TOMOKOのカフェテラス

TOMOKOのカフェテラスへようこそ。お好きな本を読みながら、音楽を聴きながら、素敵な時間をお過ごし下さい。

山月記

2016-06-25 23:39:17 | books
 一人の青年が、虎に変身していまうお話です。何故、虎になんで?そんな彼が、草むらの中かで、古い友人に出あってしまいます。

 虎はいいます。「臆病な自尊心と尊大な羞恥心」のせいだと。また、こうも言います「人間は誰でも猛獣使いである」と。初めてこの本読んだ時、そのようなことは、考えもしませんでした。でも今になって振り返ってみると「何故あんなことことをしてしまったの?」とか、「もう少しよく考えていたら・・」なんて言うことが、多々あったような気がします。そう、心なかの「猛獣」が、暴れだしていたのかもしれません。

 その「猛獣」を抑えられなかったばかりに、虎の姿に身を落としてしまったのだと。ひょとして、こんなTOMOKOでも、人を襲ってしまう虎のように、人を傷つけてしまったことがあったかもしれません。いえ、自分自身も傷つけ、心をもむしばんできてしまったのかもしれません。でも、それは、今になって振り返ってみればわかること。人は誰も、「猛獣使い」なのです。

 
 この作品を初めて読んだのは、中学の時の教科書でだったと思います。ぜ昔のことです。あの時の思いと、いま読み返した時の感想では、ずいぶんと違った思いを抱いているのに違いありません。「猛獣」を上手に使いこなせてきたでしょうか。

 作者は、中島敦。33歳の若さで亡くなりましたが、漢文の素養にあふれ、丁寧な日本語の気品のある文章です。カフェテラスで、ゆったりと読まれるのもいいですが(それでも、読み終えるには10分とはかかりません)、是非、言葉に出して読んでいただきたい作品です。

ボッコちゃんー星 新一

2008-02-16 16:26:25 | books
 みなさま、お寒い中いかがお過ごしでしょうか。この季節、こたつに入って、テーブルにはミカンとポテトチップス、TVをつけて、どのDVDを見ようかと、思いをめぐらせては、いらっしゃいませんか。そんなとき、健康的に本でも、お読みになってみては、いかがですか。ちょっと気軽に読めるショート・ショートなんかいかがですか。

 今日の読書案内は、星新一のショート・ショート集です。「ボッコちゃん」「ようこそ地球さん」「妖精配給会社」の三本です。(あら、サザエさんみたい)

 ショート・ショートとは、せいぜい5ページていどの作品の中に、ユーモア・風刺などをおりこんで、あとでにやりとさせたり、納得させられたりと、粋でおしゃれな気分にさせられます。

 たとえば、ある星に着いた地球人の訪問団が、歓迎を受け、地球での愛情表現、つまりキスを、その星の人に教えますが、キスはその星の人にとって・・・(「ボッコちゃん」のなかの「親善キッス」)

 みなさま、お外に出られないこの時期、おうちの中で「好奇心の旅」をしてみましょう。

文車日記

2007-11-27 21:09:23 | books
 白いセーターをきて、飛行機に乗りたいなぁ、などとTOMOKOが思ったばかりに、すこし昔に読んだ本を思い返しました。

 「文車日記ー私の古典散歩」 田辺聖子

 これは、作家 田辺聖子が、いろいろな日本の古典のエッセンスを彼女なりの視点で綴った、文字通りの、古典散歩です。

 この中に「ヤマトタケルノミコト」のお話が出てきます。ヤマトタケルノミコトは、古代の伝説上の英雄です。
 父の景行天皇の命令をうけ多くの賊たちを討伐します。しかし最後には大和の都にかえる途中に、力尽きてしまいます。

 倭は国のまほろば たたなづく青垣 やまごもれる 倭しうるはし

 ヤマトは、美しい山々に囲まれた美しい国、愛する母なる国

 と、詠んで、命尽きます。その魂は、白い鳥になって飛んでいきます。

 TOMOKOは、白いセーターをきていましたが、ヤマトタケルノミコトのように純粋な心は、なかなかに持ち合わせてはいないようです。でも、素敵な英雄に、あこがれる乙女心は、持ち合わせているようです。

 誰か、TOMOKOを、大空に連れてって!

夢十夜ー夏目漱石

2007-09-02 11:20:21 | books
 残暑も、ようやくおさまり、TOMOKOのカフェテラスにも、夜になると、涼しいさわやかな風とともに、秋の虫の声が、聞こえるようになりました。さきほど、部活のかえりでしょうか、それとも、補習授業の帰りでしょうか、セーラー服に、ポニーテールに髪を結んだ、お嬢様が、お越しになりました。真剣なまなざしで、文庫本を、お読みでした。もう、読書の秋でしすかね。

 久しぶりに本の紹介です。「夢十夜」-夏目漱石 です。
 皆様は夢を、よくご覧になりますか。この小説は「こんな夢を見た」で始まる、十夜の物語です。夢の中で、時間旅行を繰り返します。不思議な女性に出会ったり、鎌倉時代の仏師にであったりしますが、漱石は、驚くほど冷静に淡々とかたります。夢の中の傍観者であるように。夢の中の人たちの、かげろうのようなはかなさ、それなのに、しっかりとした存在感は、どうしたことでしょう。漱石の不思議な世界を、絵画や映画のように、お楽しみください。

 先ほどお嬢様、ミルクティと、チーズケーキのオーダーでした。紅茶が、似合う季節になりましたね。白色のソックスと、茶色のローファがとてもお似合いです。ゆっくりとおくつろぎください。そして、帰り道は、お気をつけてね。

生まれ出づる悩みー有島武郎ーつづき

2007-07-15 17:11:41 | books
 TOMOKOが、この本を最初に読んでずいぶんになります。

 生活のため、自分の才能をいかせず、自殺まで考える青年。しかし、思いとどまり前向きに生きていこうと、歩き出す青年。いろいろな、悩みを持ちながら、人間って成長するんだと、楽天的といおうか、理想主義的といおうか、まだまだ青い少年でした。

 今読み返してみると、世の中を、すねてみている自分に、きがつきます。もっと青年のように、真正面から、向き合う力が欲しいと、これまた、理想主義的な、考えにもとらわれます。この「青年」のちに画家として大成しますが、(TOMOKOのカフェテラスに絵がかざってあります)作者「私」は、自殺してしまいのは、運命の皮肉であると、言わざるを得ませんね。

 あら、大学生と思しき青年が、彼の絵の前に立っています。ゆっくりと、鑑賞していってくださいね。

生まれ出づる悩みー有島武郎

2007-07-14 09:35:27 | books
 TOMOKOのカフェテラスには、海の絵が飾ってあります。力強い、北海道の海の絵。作者は、木田金次郎。北海道越志管内岩内の海を描いた物です。(ひょとすると、近くにラベンダー園もあるかもしれません。)この、木田金次郎をモデルにした小説が、「生まれ出づる悩み」(有島武郎)です。

 日本がまだまだ貧しかった頃(今が豊とは、いえませんが)、北海道岩内に生まれた青年。彼は絵が好きで、才能に自負と不安と青年らしい矜持とを、持っていました。しかし、生活の為、画業を志すこともできず、生きることに精一杯の生活ー自分の運命ーを受けいざるを得ませんでした。青年は、自ら命を絶とうとします。しかし、ふるさと自然が、思いどどめます。どうにもならない運命ー生まれ出づる悩みーに負けないでほしい。
 「君よ、春が来るのだ。冬の後には、春が来るのだ。君の上にも確かに、正しく、力強く、永久の春が微笑めよかし・・・僕はただそう心から祈る」

 いささか、理想主義的な、終わり方ですが、現実に、人生に悩み、苦しみ、孤独と絶望の中にあると、明日さえあるように思えないときが、あります。そのとき、うぶな少年のようにこの言葉を、思い出してみては、いかがでしょうか「きっと、春がくるのだ」

 「青年」の絵は、TOMOKOのカフェテラスで、語りかけてくれます。運命に負けるなと。

二十歳の原点ーつづき

2007-05-25 20:42:29 | books
 TOMOKOのカフェレラスで本を読んでいた、お嬢さんは、読むのにちょっと疲れたように、テラスの上を流れる雲を見ています。

 さて、高野悦子さんは、京都の大学にあこがれ、そして、京都で学生時代を過ごすことになります。たぶん自分の将来について、何の不安も無かったはずです。しかし、世の中は、思っていたものとは、違う。人間は、孤独なんだ。と、感じはじめました。それが、自分今、原点なのだと。

 TOMOKOも京都にあこがれ、運良く京都で学生時代をすごすことができました。(自慢に聞こえたらごめんなさい)京都は、不思議なまちです。学生だらけの街なのに(主人公ーさだまさしーの舞台は、京都であると信じています。)学生に孤独を強いる街です。その孤独の中から、勉学なり、人生経験を、あじわいます。

 田舎からでてきた、TOMOKOは、学生運動の張り紙に驚きました。三里塚?プロレタリアート?シロヘルメットにゲバ棒の学生をみたときは、本当に驚きました。でも彼女の時代と違い、TOMOKOの時代の学生は、いやになるほどノンポリでした。

 大学をでて、2年ほどしたある日、友人にあいました。彼いわく「社会に出て、なんだか、だんだん人間が、小さくなっていくわぁ」そう、TOMOKOたちは、彼女ー高野悦子さんよりだいぶおくれて、原点に気づき始めたのでした。

 カフェテラスの彼女は、風に長い髪をとかせて、おおきく深呼吸をしました。もうそろそろ、つゆがきます。彼女は、なにかを思い切ったように、あるきだしました。

二十歳の原点ー高野悦子

2007-05-24 23:13:21 | books
 カフェテラスの片隅で、本を読んでいるお嬢さん。ゆっくり、くつろいでいってくださいね。
 「シアンクレール」という、喫茶店をご存知ですか。今日のお話は、「シアンクレール」で本を読んで、JAZZを聞いていた女の子のお話。彼女の名前は、高野悦子。大学生です。純粋で、無垢な精神の女の子でした。その純真さゆえに、傷つき、悩み、最後は、思わぬ悲劇に。
 
 「独りであること、未熟であること、これが私の二十歳の原点である」

 TOMOKOも学生時代、彼女と同じ町に住み、「シアンクレール」にも、いきました。その当時は、学生運動もすっかり下火になり、TOMOKOもすっかりノンポリでした。それでも、彼女の純粋さは、あこがれでした。

 もう三十年以上が、過ぎましたが、いまでも二十歳を過ぎるころの、お嬢さんの心を離さない1冊だとおもいます。二十歳のころ、何をしていましたか。TOMOKOは、彼女以上に未熟であったことは、確かそうです。