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山口童話 

山口弘信作成の童話です。

ヨモギ色のネコ

2021-09-23 19:49:23 | 童話

令和3年9月23日 富山新聞掲載

 

 

とやま童話      ヨモギ色のネコ 

                                                             絵と文・山口弘信(富山市)

   

                     

 

令和3年9月23日 富山新聞掲載

 

 

    ヨモギ色のネコ

 

 ネコが「ウォー、ウォー」と必死でさけんでいます。

 このネコは、まだ目も開いていないときに、通学の道ばたに すてられていたのを 児童がひろって 学校に持ち込んできたものです。

 校内放送で「めずらしい、ヨモギ色の子ネコが すてられていました。どなたか。飼ってくださる方はいませんか」と呼びかけましたが、 希望者はいません。仕方なく、持ち込んだ児童の担任が、家に連れ帰りました。

 担任の家には、小学生の男の子がいて、「ぼく この子ネコを育てるよ」と言って ブルブルふるえている子ネコを、ふところに入れ、顔だけ出して あたためていました。夜ねる時も、ふところに入れ、抱いていました。

 ウンチやおしっこは、自分の力では できないので、ティッシュをしめらせて お腹をしげきして だしました。

 やがて自分で歩けるようになると「ウンチとおしっこは、ここでするのですよ」と、ネコ砂の入ったトイレを教えると「ミャーン」と返事しました。名前はムーンです。

 半年がたち すっかり お姉さんらしくなりました。

 男の子が、学校へ行くときは げんかんまで 毎日見送りです。学校から帰ると げんかんまでお出迎えです。

 次の年、ムーンは 二日間 家を空けました。やがて ムーンのお腹がふくらみだし 赤ちゃんのいることが分かりました。

 ダンボール箱に、やわらかい布をしき 部屋のすみに置き「ムーンや、赤ちゃんは この中で産んでちょうだい」と先生が言いました。

 それから間もなく、ムーンはその中で五匹の赤ちゃんを産み、お乳をあたえていました。子ネコが少し成長し 箱から出ると、口にくわえて箱に連れもどしています。

 子ネコが よちよち歩きができるようになると 天気の良い日には五匹を連れて、外でお散歩です。

 ある日曜日のことです。ムーンと五匹の子ネコが「ウォー ウォー」と いっせいになき始めました。

 ムーンは、子ネコを空き地に連れ出しました。子ネコをそのままにして すぐに家に引き返し、男の子のズボンのすそにかみつき 出口に向かって引っ張りました。先生も空き地についてゆきました。

 その時「ゴォー」という ぶきみな音とともに 地面がゆれだし 大きな地震が来ました。

 周りの家のほとんどが、つぶれ 死者やケガ人が多数出ています。ムーンの住む家もペチャンコにつぶれました。しかし、家族にケガは ありませんでした。

 その夜 家族は ひなん所にムーンたちといっしょにいました。

「お母さん、ムーンは地震が来ることを分かっていたんだね。」

「ほんとだね、私もあんたも ムーンのおかげで命拾いしたわね。ムーンほんとうにありがとうね。」