空中庭園（2005・日）

豊田利晃監督がお薬を服用してらしたということで、公開が危ぶまれていた作品です。
原作は角田光代です。

『秘密をもたないこと』が家訓の京橋家は、食卓で母親の初エッチの話題が出てしまうようなオープンな家族。
ママの絵里子（小泉今日子）は、そのルールを守るべく常に笑顔で生活する。
ところが、家族4人は実はそれぞれ小さい秘密や嘘を抱えている。
あけっぴろげの食卓はただの学芸会でしかなかった。
家族の破綻と再生の物語が、歪んだカメラワークに写し出されます。
奥さんが小泉今日子で、不倫相手がソニンと永作博美というおいしい旦那さんは板尾創路。



絵里子は言う。
「ばれない嘘は嘘じゃないのよ」

まぁ、『秘密を持たないルール』なんて明文化されてないだけで、どの家庭にも暗黙の了解としてある。
私だっていつからか忘れたけど『ママ、私ママにいえない秘密なんかないのよ』って演技をしてるんだよね。
忘れてました。
で、そのルールに基づいて作り上げられた家庭はほんの一瞬で崩壊してしまう。
きっと、その崩壊に埋もれてたくさんのものを失うか、気付かないフリをして自然な再生を待つかの違いだけだ。



ラストシーンすごかったー。
血の雨に打たれながら、絵里子が泣き叫ぶ。
場所は、絵里子が手入れした花の咲く美しい庭園です。
他者に存在を認められ、秘密を持ち、嘘をつき、嘘をつかれ、裏切りを許し、やり直す。
母親の血に塗れる赤ちゃんを彷彿とさせるラスト。
そこが意味するところは家族の再生というか、蘇生、というニュアンスのほうが近い。
「おかえり」は救いですね。


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