前回は前提としてのお話をしましたが
さて、今回は実際にオーディオシステムに於ける優先順位を発表したいと思います。
大きく分けてオーディオシステムには記録媒体部と増幅部、そして発音部の三つがあります。
記録媒体はレコード、CD、パソコンデータなど要するに音楽が記録されている物です。
これを音楽読み取り部と呼んでも構わないと思います。
次に増幅部、これは前回お話した糸電話のようなものでは音量的に稼げないので
電気の力を借りることになります。
プリアンプやパワーアンプをここでは指します。
最後は発音部、つまりスピーカーやイアフォン等の空気の波に変換する部分ですが
わかりやすく発音部としましょう。
嫌でもこの三つのお世話になるのがオーディオで、蓄音機を別として電気のお世話に
なっているシステムでもあります。
そういう訳で電気的な増幅システムをベースに物理的振動を起こす訳ですから
今流行りのインシュレーターなども振動と言う部分に関連し音作りに参加しています。
脱線するかも知れませんが、よく制振とか振動を悪者扱いしたり制御しようという
流れがありますが、オーディオの世界にも振動をうまく利用しようという考え方と
いや、あくまで不要振動を止めようという二派があります。
わかりやすい例でいうと止める方はアナログプレーヤーのハウリング防止です。
止めない方はスピーカーの場合、響きの良い材料(楽器等にも使われる板材)を使った
エンクロージャーなどは積極的に固有振動を利用する例です。
オーディオの場合この「鳴かした方がいい場合」と「鳴かさない方が良い場合」が
実際、混在しています。ですので頑なに一方に固執していると問題が出た時の対処を
誤ります。
またオーディオには迷信とそうではない確かそうな文言..、そしてその中間のグレーゾーン
これらがマニアを惑わします。
雑誌等で評論を宣う方々も自身ではマニアの一人であり、その出している音でその評論家の
腕の真偽を問う方々もおられます。
オーディオメーカーもそうで自社試聴室は言ってみればマニアの一部屋に過ぎず
そこで出ている音は一つの現象に過ぎません。それを持って全てを断言することなど
できません。
オーディオ雑誌の功罪とは何でしょう。
功の部分は明らかで製品の紹介が色々とされているところです。読者はそれを読んで
ふーん、今度はこんな物が出たんだ、と知ることになります。
そこで更に詳細が知りたくなり評者のレヴューを読んでいくのですが・・・・
ここで一つ問題が発生します。つまり読者はスペック的な物は一通りわかった所で
肝心の音はどうなんだい、と思うのです。しかし最近の評論家の物言いはなかなか
巧みに「要するに何を言いたいのか」をはぐらかします。これはあまり良くなかった
場合にそうなります。悪し様にメーカー品を貶してしまうような評論はメーカーに
嫌われるからです。どんなメーカーも自社製品を良く書いてもらいたいのです。
TMDでも勿論そう思います。
その気持ちは評論家にも当然伝わりますから、評論家ももしも音があんまり好ましく
無かったとしても「ダメだ、全然ダメだ」などとは書けずオブラートに包んで
「勢いがある音だ、物理特性を感じさせない自然な音」とでも書けば
「なにしろ中域がうるさく、他の帯域が良く聞こえない」などと書かずに済むわけです。
だから読者は行間を読む必要があります。
またオーディオ製品という物は販売店の店先などで音を聞いても、自分のシステムに
実際に入れた時の音の予測はできないもので、もしそれが出来る人がいたら達人と
言うしかありません。
※そこでTMDではケーブルの無料貸し出しシステムを行っているのです。
そんなこんなでオーディオをやる人は他人任せにオーディオ機材選びをやろうとしても
なかなかうまく行きません。自力でやるしかないのがこの道です。
よく寺島さんの本にこのような事が書かれています。
「この人は要するに自分の好みの音を他人のお宅で出そうとしているのだ」
メーカーも販売店も自分の売りたい品を売りたいのでどうしてもそちらに誘導します。
オーディオマニアは自分というものを持たないと他人の意見に右往左往してしまいます。
これにはどうしたら良いでしょう。
それは自分の好きな理想の音を思い描く所から始まります。
この好みは他人がどうこう言う性質の物ではありません。
自分の好みだからです。
例えば草原で心地よい風が吹いているような 音でもいいし。
滔々と流れる大河のような 音でもいいです。
または物理特性が抜群?な 音でもとりあえずいいでしょう。
とにかく目標を決めましょう。
その目標に向かって邁進するのがオーディオの道かも知れません。
途中で目標を修正したり方向転換するのもありだと思います。
何故なら、自分の好きな音がわかんない人も結構いるからです。
そのような方は色々な人のお宅の音を聞きまわるのも一つの手ですね。
そして感動したり、いいなと思った音を一つの暫定球的方向としてそっちに
向かっていけばいいのです。
オーディオの迷信は色々ありますが、物理特性が良ければ音は必ず良いというのは
主に電気屋、物理屋が主張しやすい文言です。現在ではアンプの特性などは普通の
ものでも20Hz〜20Khzを平坦に出します。これを横から見れば滑らかな羊羹の
ように見えるでしょう。この凹凸が無い平面を見て、だから音が良いのだ、と
言い切る事はできません。つまり羊羹には味があるからです。
凹凸が無いだけで美味しい羊羹とは言えません。
一般的に20ヘルツから20000ヘルツと一言で言いますが
20ヘルツの方は正に振動と言えるレベルで1秒間に20回、振動する波です。
一方20000ヘルツとなると殆ど音としては聞こえません。
1000ヘルツあたりはピーッと耳に敏感な周波数です。
スピーカーの場合、フルレンジスピーカー1本で20Hz〜20Khzを平坦に出せるものは
殆どありません。特に20H付近の低域と20KHzの高域あたりがフラットに出ません。
それで勢い3Wayとかに音波を分割して構成したりするのです。
さてさて一番始めのテーマ、オーディオシステムに於ける優先順位についてです。
以上のように発音体であるスピーカーは再生するための躯体となるため
ダイナミックレンジや再生周波数レンジは、ほぼここで決まります。
口径5cmの単一スピーカーでも音は出ますがレンジの体感は無理なのです。
何故、そこを強調するかといえば入り口から中程までを凝りに凝っても
出口のスピーカーの能力で制限されてしまうということです。
ゆえに小型スピーカーでの雄大な低音再生を願っている人はサヴ・ウーファーでも
使わない限り、どんなに音が良いとされるCDPやAMPやケーブルを使っても
希望する低音は絶対に出ないということです。
音はスピーカーの能力範囲で出る
という事です。
次はAMPです。今や数千円で買える中華製デジタルアンプから果てはマークレビンソン
マッキントッシュ、マランツ、ゴールドムンド等々のハイエンドアンプまで色々ありますが
アンプとは冷静な眼で見るならばW数と歪率が基本となります。
でも1W=幾ら? の簡単な図式に収まらないのがアンプの世界です。
今や100W程度の出力のアンプを手に入れるのは簡単です。
これは先ほどお話しした羊羹の外側の話と同じで、100Wという出力を持った羊羹
であるというだけで味の方は食べてみるまではわかりません。
デジタルアンプでは100W出すのは簡単です。しかし真空管で100Wは少し大変です。
アンプの音質はシステム全体の力感と質感の二つに跨ります。
特にプリアンプは質感に関係しパワーアンプは直接スピーカーを駆動する事から
力感に直結します。難しい選択です。
デシベルの事を分かっている人なら理解出来る話ですが100dbの能率を持っている
スピーカーに大出力のアンプは基本的に必要ありません。
反対に80db程度の能率のスピーカーに5Wのアンプをつないで歪みなく大音量を
得ようとしても無理なのです。
この辺も基本的な事なのですが、押さえておかないと後で困る事になります。
この問題は住宅事情や出したい音量レベルとの兼ね合いになります。
どのくらいの音量を出したいか?
ですね。例えばマンションでそこそこの小音量で音楽が楽しめれば良い
という方の場合は資本投資を量よりも質に投じれば良いのです。
一方、広い部屋、もしくは防音環境が整った場所、または周りに家が無い田舎の一軒家
の方で大きな音量で聞きたい方の場合はかなり計画を練ら無いと効果の無い場所に
お金を散財する事になります。
どのような音楽を聴くか?
これも大事です。室内楽を等身大の音量で聞く事はまぁまぁ可能な事ですが
大オーケストラを等身大で聞けるような装置は滅多に作れません。
またロックコンサートに行った時のような音圧を自宅で得たい方もかなり
システム構築は難しいです。
まぁまぁ可能なのはジャズのピアノトリオの演奏程度を等身大の音量で聞くぐらいが
ホームオーディオの一つの限界かも知れません。
以上、オーディオの装置を選びシステムを構築していくという事は明確な目標が
あればあるほど、寄り道なく真っしぐらに進めるものであるという事を
書かせていただいたわけですね。
次回からは更に具体的な話になっていく予定です。