あ可よろし

「あきらかによきこと」は自分で見つける・おもしろがる
好奇心全開日記(不定期)

本もの

2021-05-16 | 本(文庫本)
湊かなえさんの『豆の上で眠る』を読みました。
これまでにも湊さんの作品は読んではいましたが、単に「読んだ」という印象でした。でも本作は違いました。

結衣子が小1の夏、2歳上の姉・万佑子が失踪した。「神隠しにあった」などと噂もされたが、2年後、万佑子は突然帰ってくる。しかしその少女が「万佑子」であるかどうか疑わしく思う結衣子。その違和感は大学生になった今でも続いている。果たしてあれから万佑子として一緒に生活してきた少女は本当の姉なのか? 久しぶりに帰省した夜、結衣子が知ることになるのは……。

冒頭は帰省する大学生になった結衣子から始まります。新幹線が故郷に近づくにつれ、幼いころの記憶がよみがえります。万佑子が読み聞かせてくれたアンデルセン童話『えんどうまめの上にねたおひめさま』。
この童話の重要なワードが「本当のお姫様」。王子は本物を探して世界中を旅します。
タイトルになるくらいだから、この童話が間違いなく真相に関わっていることは想像できました。しかしそんな程度のことでは終わりませんでした。
ストーリーは失踪する前の万佑子との生活、万佑子がいなくなってからの、人格破綻してしまった母との2年間、そして万佑子が帰ってきてから感じている違和感とつながり、冒頭の帰省のシーンになります。

ラストは「さすがにありえないでしょう」と感じたりしましたが、それよりも私の目の前に突き付けられたのは「本もの」という言葉でした。
「本もの」って何なんでしょう? 王子様が見つけたのは本もののお姫様だった? 結衣子が信じている「本ものの万佑子」って誰? 自分だけが蚊帳の外に置かれても「本ものの家族」?
万佑子がいなくなった真相よりも、こっちのほうが気になって、読後しばらく「本もの」について考えさせられました。ちょっと心がゾワッとした。
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