃんとじゅにあは くろちゃんのいるこうえんにでかけました。


                      つづく