徳永写真美術研究所/研究員日記

ギャラリー・美術館を訪ねた日のことを綴ります。

静寂な青と和紙の温かさ

2018-05-09 | Weblog

 

 

 

今回で32回目の研究員活動

春の京都へ…。

相変わらず外国人観光客が多い。駅以外の普通の道でも外国人がほんとに多い!

そして研究員は京都駅からは毎度同じグーグルで…一時間程?道に迷いながら目的地に辿り着く(笑)

現在KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)も5月13日まで開催中です。

 

trace

http://trace-kyoto.com/

〒600-8834 京都市下京区和気町4

三角屋根の倉庫2F

場所は京都水族館のすぐ隣!時間に余裕あったら水族館にも行きたくなりますよ!

 

ギャラリーではトークショーの準備中 

奥の方にピアノも置いてあったのですが、今まで訪れたギャラリーの中でピアノを見たのは初めてかも?

 

 

 

堀江 美佳 「WATERFRONT II」

HP→http://www.mikahoriemu.me/

作家の堀江さん

その日の服装も作品と同じ青と白でまとめていらして素敵でした。

おまけにギャラリーオーナーの山口さんまで青い服!だったので…

私もせっかくなら青系でまとめてきたら良かった…!!なんて秘かに思ってました(笑)

 

堀江さんは京都出身ですが、現在石川県の加賀にアトリエ兼住宅を持ち活動されてます。

若い女性が古民家を買い取って住んでいる…それだけでも私は興味津々!

アパートを借りるより家を買う方がお得なんだとか。

 何故堀江さんがわざわざ石川県に住んでいるのかというと…

雁皮(がんぴ)という和紙の原料になる植物が自生する最北の地が石川県だということと、

そこの雁皮を気に入ってるからだそうです。

 写真に写っている植物がその雁皮(何故もっとアップでも撮らなかった、私!)

石川以南の山でも採れるそうですが、多少性質も違ってくるとかで。

 

堀江さんが和紙に興味を持ったのは作品作りの表現方法を模索していた時。

滋賀の和紙工房を訪れた時にその魅力を知ったのだそう。

その後、職人の方にお願いして和紙の作り方を一から教わったそうです。

今では石川にまで移り住んで…更に自分で山の雁皮をとってきて和紙作りをするまでに!!

 もし和紙に出会っていなかったら別の人生歩んでたかもしれません…(って、それは言い過ぎ?)

 

 

「Maternalism」

「WATERFRONT II」は前回の「WATERFRONT」の続き。しかもちょうど一年ぶりとなっています。

今回は写真のネガを用い、一から手作りした和紙にサイアノプリントした作品となっています。

ちなみにこちらの作品のタイトル「Maternalism」、聞きなれない単語だったのでネットで調べてみると

「マターナリズム」母性主義とも言い、相手の同意を得て、寄り添いつつ進む道を決定していくという方針…のことだとか。

 

 

 

 「circumstance」

まるで十字架のような神秘的な一枚

(写りこみ激しくてすみません…)

「circumstance」は…事情、状況、環境、境遇という意味。

写っているのは十字架ではなく、和紙作りの時に使う木の板を並べた時に出来た隙間だそうです。

 

 

「Indigo Moon and White Moon」

雲の上に並んだ二つの月…のような作品

よく見ると黒い方は山だということが、白い方は雪だということが…分かる人には分かるかもしれない。笑

遠近法で面白い写真になってますよね~。手前の雪と奥に見える山の丸みが同じ位置にあるように見えるという。

今年の2月、石川県では記録的な大雪が降ったとかで、その時に撮影されたそうですよ!

 

ちなみに全ての作品の傍にはタイトルがありません。離れた所にまとめて書いてありました。

だからこそ先入観にとらわれない見方が出来るのかな…とも。

これは何が写っているのかな…どこの部分を撮ったんだろう?もしかしてあれかな?

っていう風に作品の前で考えを巡らすのも一つの楽しみですね! 

 

 「God helps those helps themselves」

異国情緒ある作品だな…って思いながら見ていたのですが、ブラジルで撮ったそうです。

 

 

 「Ancient Tomato」

この作品も面白いですね。アンモナイトの化石のようなトマト

あの赤い色がないだけでこんなに別のものに見えるなんて。

他より粗削りな和紙もアンティーク感出てて良いです。

 

 

和紙のもつ素朴な美しさと作家さんの感性(表現力)が組み合わさった「WATERFRONT II」

なんてない日常の一部を切り取ったら別のものが生まれる

それを更に神秘的に美しく見せるのが作家さんの技ですね!

改めて考えると…山奥にひっそり生えてた植物が人の手によって姿を変え、新たな存在意義を持ち

こうして都市のギャラリーで人の目に触れること自体も不思議なことだな…と。

それとやっぱりサイアノプリントの青色も和紙の手作り感も癒されるということ。

こう…なんというか、見ていて精神が落ち着くと言ったらいいのかな?

あわよくば作品も触りたい、和紙の感触まで確かめたい…

私はそう思ってしまった。

全てが静かだけど決して冷たくなく(温かみもあって)、またくどくもなく、

ずっと眺めていられるような…「WATERFRONT II」の作品は人にとって癒しの効果があるのではないかと感じました。

 

 

 

トークショーでの一場面

左側の方がギャラリーオーナーの山口さんです。

堀江さんは和紙制作やそれを活用した作品制作だけでなく、現在日本画も学ばれてるそうです。

日本の色(伝統色)の多種多様さとその奥深さについても語られてたのですが、私自身興味のある話でした。

例えば…灰桜(はいざくら)、焦香(こがれこう)、月白(げっぱく)、紅掛空色(べにかけそらいろ)、白群(びゃくぐん)などなど…

もうたーーっくさんの色にそれぞれの名前がついているのですが、

どれも見たり聞いただけで想像力を掻き立てられるような魅力がありますよね。日本語って改めて美しいな…なんて。

日本画を学ぶことで今後どのように作品制作に影響するのか楽しみです。

 

 最後に…

和紙作りの様子を記録した写真の一部を載せます

 雁皮は4月が収穫時期だそうです。

 採ってきた雁皮は乾燥しやすいのですぐに皮をむくんだとか。

これがなかなか大変な作業で10人くらいで一気に行うそうですが、普段使っていない背筋を使うので筋肉痛になってしまうそうです(笑)

 雁皮を干してるこの写真、好きでした。綺麗だな~って。

 木槌で繊維を叩いてる時の写真

もう十分和紙らしくなってますね!

和紙の良い所の一つ…完成した後でもやり直しがきく所。もう一度水でふやかして一から作り直せるそうです!

確かに…普通の写真作品だとそうはいかないですよね。あちゃーなんか違うな!よし、分解するか!というわけにはいかない(笑)

和紙を外干ししている所

この時の和紙にはまだ水分が含まれているので、たまにトンボがやってきてそこから水分吸収をするような。 

 ほら、こんなに薄い透き通った和紙も!

厚みや繊維を自分で加減出来るのも手作りの魅力です。

和紙作りは一般の方でも予約したら参加出来るそうなので、興味のある方はぜひ!

…って、私が行きたいくらいで(笑) 

和紙、興味あるし。あと堀江さん本人の生活スタイルにも興味があって。

加賀のどんな所に住んでいるのかとか、家の雰囲気はどんな感じかとか…もうこれほんと、個人的な興味過ぎて(笑)

 

こちらは実際使用されているという和紙+サイアノタイプ作品の没もので出来たというマウスパッド!!

なにこれ…ちょっと素敵じゃない(゜゜)?と引き寄せられた研究員。

でもゴワゴワしてて使いにくいのでは?と思いきや、意外にもツルツル滑らかにマウスを動かすことが出来ます(笑)

 

そうそう、トークショーはワンドリンクオーダー制だったのだけど、

何種類かの中から選んだジンジャーエールが、生姜の味が効いててとっても美味しかったです。真夏にグイっと飲みたい!

他にもバターブレンドコーヒーなるものがあってですね、焙煎したコーヒー豆にバターをしみ込ませて作ってるそうです。

普段コーヒーは好んで飲まない方ですが、これは一度飲んでみたいと思いました。

 

 

 

 

 
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