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ハラスメント・いじめ問題を考えましょう

就活セクハラの実態と「就活ハラスメント防止法」の提案

1 厚労省就活セクハラ実態調査(2021年3月)

(1)厚労省「職場のハラスメント実態調査」

 厚労省は、2020年10月、「職場のハラスメント実態調査」(委託調査)を実施し、2021年3月にその結果を発表しました。

(2)厚労省「就活セクハラ実態調査」

 その中で、特別調査として、「就活セクハラ実態調査」を実施しています。

 調査対象は、就活・インターンシップ経験者1000名(大学622名・大学院92名・短大57名・専門学校229名)(男性476名・女性524名)です。

 この調査結果は新聞でも報道されましたが、非常に衝撃的なものです。そのポイントをまとめ、立法提案もしたいと思います。

 

2 「就活セクハラ実態調査」衝撃の結果から

(1)学生の「4人に1人」は就活セクハラ被害を受けている

 この調査対象には、専門学校卒業生も含まれていますが、最近の大卒者が概ね60万人ですから、この割合でいくと、15万人もの就活生がセクハラを受けている可能性があるということになります。

 この厚労省調査での一般企業でのセクハラ被害率は、10.2%、つまり10人に1人でしたので、それよりはるかに多くの割合で被害者がいるということです。

 一般企業では男女雇用機会均等法でセクハラが禁止され処罰規定もあります。しかし就活セクハラはそれよりも被害率が高いのに保護立法は何もないのです。

(2)被害の割合が高いのは「男子学生」「大学院生」である

 就活セクハラの被害割合の高いのは女子学生だというのがおそらく一般的な理解でしょう。しかし調査では男子学生(26.1%)の方が、女子学生(25%)より高い割合で被害を受けています

 調査では男子学生に対してのセクハラとしては、「性的な事実関係に関する質問」が最も多くなっていますので、就活関係者が軽はずみに男子学生に性的なことを聞くなどして不快感を与えていると思われます。

 また大学生と大学院生を比べると、大学院生の方が被害を受けた割合が高くなっていることも一般の理解とは異なるのではないでしょうか。

 これらの調査結果については、これからの就活セクハラ防止対策において十分に留意すべきことです。

(3)就活セクハラは「インターンシップの時」が最も多い

 就活セクハラは、これも一般のイメージとしては、面接のときとか、OB/OG訪問のときが多いという印象があると思いますが、調査結果では、「インターンシップの時」が34.1%で最も多くなっています。また次に多いのは、「企業説明会やセミナーに参加したとき」(27.8%)で、「採用面接のとき」(19.2%)はその次でした。

 インターンシップでは参加先の企業の社員と終日接する機会が多く、その際に社員が不当な発言をすることが多いのではないでしょうか。就活生にとってインターンシップは就活として非常に重要なものですので、セクハラに対して拒絶・拒否をすることができないことは容易に想像がつきます。

(4)セクハラ被害の内容には「食事やデートへの勧誘」や「性的な関係の強要」が少なくない

 就活セクハラの被害内容としては、「性的な冗談やからかい」(40.4%)、「食事やデートへの執拗な誘い」(27.5%)のほか、「不必要な身体の接触」(16.1%)、「性的な関係の強要」(9.4%)となっています。このような深刻な被害が多く生じていることを企業は真剣に受け止めなければなりません。

(5)セクハラを受けて「学校を休んだ」「通院・入院した」という被害が多い

 就活セクハラを受けての被害としては、「怒りや不満、不安などを感じた」(44.7%)が多いのは当然のことですが、「眠れなくなった」(18.4%)、「学校を休んだ」(14.5%)だけでなく、「通院したり服薬をした」(11.8%)、さらには「入院した」(3.9%)という深刻な被害までが生じています。

 学生にとって就活という不安と緊張の中でのセクハラ被害は心身に大きな影響を与えます。このような深刻な被害が生じることについても十分な認識が必要です。

(6)被害後の行動として「何もしなかった」が最も多い

 就活セクハラを受けての行動として最も多いのは、「何もしなかった」(24.7%)です。その理由は「何をしても解決にならないと思ったから」(47.6%)が最も多いという結果が出ています。このような泣き寝入りしかないという結果は回避しなければなりません。

 相談先としては、「大学のキャリアセンター」(19.2%)、「学生相談窓口等」(18.0%)が多いのですが、割合として決して多くありません。被害学生にとって、大学がセクハラに毅然とした対応をしてくれることを期待できるのであれば、もっと割合が多くなるはずです。

 また、「相談先がなかった」「相談先がわからなかった」という回答が多くあることも大学等の教育機関としての対策の遅れを示しています。

 なお「企業の採用担当者に相談した」(6.7%)が非常に少ないのは、その企業が公正に扱ってくれるかどうかに疑問を持つからであり、ある意味では当然でしょう。

 

3 今後の対策

(1)調査結果から

 この厚労省の就活セクハラの実態調査によって、就活セクハラが一般に考えられている以上に被害者が多く、また被害内容、被害の影響も極めて深刻であることが浮き彫りになりました。また大学などが学生に対して十分な相談体制と対応体制が取れていないことも明らかになっています。

 パワハラ防止法が制定されるときに就活ハラスメントに対する事業主の防止対応体制を法律に規定することが強く主張されましたが、法律に合わせて策定された指針で触れられただけで立法化はされませんでした

 なお、今回の調査ではなぜか就活パワハラ被害の調査がされませんでした。例えば内定後に過剰な課題を与えられるとか、面接時に採用に無関係なことを聞かれるなどのパワハラ事例は少なくありません。このような被害の実態も調査すべきでしょう。

(2)「就活ハラスメント防止法」の提案

 これ以上、就活ハラスメント被害が深刻化、拡大化しないために、以下の内容を規定した「就活ハラスメント防止法」を早急に制定することを提案したいと思います。

 ①大学等の教育機関に就活ハラスメント相談窓口の設置を義務付ける。

 ②すべての事業主に就活パワハラの防止対応体制の構築を義務付ける。

 ③大学等の教育機関から就活ハラスメント行為者の所属する事業主に対して調査と

  対応を求めることができることとし、当該事業主はそれに応じることを義務付ける。

 


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