窓からの贈り物

　　　　　　　焼き芋みたいな
　　　　　　　エッセイ・シリーズ④

　　　　　　　　　　『窓からの贈り物』


　　　　　　　　　  小学５年の時、
　　　　　　　　　ウイルス性の肺炎にかかり、ひと月ほど入院した事がある。

　　　　　　　　　病室は市立病院３階奥のガラス張りの一角で、
　　　　　　　　　当時、その小児病棟に入院してるのは僕一人だけだった。

　　　　　　　　　ある日の夜、
　　　　　　　　　ベッドに横たわり、ぼんやりと病室の窓を見つめていた時の事だ。
　　　　　　　　　病室の大きな窓ガラスの上の方に何やら動く物影があった。
　　　　　　　　　それはゆっくりと降りて来る。
　　　　　　　　　「あっ！」　
　　　　　　　　　僕は息をひそめて窓を凝視した。

　　　　　　　　　その物影はゆっくりと、
　　　　　　　　　ゆらゆら揺れながら降りて来た。
　　　　　　　　　よく見るとそれは、
　　　　　　　　　長い紐でくくられて垂れ下がっているバナナだった。

　　　　　　　　　時おり、紐をあやつってコツンコツンと、
　　　　　　　　　わざと窓ガラスへぶつけている。

　　　　　　　　　僕はすぐに、上の階の病室の誰かがぶら下げているんだと気づいた。
　　　　　　　　　すかさず窓を開けて、ひょいっとそのバナナをつかみ取った。

　　　　　　　　　バナナにはメモが貼ってあった。

　　　　　　　　　「これを受け取った方、早く良くなりますように。」

　　　　　　　　　僕は何だか嬉しくなり、バナナを取った後に
　　　　　　　　　手元にあったお菓子を括りつけ、紐を引っ張って合図した。
　　　　　　　　　するとまたスルスルと、その紐が上に引っ張られて行った。

　　　　　　　　　僕が括りつけたお菓子が窓ガラス越しに揺れながら、
　　　　　　　　　ゆらゆらと上って行く様子が見ていて楽しかった。
　　　　　　　
　　　　　　　　　「あの時の、上の病室の人ってどんな人だったんだろう・・」

　　　　　　　　　今でも時々、ふと思う事がある。




　　　　　　　　　　　　　　星空Cafe、それじゃまた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　皆さん、お元気で！