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山口童話 

山口弘信作成の童話です。

しっぽのとれないカエル

2017-07-17 01:46:31 | 童話

 平成29年6月29日 富山新聞掲載 

 

 

田んぼの すみっこで 一ぴきのカエルが一人ぼっちで ほかのカエルたちを ぼんやりと ながめています。

 よくみると そのカエルには しっぽが ついています。

 ほかのカエルたちは、ゲロゲロ グァウグァウと さわいでいるものや すいすいと およいでいるものがいます。

 今日は、この田んぼの がっこう たいこうの うんどうかいです。

 この田んぼには、カエルがっこう、ナマズがっこう、ゲンゴロウがっこう があります。 

 春の早くに、カエルたちは、カンテンのようなビロビロの たまごを うみます。

水の入っている田んぼに うみます。

そのカンテンのような たまごには、黒いゴマのような つぶが たくさん ふくまれています。

やがてそのゴマつぶは しだいに 大きくなります。そして少し大きくなった ゴマつぶに しっぽが はえてきて 水の中におよぎだして ゆきます。

おたまじゃくしに なったのです。

その おたまじゃくしたちは、しっぽをつかって 水の中を じゆうに およぎまわります。そのおよぐすがたは、ナマズのこどもと そっくりです。

およぎまわっているうちに、やがて うしろのあしが はえてきます。

ついで、まえあしが はえてきます。

あしが はえてくると しっぽが だんだん みじかくなります。

しまいには、しっぽがなくなって カエルとなるのです。

どうしたわけか 分からないのですが いっぴきのカエルのしっぽが おたまじゃくしのままなのです。

そのため カエルとして みんなの なかまに 入れてもらえないのです。

そのうえ みんなからは しっぽ、しっぽ といって バカにされています。

 そのしっぽカエルのところに、カエルがっこうの こうちょう先生が やってきました。

 「こんどの 十メートルリレーきょうそうに きみ せんしゅとして およいでほしい、およいでくれないかい」

 「ぼく、およぎたかったんです。およがせて下さい」

 カエルとナマズとゲンゴローの だいけっせんです。

 これで、きょうの ゆうしょうチームが きまります。

 しっぽカエルは さいごのせんしゅ として およぎました。

 それまで まけていたのに しっぽカエルが しっぽと足を つかって およいだことから トップで ゴールしました。

 しっぽカエルは、カエルなかまに すごいすごい といって しゅくふく されました。

 それからは だれも しっぽカエルを なかまはずれに しなく なりました。


イノシシの掘り当てた不思議の水

2017-07-17 00:03:50 | 童話

平成27年12月10日 富山新聞掲載

 

 

イノシシの掘り当てた不思議の水

 

 

ある山あいの里に、とっても親切なお爺さんとお婆さんが住んでいました。

ある晴れた日に、二人が裏山へ山菜を採りに出かけました。竹やぶの中から、クィーン・クィーンという鳴き声が聞こえました。

なんだろうと思い、そっとのぞいてみると、小さなイノシシの子供が、足から血を流してうずくまっていました。古い割れた竹に足を挟み、怪我をしたようです。

かわいそうに思った二人は、そっと子イノシシを持ち上げ、家につれて帰りました。

傷口を消毒し、ブラブラしていた足に木を添え、包帯を巻いて、哺乳ビンでミルクを与えました。はじめは、辛そうにして、ジッとしていた子イノシシも、一週間もすると、やや元気を取りもどし、添え木をしたまま、家の中を、よたよたと歩き始めました。

二週間もすると、すっかり元気になったので、包帯をはずしました。食事も二人と同じものを、食べるようになっていました。

山に行くときや、畑での仕事に行くときは、一緒に連れて行き、放していました。

しかし、子イノシシは、二人から遠くに離れることはなく、家に帰るときには、走ってきてチョコチョコとついて来るのでした。

それから、一年がたち、子イノシシは、立派な若イノシシに成長しました。

いつもと同じように、裏山に山菜をつみに行ったとき、若イノシシは、さかんに辺りに鼻をこすりつけ、匂いをかいでいるのです。 

そのうち、一箇所にねらいを定めて、前足で穴を掘りはじめました。穴はしだいに大きく、深くなってゆき、水が湧き出てきました。

「あれまー、こんなところに穴を掘って、どうしたんだい」と、二人は若イノシシに話しかけていました。「グウ・グウ・グウ」と若イノシシは、答えましたが、二人には何のことかさっぱり分かりませんでした。

その日は、若イノシシは二人を見送るように、その場に立ち止まっていました。

「イノちゃん、もう帰りますよ」と声をかけました。「おや、今日は、イノちゃんは付いてきませんね、どうしたんでしょうね」と言いながら、家に帰りました。夜遅くなっても、若イノシシは、帰ってきませんでした。

その夜、二人は同時に同じ夢を見ました。山の神様があらわれ、「イノシシを助けてくれてありがとう、そのお礼に、今日の水をあなたたちに、さしあげます。この水は、ひふに傷があれば、つけてもよいし、お腹の調子が悪ければ、飲んでもよいし、お風呂として利用すれば、全身の健康に効果があります。」というものでした。

朝になって、昨日の湧き水を見に行くと、水は静かに、湧き続けていました。

二人は、そこから自宅までその水を引き、お風呂場を作り、村の人々に開放しました。  

皮膚の病気や傷に効果のあるお風呂として評判になり、遠くの村からも多数の人々がやってくるようになりました。

この不思議な水について、最近、成分を分析したところ、消毒薬のホウ酸が含まれていることが判りました。