とうとうこの日が来てしまった。3月1日。日本で最もリアルをかき鳴らしてきた(と個人的に思ってる)ロックバンド、Syrup16gの終焉の日が……。僕は『HF』の執筆をほっぽり出して行きましたよ、武道館。人生初です。初が大好きなバンドの解散なんて(涙)。ついでに言うと、シロップライブも今回が初めてだったり。行こう行こうと思って機会がなかったのですが、これを逃したらもう後はない、と先行予約に応募したら、運良く当選してぎりぎりで彼らを生で見ることが出来たという次第。
で、京都から新幹線に乗って、ホテルにチェックインして(ついでに地元サッカーチーム・サンフレッチェ広島のタイトル奪取も見て)武道館に辿り着いたのが4時過ぎ。九段下の駅にはライブ目当てで来たと思しき若人の群れ。そして、グッズを求める長蛇の列。Syrupってこんなに人気あったんだね(爆)、と再認識しながら、会場に入った俺。
会場のSEはもう廃盤となってるmini album『free through』のtr.1「翌日」からアルバム発売順に流れてきたSyrupの曲の数々。まるで彼らの歴史をもう一度追っているかのようだった。そうそう、「土曜日」の♪土曜日なんて来るわけない~の唄い出しが流れた瞬間、妙に感慨深かったのを覚えている。奇しくもこの日は土曜日。ファンにとって来て欲しくなかったこの日がやって来たのだから。
――そして、5時半過ぎ、開演。
記念すべき一曲目は何と『delaydead』から「きこえるかい」。かなり意外だったけど、「最後の歌声、演奏、みんなきこえるかい?」と呼びかけてるようで、ドラムの激しさと相まって何か胸に来るものがあった。――そう、ドラムだ。初めてシロップのライブを目の前で見て、凄いと感じたのは中畑大樹のドラムだった。続く「無効の日」「生活」「神のカルマ」……。彼の激しいドラムのビートと五十嵐の叫びが共鳴し、キタダマキのメロディアスなベースと絡み合って心の奥底まで響き渡る。
――やっぱり、五十嵐に加えて中畑がいてはじめてSyrupなんだなと、感じた。五十嵐が「ホントはやめたくない」と言いながら解散を決意した理由がやっと納得できた。
今回のセットリストは、バンドの総決算を意識したのか、新譜『syrup16g』からの曲は本編では「途中の行方」のみで、全ての年代から満遍なく揃えたと思われるいわばベスト版的な内容だった。「さくら」や「ニセモノ」などはアンコールでバッチリ演奏してたが。ネットで確認すると、五十嵐が一人で弾き語ってた「センチメンタル」「明日を落としても」(これらもバンドで聴きたかったけど)を含め全33曲。……すげえ、あんたらすげえよ。まさに完全燃焼。アンコール3発目(!!)のとき、五十嵐が中畑におんぶされて登場するパフォーマンスを見せたのも頷けるぜ。
やはり圧巻だったのが「ライブは凄い」と噂されてた本編最終曲の「リアル」。終わりに五十嵐が「妄想リアル もっと SO REAL!!」と絶叫するところにはマジで痺れた。これがもう聴けないのはかなり寂しいものがある。あと、アンコール一発目の新曲群の中でも気になったのは「scene through」。アルバムで聴いたときはあまり好みではなかったけど、ライブでフルに表現された疾走感とキラキラした切なさが響いて一気に好きになった。それと、突如演奏された未発表の新曲。この期に及んで新曲なんか出すんじゃねぇ(笑)。「イマジネーション」(アルバムバージョン)と同じく別れを意識した内容となってたが、これもまた良かった。できれば、アルバムに収録されなかった「第2期」の曲と一緒にもう一枚出して欲しいくらいだけど……無理なんだろうな。
そして、三度のアンコールを受け登場した五十嵐は、全ての終わりを悟ったのかここまで殆どしなかったMCを始める(以下、かなりうろ覚え)
「もう明日は来ないねぇ……。明日のために書いた曲たくさん残してきたから、気が向いたら聴いてやってください。この曲も明日について歌った曲です」
――そう言って奏でたのは「翌日」。♪喧騒も 待ちぼうけの日々も 後ろ側でそっと 見守っている 明日に変わる意味を……と歌うところではさすがに泣く手前だった。実際色んなところからすすり泣くような声が聞こえてたし。……大学生のときからファンになって5年程。一つの青春がここで終わりを告げたような気がした。まさに「さくら」の♪これはこれで青春映画だったよ 俺たちの という歌詞のように――
今日の一曲:Reborn/Syrup16g(3rd Album『delayed』収録)
昨日より今日が
素晴らしい日なんて
わかってる そんな事
当り前の事さ
時間は流れて
僕らは歳をとり
汚れて傷ついて
生まれ変わっていくのさ
ライブの最後に演奏された曲にして、僕がSyrupを好きになった名曲。ミスチルの桜井が某雑誌で絶賛してたくらい、万人にも受け入れられる感動作だったと思う。もし、シングルなり何なりで売り出されて、もっとプロモーションされたら、彼らのキャリアももっと違ったものになったのだろう。でも、そうならなくても良かったのではなかろうか。彼らは己を最後まで貫き通し、そして激闘の末敢え無く散った。売れることが至上とされる日本の音楽界の中で、彼らほど「リアル」なバンドはなかった。だからこそ、売れずとも人の心を揺さぶる名曲が生まれたのだろう。「ニセモノ」の演奏後「あんたは本物だったよ!」と誰かが叫んでたが、その通りだと思う。
こんなバンドが生き続けられない現在のシーンに軽く絶望を覚えるが、五十嵐が言ったように、彼らの軌跡はCDの中で生き続ける。とっても寂しいことだけど、僕は子や孫に(出来るかどうか分からんが)こんな素晴らしいバンドがこの世界にいたと伝えていきたい、と思っている。
さて、今後中畑はVOLAでキャリアを続けていくが、五十嵐はどうすんだろ?この曲の歌詞のように、時が流れて、生まれ変わった五十嵐が再びシーンに戻ってくることを願いつつ、Syrup16gを祭る文を終えたいと思う。最後に
Syrup16gと彼らの生み出した曲たちに、心からの「ありがとう」を
Tomでした。『HF』のコメント返信は、ライナーノーツの次回更新時にでも。
で、京都から新幹線に乗って、ホテルにチェックインして(ついでに地元サッカーチーム・サンフレッチェ広島のタイトル奪取も見て)武道館に辿り着いたのが4時過ぎ。九段下の駅にはライブ目当てで来たと思しき若人の群れ。そして、グッズを求める長蛇の列。Syrupってこんなに人気あったんだね(爆)、と再認識しながら、会場に入った俺。
会場のSEはもう廃盤となってるmini album『free through』のtr.1「翌日」からアルバム発売順に流れてきたSyrupの曲の数々。まるで彼らの歴史をもう一度追っているかのようだった。そうそう、「土曜日」の♪土曜日なんて来るわけない~の唄い出しが流れた瞬間、妙に感慨深かったのを覚えている。奇しくもこの日は土曜日。ファンにとって来て欲しくなかったこの日がやって来たのだから。
――そして、5時半過ぎ、開演。
記念すべき一曲目は何と『delaydead』から「きこえるかい」。かなり意外だったけど、「最後の歌声、演奏、みんなきこえるかい?」と呼びかけてるようで、ドラムの激しさと相まって何か胸に来るものがあった。――そう、ドラムだ。初めてシロップのライブを目の前で見て、凄いと感じたのは中畑大樹のドラムだった。続く「無効の日」「生活」「神のカルマ」……。彼の激しいドラムのビートと五十嵐の叫びが共鳴し、キタダマキのメロディアスなベースと絡み合って心の奥底まで響き渡る。
――やっぱり、五十嵐に加えて中畑がいてはじめてSyrupなんだなと、感じた。五十嵐が「ホントはやめたくない」と言いながら解散を決意した理由がやっと納得できた。
今回のセットリストは、バンドの総決算を意識したのか、新譜『syrup16g』からの曲は本編では「途中の行方」のみで、全ての年代から満遍なく揃えたと思われるいわばベスト版的な内容だった。「さくら」や「ニセモノ」などはアンコールでバッチリ演奏してたが。ネットで確認すると、五十嵐が一人で弾き語ってた「センチメンタル」「明日を落としても」(これらもバンドで聴きたかったけど)を含め全33曲。……すげえ、あんたらすげえよ。まさに完全燃焼。アンコール3発目(!!)のとき、五十嵐が中畑におんぶされて登場するパフォーマンスを見せたのも頷けるぜ。
やはり圧巻だったのが「ライブは凄い」と噂されてた本編最終曲の「リアル」。終わりに五十嵐が「妄想リアル もっと SO REAL!!」と絶叫するところにはマジで痺れた。これがもう聴けないのはかなり寂しいものがある。あと、アンコール一発目の新曲群の中でも気になったのは「scene through」。アルバムで聴いたときはあまり好みではなかったけど、ライブでフルに表現された疾走感とキラキラした切なさが響いて一気に好きになった。それと、突如演奏された未発表の新曲。この期に及んで新曲なんか出すんじゃねぇ(笑)。「イマジネーション」(アルバムバージョン)と同じく別れを意識した内容となってたが、これもまた良かった。できれば、アルバムに収録されなかった「第2期」の曲と一緒にもう一枚出して欲しいくらいだけど……無理なんだろうな。
そして、三度のアンコールを受け登場した五十嵐は、全ての終わりを悟ったのかここまで殆どしなかったMCを始める(以下、かなりうろ覚え)
「もう明日は来ないねぇ……。明日のために書いた曲たくさん残してきたから、気が向いたら聴いてやってください。この曲も明日について歌った曲です」
――そう言って奏でたのは「翌日」。♪喧騒も 待ちぼうけの日々も 後ろ側でそっと 見守っている 明日に変わる意味を……と歌うところではさすがに泣く手前だった。実際色んなところからすすり泣くような声が聞こえてたし。……大学生のときからファンになって5年程。一つの青春がここで終わりを告げたような気がした。まさに「さくら」の♪これはこれで青春映画だったよ 俺たちの という歌詞のように――
今日の一曲:Reborn/Syrup16g(3rd Album『delayed』収録)
昨日より今日が
素晴らしい日なんて
わかってる そんな事
当り前の事さ
時間は流れて
僕らは歳をとり
汚れて傷ついて
生まれ変わっていくのさ
ライブの最後に演奏された曲にして、僕がSyrupを好きになった名曲。ミスチルの桜井が某雑誌で絶賛してたくらい、万人にも受け入れられる感動作だったと思う。もし、シングルなり何なりで売り出されて、もっとプロモーションされたら、彼らのキャリアももっと違ったものになったのだろう。でも、そうならなくても良かったのではなかろうか。彼らは己を最後まで貫き通し、そして激闘の末敢え無く散った。売れることが至上とされる日本の音楽界の中で、彼らほど「リアル」なバンドはなかった。だからこそ、売れずとも人の心を揺さぶる名曲が生まれたのだろう。「ニセモノ」の演奏後「あんたは本物だったよ!」と誰かが叫んでたが、その通りだと思う。
こんなバンドが生き続けられない現在のシーンに軽く絶望を覚えるが、五十嵐が言ったように、彼らの軌跡はCDの中で生き続ける。とっても寂しいことだけど、僕は子や孫に(出来るかどうか分からんが)こんな素晴らしいバンドがこの世界にいたと伝えていきたい、と思っている。
さて、今後中畑はVOLAでキャリアを続けていくが、五十嵐はどうすんだろ?この曲の歌詞のように、時が流れて、生まれ変わった五十嵐が再びシーンに戻ってくることを願いつつ、Syrup16gを祭る文を終えたいと思う。最後に
Syrup16gと彼らの生み出した曲たちに、心からの「ありがとう」を
Tomでした。『HF』のコメント返信は、ライナーノーツの次回更新時にでも。