「夏熱」と書いて「かねつ」と読む。
このださかっこいい言葉は僕が高校生だった時に生まれた。
高校3年の、体育祭が近づいた時期だった。
体育祭のテーマ、というか、標語のようなものを決めることになった。
各クラスから1つ提案して、
体育委員だか生徒会だかが決めるシステムになっていた。
体育祭は夏休みから準備をして、9月に本番を迎える。
グラウンドに半裸で体育座りをしていると、とにかく暑い。
それでも9月は、一般的にも、俳句的にも、秋とされる。
体育祭は、秋の行事。
それでも、その体育祭のテーマとして「夏熱」を提案した人がいる。
うちのクラスのミズマ君だった。
ひょうきんものではないけど、常にクラスの笑いを誘う
どこかぬけてて、憎めないのがミズマ君だった。
彼の提案に、クラスが笑った。
暑苦しさに暑苦しさを重ねて、でもどこか爽やかな
だじゃれのようでそれっぽくなく、ありそうでなかった言葉、
そう、「夏熱」。
かっこよすぎて笑っちゃうこの言葉がなぜかうちのクラスの代表となり、
その年のうちの高校の体育祭のテーマになった。
実は、この年の体育祭には、
消化し切れてない、嫌な思い出の方が多いけど
この言葉は忘れまいと思う。
「夏熱」と、変に力を込めて、半ば自嘲したように言う
ミズマ君のその言い方とともに。
この正月の同窓会で、久々にミズマ君に会った。
夏熱の話は出なかったけど、
彼の笑顔は「夏熱」と言った時から全く変わっていなかった。
と、ここまで書いてて思い出したけど
この年の生徒会長はださかっこいいのが大好きな谷雄介。
うちの高校の生徒会長はその一言で何でも決まるような権限は持ってなかったけど、まさか。まさかね。