荻原浩さんの『海馬の尻尾』を読みました。
及川頼也。アルコール中毒で反社会性パーソナリティ障害という恐怖や共感の感情、良心が欠落したやくざ。良心がないのはこれまで生きてきた環境のせいなのか脳の障害なのか。アル中治療の名目で通院した病院で、ウィリアムズ症候群の少女・梨帆と出会う。及川のような男にも屈託のない笑顔を見せる梨帆。やがて本格的な治療のため、とある施設に入所するのだが……。
まず驚いたのは、荻原さんってこういう表現もできる人なんだということ。チョイチョイ荻原さんらしいユーモアも出てくるんだけど、基本はバイオレンス。暴力シーンの描写など、これまで「読後絶対に幸せな気持ちにしてくれる」と信じて疑わない作家さんのものだとは信じられないくらいでした。
そういう作風なのだけど決して読みにくさはなくて、テンポよく展開するストーリーにぐいぐい引き込まれ、長編なのに最後まですんなり読ませてくれました。やっぱり萩原さんの作品は長編が良い!
この作品の舞台となっているのは「二度目の原発事故から2年たった日本」。どこでその事故が起きたのかは明記されていないし、何が原因の事故だったのかも不明です。日本だけどパラレルワールドな世界を描いたものだと納得できます。
このパラレルワールド的な日本と及川や梨帆が入所する施設、さらには良心が欠落した及川の言動や行動が違和感なく出てくる。計算されつくしたように感じます。
しかし及川の暴力や犯罪行為は、始めは身勝手なものだったのが、徐々に誰かを守るためのものに変化していきます。治療の成果であろうけれど、梨帆との関わり合いで人としての感情を取り戻した及川が結果どうなっていくのか、今度はこちらの想像力を試される、そんな気持ちの良い作品でした。
及川頼也。アルコール中毒で反社会性パーソナリティ障害という恐怖や共感の感情、良心が欠落したやくざ。良心がないのはこれまで生きてきた環境のせいなのか脳の障害なのか。アル中治療の名目で通院した病院で、ウィリアムズ症候群の少女・梨帆と出会う。及川のような男にも屈託のない笑顔を見せる梨帆。やがて本格的な治療のため、とある施設に入所するのだが……。
まず驚いたのは、荻原さんってこういう表現もできる人なんだということ。チョイチョイ荻原さんらしいユーモアも出てくるんだけど、基本はバイオレンス。暴力シーンの描写など、これまで「読後絶対に幸せな気持ちにしてくれる」と信じて疑わない作家さんのものだとは信じられないくらいでした。
そういう作風なのだけど決して読みにくさはなくて、テンポよく展開するストーリーにぐいぐい引き込まれ、長編なのに最後まですんなり読ませてくれました。やっぱり萩原さんの作品は長編が良い!
この作品の舞台となっているのは「二度目の原発事故から2年たった日本」。どこでその事故が起きたのかは明記されていないし、何が原因の事故だったのかも不明です。日本だけどパラレルワールドな世界を描いたものだと納得できます。
このパラレルワールド的な日本と及川や梨帆が入所する施設、さらには良心が欠落した及川の言動や行動が違和感なく出てくる。計算されつくしたように感じます。
しかし及川の暴力や犯罪行為は、始めは身勝手なものだったのが、徐々に誰かを守るためのものに変化していきます。治療の成果であろうけれど、梨帆との関わり合いで人としての感情を取り戻した及川が結果どうなっていくのか、今度はこちらの想像力を試される、そんな気持ちの良い作品でした。