ハラスメント・いじめ問題を考えましょう

カスハラの実態と「カスハラ防止法」の提案

1 厚労省ハラスメント実態調査(2021年3月)

(1)厚労省「職場のハラスメント実態調査」

    厚労省は、2020年10月、「職場のハラスメント実態調査」(委託調査)を実施し、2021年3月にその結果を発表しました。

(2)厚労省「カスハラ実態調査」

 その中で、カスタマーハラスメント(カスハラ)についての調査を実施しています。

 この調査においてカスハラとは、「顧客や取引先からの暴力や悪質なクレーム等の著しい迷惑行為」をいいます。

 調査対象は、企業・団体6426件(企業調査)と、労働者8000名(正社員5400名・正社員以外2600名)(労働者調査)でした。

 

2 厚労省カスハラ実態調査のポイント

(1)カスハラ被害はほぼ全企業が経験し、件数は増加傾向にある

 過去3年間でカスハラ被害があったという企業92.7%で、ほぼ全企業が経験しています。また件数が増加あるいは変わらないという企業は43.9%となっており、件数は増加傾向にあります。

(2)カスハラ被害について半分以上の企業は特に取り組みをしていない

 カスハラ被害についての取組としては、相談体制の整備(27.5%)、被害者への配慮措置(22.1%)、マニュアルや研修(7.1%)があるだけで、特に取り組みをしていない企業57.3%もあります。

(3)カスハラ被害を経験した労働者は15%

 過去3年間にカスハラ被害を経験した労働者15.0%となっており、そのうち何度も繰り返し経験した労働者は2.1%います。

(4)被害内容としては長時間の拘束や名誉毀損・侮辱・暴言が多い

 被害内容としては、「長時間の拘束や同じ内容を繰り返すクレーム(過度なもの)」(52.0%)の割合が最も高く、「名誉毀損・侮辱・ひどい暴言」(46.9%)、「著しく不当な要求(金品の要求、土下座の強要等)」(24.9%)などの回答の割合が高くなっています。

(5)被害対応として「謝り続けた」が3分の1もある

 被害を受けた時の対応としては、「毅然と対応した」(32.6%)もありますが、対応が困難な場合には、「上司に引き継いだ」(36.6%)という回答が多いのですが、不当な要求に対し、「謝り続けた」(32.3%)が3分の1もあり、「何もできなかった」(20.8%)と同様に、カスハラによって心身に大きな影響が生じていることがわかります。

(6)被害を受けても「何もしなかった」が4分の1もある

 被害を受けたあとは、「社内の上司に相談した」(48.4%)が多いのは当然かと思いますが、その次に、「何もしなかった」(24.3%)も少なくありません

 

3 調査結果と立法の提案

(1)調査結果から

 調査結果によって、カスタマーハラスメントの被害実態がきわめて深刻であることが明らかになりました。パワハラ防止法が制定されるときに、顧客や取引先からのハラスメント(カスハラ)についても事業主に防止義務を課すべきだと強く主張されましたが、指針でふれられただけで立法化はされませんでした。

 しかし、15%もの労働者がカスハラ被害を経験しながら、半分以上の企業は何も取り組みをしていないという現状からすると、このことを変えていくためにはやはり立法化しかないでしょう。

(2)「カスハラ防止法」の提案

 これ以上、カスハラ被害が深刻化、拡大化しないために、以下の内容を規定した「カスタマーハラスメント防止法」を早急に制定することを提案したいと思います。

 ①事業主にカスタマーハラスメント相談窓口の設置を義務付ける。

 ②事業主にカスタマーハラスメントの防止対応体制の構築を義務付ける。

 ③事業主がハラスメントをした顧客や取引先等の所属する事業主に対して

  調査と対応を求めることができることとし、当該事業主はそれに応じ

  ことを義務付ける。


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