竪琴的試写室 aperto!!

お気に入りの映画、忘れたくない映画をレビューしていきます。

カイロの紫のバラ THE PURPLE ROSE OF CAIRO '85 米

2005年10月30日 09時43分58秒 | カ行
監督・脚本 ウディ・アレン

DATA 音楽/ディック・ハイマン カンヌ映画祭国際批評家賞 NY批評家協会賞脚本賞 ゴールデン・グローブ脚本賞ほか

 

CAST ミア・ファロー ジェフ・ダニエルズ ダニー・アイエロ エド・ハーマン ダイアン・ウィースト ヴァン・ジョンソン ゾー・コールドウェル ミロ・オーシャ ジョン・ウッド グレン・ヘドリー マイケル・タッカー

 

ウディ・アレンらしいファンタジックなアイデアが冴え渡る逸品でございます!タイトルの「カイロの紫のバラ」は劇中でかかっている映画のタイトル。この映画に夢中な平凡な主婦がとんでもない騒動に巻き込まれていくお話です。巻き込まれても巻き込まれても彼女はずうっと平凡な彼女のまんまなのがとーーーーっても可愛い!演じるミア・ファローは長くウディ・アレンと公私に渡りコンビを組んでいたのですが、最後は5年くらい前ですかね?ゴタゴタの離婚劇(実際には結婚はしていませんでしたが)で共同生活にピリオドを打ちました。ミアさんはフランク・シナトラの元奥さんです。そんなことはどうでもよくて。

舞台はもちろんNY、1930年代。主人公のセシリアは家に帰ればぐうたらで女好き、遊び好きの暴力亭主がいて、慣れないウェイトレスの仕事ではドジばかり(ウェトレス仲間のセシリアの姉は本物のミア・ファローのお姉さん)。セシリアの心のオアシスは街の映画館だけでした。同じ映画に通いつめていたある日、見つめるスクリーンの向こうから優しい声が!!「君はもう何回も見に来てくれているね?」なんと。同じシーンの繰り返しに飽き飽きしていた映画のヒーローがセシリアに話しかけてきます。あろうことかヒーローが「一抜けた!」と映画を飛び出してしまって大変な騒ぎになります(笑)。映画を抜け出して自由を満喫するヒーローと、平凡だけど心優しいセシリアが恋に落ちたり、映画のプロデューサーがハリウッドから駆けつけたり、ほかの出演者たちはストライキを起こしたり、ヒーローを演じた役者が登場したり・・・。このあたりのどたばたもうまくまとまってコミカルにリズミカルに進みます。

最後はちょっぴり悲しい幕切れですが、後味はヒジョーに爽やか!楽しい作品です。ヒーローをかくまってくれる娼婦をダイアン・ウィーストがやっていますが、彼女はウディ・アレン映画の常連で、いつも風変わりだけれども優しい役をやっています。アレン作品以外でも「シザーハンズ」の偏見を持たないママ役とか、「アイ・アム・サム」の対人恐怖症を押してサムを助けてくれる隣人とか、ジョディ・フォスター初監督作品だった「リトルマンテイト」では天才児を暖かく見守る博士などなど。あったかい雰囲気を持った素敵な女優さんです。

このころから「重罪と軽罪」くらいまでのウディ・アレンがとっても好きでしたねー。最近はどれもこれも同じに見えちゃって全部見れてないです。「アニー・ホール」とかは何度でも見ちゃいますけどね!

映画らしい映画度 ★★★★★


奇蹟の輝き WHAT DREAMS MAY COME '98米

2005年10月29日 12時00分00秒 | カ行
監督 ヴィンセント・ウォード
脚本 ロン・バス
DATA
音楽=マイケル・ケイメン アカデミー賞視覚効果賞=J・ハイネック、N・ブルックス、S・ロバートソン、K・マック 原作=リチャード・マシスン 
CAST
ロビン・ウィリアムズ アナベラ・シオラ マックス・フォン・シドー ロザリンド・チャオ ジェシカ・ブルックス・グラント ジョシュ・パドック キューバ・グッディング・JR ルシンダ・ジェニー マット・サリンジャー ヴェルナー・ヘルツォーク

 圧倒的な色彩と、ロビン・ウィリアムズ独特の一途なキャラで幻想的な世界が描かれています。リチャード・マシスンの原作なんだそうで。スピルバーグの「激突!」(スピルバーグ作品で一番好き!)とか「トワイライトゾーン」、大コケにコケちゃったけどとっても好きな「ある日どこかで」なんかの脚本の人です。どの作品も独特の世界観がありますよね。「ある日どこかで」なんて、どうしてコケちゃったんだろ??古典+ロマンス+SFなんて今ならおおはやりの大ヒットを巻き起こしそうなのに(笑) 少々早すぎたのかな?

 最初から最後まで油絵のような映像です。すごく美しくてすごくおどろおどろしい・・・。事故で死んでしまった自分を思って自殺を図った愛妻が、自分の待つ美しい天国ではなくて地獄に堕ちてしまった事を知って、救い出しに行くのです。死神や死んでしまった我が子との再会など、いろんなことが待ち受けています。いろんな試練を乗り越えて、ゆるぎない愛で妻アニーを救い出すロビン・ウイリアムズがすごくステキでした。アニーは壊れかけてしまったけど、ココロに強くのこった思いが彼女に筆を握らせ続けたんだろうな。それが逆にみんなの心を紡いで離さなかったんだと思う。

 洋の東西を問わず地獄ってこういう感じなのか・・・と思ったり(笑) ちょっとイメージちがったりするけど、アメリカの映画なのにずい分と仏教的なんだなぁと感じました。宗教的で深みのあるセリフが溢れていますよ。

 キャストの方もどえりゃー豪華です。「エクソシスト」の神父さんマックス・フォン・シドーからドイツの名匠「カスパー・ハウザーの謎」でおなじみのヴェルナー・ヘルツォーク氏まで出てきてびっくりしました。キューバ・グッティングJrはいつみてもキュート

絵心はまるでない度 ★★★★★

君に読む物語 THE NOTEBOOK '04 米

2005年10月29日 09時28分34秒 | カ行
監督 ニック・カサヴェテス
DATA 音楽/アーロン・ジグマン 脚本/ジャン・サーディ ジェレミー・レヴェン
CAST ジーナ・ローランズ ジェームズ・ガーナー サム・シェパード ライアン・ゴズリング レイチェル・マクアダムス ジョアン・アレン ヘザー・ウォールクィスト ケヴィン・コナリー デヴィッド・ソーントン ジェイミー・ブラウン スターレッタ・デュポワ


ケミストさんのおまけ画像で台無しなんではないかー??という苦情が殺到中ですね(笑)。確かにいらんおまけではありましたが、ここで流れる映像に本編の字幕とは少し違った表現があってとても興味深かったです。ここまで見て「あ!」と謎も一個解けましたから・・・。



冒頭の夕日の中、川をボートがすぅーっと進むシーンがいきなり印象的でした。何気ないシーンですが、これはとても大切なファクターになっています。ここにトリがふわーっと飛び立ち、ジョージア風の建物がアップに。窓に1人の女性・・・。このトリの羽ばたきも大事ですー。老人ホームらしき施設にいるこの女性、どうやら痴呆症のようでいろんなことを思い出せずにいるようです。そこに1人の男性が。彼は彼女にどうせ時間をもてあましているのなら本を読んであげましょう、と申し出るのです。そこから始まるのが若い男女が登場するラブ・ストーリーで、読み聞かせるうちに最初はいぶかしげにしていた彼女も「どうなるの?どうなるの?」と先を促すほどにのめりこんで行きます。



この老女にジーナ・ローランズ!監督のお母さんですね。ステキです。うまいです!真っ白な頭に真っ赤なワンピース。小刻みに震える指先と、定まらない記憶におびえる姿。読み聞かせる老人デュークにこれまた名優ジェームズ・ガーナー!渋すぎる・・・。物語の中の物語に登場する若い二人はライアン・ゴズリングとレイチェル・マクアダムス。この二人はまったく知りませんでした。男の子「ノア」はハンサムで生活力はあるけれど、学歴や家柄とは無縁。でもステキなパパがいます!このパパがサム・シェパード!!!サム・シェパードが出ているだけでもうこの映画はこっちのもんです(笑)。もーう、もーう、もーうかっこよくってかっこよくって!お誕生日から計算してみるともう62歳なんですね・・・。信じられない。途中で亡くなるんですが、上映中わたし1人「えぇっ!!」と声を上げてしまいましたよ(恥)。女の子「アリー」はこの時代に女性ながらに大学進学を目指し前途洋洋、裕福な家柄に育った自由奔放なお嬢様。この二人が恋に落ちてしまうわけなんですねー。アリーちゃんは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名になったリー・トンプソンにちょっと似ているんですが、いたずらっ子的な表情にちらりとフジテレビアナウンサーの中野美奈子さんを感じてしまったりして。お嬢様らしく勝気ではっきりしていてキレイで無邪気でまー、気持ちいいくらい(笑)。でもところどころちゃんと育ちが出ているな・・・的きちんとした立ち居振る舞いが出来て、こういうちょっとしたシーンで二人の家柄の差を見せちゃうようなところが面白かったです。彼女の家に招かれていかにも・・・というシーンより響きましたねー。最初はノアも相手にされないのですが、一旦火がついたらもうどうにも止まらない・・・。熱く熱く燃え上がっちゃいます!さあ、大変!



ここから後は予定調和的にお話が進みますが、これがとても気持ちいい。筋書き自体はとてもシンプルでどってことないっちゃどってことないんですが、老人二人のうろたえ振りや若者二人の無鉄砲さや、周りの人たちの優しさがとても身に染みるエピソードとして描かれていて、またそのそれぞれの演技が素晴らしかったです。あ!アリーのお母さんが大好きなジョアン・アレンだったのですが、この人もホントうまいですねー。たいてい厳しく優しく凛!とした女性の役が多いのですが、この映画の中でもまさに南部女性!と言う感じです。でもこのお母さんにまつわるエピソードでもいいシーンがあるのですよ~~~~。じぃーん(涙)



↓↓ここから先はネタばれ注意です。読んでもOKな方は以下をドラッグしてください↓↓
だいたい原題が「THE NOTEBOOK」ってとこからして身近な人の思い出話ってことはピンと来ますよね。でもこのデュークおじさん、後に登場するもう一人の男性とどっちなんだ?というドキドキ感もあったりして。ある程度お話が進めばすべて分かるのですが、ここからは一瞬我に返るアリーとすぐにまた痴呆症の影響で訳が分からなくなってしまう現実・・・それを哀しい表情で見つめるノアという構図が身に染みます。トリがキーになる・・・と最初に書きましたけど、要所要所で「渡り鳥」が出てくるんです。ノアのセリフに「トリは元にいた場所に戻るんだよ」というのがありまして、これが親も納得の男性と婚約したアリーがノアの元に帰ってくる、生まれる前の世界に戻るときにどこで誰といるのか・・・という大きなテーマにつながっているような気がしました。そして、このノート、ノアがアリーのために書いてあげた物語のように見えますが、最後の最後に「Dearest Noah」ってあるんですよね。ってことはアリーが記憶をなくす前に自分の思い出を書き記したものだったのか・・・と。年老いたノアはこの思い出を繰り返し読んであげればきっと元に戻れるはず、この思い出はほかならぬアリー自身のものなのだから・・・と信じたのでしょうね。
↑↑ネタばれおしまーい↑↑
それにしても若い二人がボートに乗るシーン。アヒル・・・おりすぎやろっっ???ちょっと笑ってしまうくらいたくさんいました。一緒に見に行っていた娘が「お・・・おかあさんが、おかあさんが・・・いっぱいいるー」と言ってくすくす笑い出すし・・・(竪琴はアヒル顔の女です)。このアヒルさんたち、スタッフが孵卵から飼育までやって慣らした・・・と言う話を聞いたのですがホントかな。



まあ、身分の違う二人の恋物語っていうのは映画でもよくある題材で、古くは「ある愛の物語」から新しいものでは「タイタニック」。「ノッティング・ヒルの恋人」なんてのもちょっと風情は違いますが、バックグラウンドの違う二人のステキなラブ・コメディでしたねぇ。この「君に読む物語」を見ていてわたしは「タイタニック」を思い出したんですー。



「タイタニック」同様、女性が裕福、男性が庶民というパターンでしたが、「タイタニック」では裕福で何でも手に入れられる女性の方が自由を感じられずにいて、ディカプリオは貧乏だけれども「画家になる!」というまっすぐな夢を持ってタイタニック号に乗り込んでくる。ローズはそんな彼とのあの別れの後に、彼への恩返しのためにも、自分の手で自由を勝ち取って素晴らしい人生を送ったようでした。でもこの映画を見たときわたしがとても切なくなったのは、、貧乏ながらに自分の人生を正直に生きて、限りない未来があるように見えたディカプリオ演じるジャックだけが、実は「やはり自由な人生なんて自分には望めないもの」と気づいていたんではないか・・・と感じたことでした。だからこそ命がけで可能性のある愛する人を助けたかったんだろうなぁと。んでもってこの「君に読む物語」のお嬢さんは自由がどうの・・・という時代からは「多少」開放されていて、その辺を考えながら見ているととても面白かったですね。時代考証から言うと、ちょうど彼女のお母さんが「タイタニック」のローズくらいになります。多少開放されているとはいえ、今でも南部は家柄やしきたりを重んじる地域で、こちらもまた、さまざまな映画の題材になっとります、ハイ。

トリ年にふさわしい度 ★★★★★

クジラの島の少女 WHALE RIDER '02 ニュージーランド・独

2005年10月27日 09時35分42秒 | カ行
監督 ニキ・カーロ
脚本 ニキ・カーロ
DATA 原作=ウィティ・イヒマエラ 音楽=リサ・ジェラード
CAST ケイシャ・キャッスル=ヒューズ ラウィリ・パラテーン ヴィッキー・ホートン フラワーズ クリフ・カーティス グラント・ロア

美しい映画です。


主演のケイシャちゃんがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされていたので気になっていた作品です。ケーシャちゃんは授賞式で見る限りちょっぴりおしゃまな現代っ子と言う印象だったのですが、作品の中では見事なまでのマオリ族の娘で素朴そのもの。かわいかったです。授賞式では司会のビリー・クリスタルおじさんに「今日は何を楽しみに来たの?」とステージ上から尋ねられ、すかさず「ジョニー・デップに会えること!」って答えてました(笑)。


テーマはニュージーランドの先住民族の受け継ぐべき伝統と、その現代での模索・・・というところでしょうか。なんとなく今、日本でも話題になっている女性にも王位継承権を、というのと通じるものもあり、興味深く見ることができました。と言っても、そんな小難しい話ではなく、シンプルで彩り豊かでとてもキレイなお話ですー。

ケーシャちゃん演じるパイケアという少女。このパイケアというのは家族の住む島に最初に流れてきたとされる勇者の名前で、クジラに導かれたという伝説がありまして。代々パイケアの血を引く男性が族長として島を守ってきた、という歴史がありました。ところが、この代のパイケアは男の子と女の子の双子として生を受けるのです。運の悪いことに双子を生んだその日に母親と弟が死んでしまいます。残されたのはケーシャちゃん。伝統を重んじるケーシャちゃんから見てのおじいちゃんはパイケアを認めようとはしないのですが、隠されたクジラ乗りの素質と可愛さにだんだん溺愛するようになるんですね。


ところが、このじーさん。いざ次の族長になるべき指導者を決める頃になると、女だからと言う理由で孫娘に訓練に参加することを認めないのです。お話はざっとこんな感じなのですが、最近よく見る「裸足の1500マイル」とか(これもよかったですー)、現住の民族の歴史を描いた作品のうちの一つと言ってしまえばそれまでで・・・。なのですが。この作品はまさに「今」が舞台なんです。そこがとても新鮮でした。ニュージーランドの景色の美しい色彩とゆったりとしたお話とがマッチしていて、ノスタルジックなのに「今、現在の出来事」としてすんなり入ってくる感じです。


がんこじーさんの奥さんも、案外おとなしく言うことを聞いているだけの良妻賢母でないところも頼もしいし(笑)、パイケアのパパの弟もお茶目で優しくて見ていてホッとします。生活の中に先住民族の文化がみごとに溶け込んでいるのも貴重な見所です。観光相手のダンスとかでなく、シンプルで生活に根ざしているものが垣間見えますよ。一見の価値アリです◎

色彩度 ★★★★★

靴をなくした天使 HERO '92 米

2005年10月27日 09時30分45秒 | カ行
監督 スティーブン・フリアーズ
脚本 デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ
DATA 音楽/ジョージ・フェントン
CAST ダスティン・ホフマン ジーナ・デイヴィス アンディ・ガルシア ジョーン・キューザック ケヴィン・J・オコナー スティーヴン・トボロウスキー スージー・キューザック ジェームズ・マディオ トム・アーノルド チェヴィー・チェイス

正直者のたった一度のウソと、でたらめ男のひとつだけの真実・・・。マス・メディアへの痛烈な風刺もこめられたイギリスの新進気鋭監督(と言われてもうずいぶん経つからすでに新進気鋭ではないのかも)、スティーブン・フリアーズ会心の一撃です。ちょっと古いアメリカ映画を見ている気分です。フランク・キャプラとかビリー・ワイルダーみたいな・・・。冒頭などは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」を意識しているような。


ダメおやじのダスティン・ホフマンが何をどう間違ったか人助けをしてしまいます。しかも助けた相手はやり手のテレビ・レポーター。命の恩人を探し出す彼女の前に現れたのはまったく別のオトコだった・・・。というお話です。前半、ダスティン・ホフマンがどんなにいい加減なやつか、ということがコレでもかというほど語られていて笑えます。女性レポーターのゲイリー(ジーナ・デイビス)も一見やり手に見えて意外と小心者、報道の賞を受けるも自分らしさを発揮できているのか・・・という誠実な疑問にココロを痛めてみたり。バーナード(ダスティン・ホフマン)の前妻を演じるのがジョーン・キューザック。彼女がサイコーにいいです!!この人はそろってゆで卵を剥いたようなおんなじ顔をしたジョン・キューザックという弟がいるのですが、なんともキュートで独特な雰囲気を持った女優さんです。顔立ちはカワイイのに、どこかコミカルでブラッキーなんですよねぇ。この作品でもヒステリックで高圧的なよい演技をしていますよ。珍しく美人のまま出ています(笑)。


出演陣でおかしかったのは、スティーブン・トボロウスキーとチェビー・チェイスの地位がどうしても逆に見えてしまったこと(笑)。わたしの中でスティーブン・トボロウスキーは「助手」「運転手」「召使」のイメージが出来上がってしまっていて、チェビー・チェイスが敬語を使うのがおかしかったです。チェビー・チェイスも普通にまともな社会人だったので、途中まで「チェビー・チェイス似の誰か」と思って見てました(笑)。普通の人、できるんだ・・・なんて。


ここにアンディ・ガルシアを持ってくるのも「やられたぁ!」って感じです。彼はキューバ出身のスペイン系だったと思いますが、敬虔なカトリック教徒で明日食べるパンがないかも・・・というときに受けたオーディションで最後まで残り、「上半身裸になってくれ」と言われてオファーを降りたというエピソードがあるそうです。あっまーーいマスクとは裏腹にマジメな人なんですね。3児のパパだそうで。いやいや、色っぽいお父さんですこと。いつもは甘いマスクにぴったりの色男の役が多いんですが、今回はちょっと女々しくも愛すべきキャラクターで登場します。ゲイリーでなくてもホロっとしちゃうかも。


んー、ダスティン・ホフマンのしゃべり方がちょっと気になってしまいました。この人、抑えた演技のときのほうが冴えてる感じがするんですけどねぇ。「大統領の陰謀」とか。「アガサ/愛の失踪事件」とか。


それにしても、わたしたちって相当マスコミに踊らされているんだろうなぁと、つくづく考えてしまいました。真実ってどこにあるんだろう、本当のヒーローって何だろう?って。見る目を養い、いろんな面から物事を見つめて最後は自分で判断するしかないんですよね。情報があふれている分、昔より難しくなっているのかな。
音楽もいいです。サントラ盤、買っちゃおうかな・・・。

人生いろいろ度 ★★★★☆

クラッシュ CRASH '04 米

2005年10月27日 09時30分00秒 | カ行
監督 ポール・ハギス
脚本 ポール・ハギス
DATA
アカデミー作品賞 脚本賞=P・ハギス B・モレスコ 編集賞=H・ウィンボーン
CAST
サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン ジェニファー・エスポジート ウィリアム・フィクトナー ブレンダン・フレイザー テレンス・ハワード クリス・“リュダクリス”・ブリッジス タンディ・ニュートン ライアン・フィリップ ラレンズ・テイト ノーナ・ゲイ マイケル・ペーニャ ロレッタ・ディヴァイン ショーン・トーブ ビヴァリー・トッド キース・デヴィッド バハー・スーメク トニー・ダンザ カリーナ・アロヤヴ ダニエル・デイ・キム

おおかたの業界人の予想を覆し2005年度アカデミー作品賞を受賞してしまった作品。
受賞時、当のクラッシュ陣営の驚きようがすごくて(笑) それがまた感動を誘うという後味のよい授賞式だったわけですが。作品の方はそういうわけにも行かず、後に暗さを引きずるずっしりとした見ごたえのある映画でございました。
2005年度の対抗馬が「ブロークバック・マウンテン」でして、こちらもなかなかの大作のようですねぇ。まだ未見で、あらすじやいくつかのシーンをチラホラと知っているだけなのでこういうこと言うのもどうかと思いますが、やはりブロークバックの方が規模としてはふさわしかったのかなと思います。

でも・・・。今のアメリカの映画組合のみなさんが、この作品を選んだということにとても意味があるんだという、オスカー発表後の戸田奈津子さんのコメントに改めてうなずいてしまいました。人種差別に焦点を合わせたものという触れ込みでしたが、さまざまな人種というよりも、人間の脆さ・弱さ・危うさなどが浮き彫りにされているんではないかなと感じました。人種的な背景からにじみ出ている部分も描かれていますが、苛立ちを立場や地位を利用して他人を傷つけると言う行為で表現する人間の弱さ。怖いです。人種なんて関係なくて、自分の中にもきっとあるはず。

夕べたまたまNHKの番組で「愛国心の教育」というテーマの放送を見たんだけれど、愛国心って教育するものなのかな?って思ってしまった。教えられるものではなくて芽生えるものって思っちゃう。普段はなんとも思っていなくてもオリンピックを見ていたらやっぱり日本を応援しちゃう・・・という。日本独特の言葉美しさに触れたときになんとなく感じるものだったり、とても個人的な思い出とリンクしていたり。この映画の中に見る人種の壁も、分厚さも越えられない高さも感じるけど通り抜けられる・・・通じ合える何かもきっとあるのだと信じたくなってしまったな。

音楽も素晴らしかった。音楽に導かれて映像がすぅーっと入ってくるような、そんな映画でした。うん、かなり好きな作品です。エピソードとエピソードのつむぎ方もすんなり入ってくるし、それぞれ感情の育ち具合も理解できるし。でも残念ながら?前半がすごく好きで、後半ちょっと尻すぼみっぽく感じちゃったな。まあ、最後に必要以上に盛り上がってしまうととても疲れてしまったのだろうけど(笑)

自分の弱さを省みてしまう度 ★★★★★

グリーン・カード GREEN CARD '90 米・仏・豪

2005年10月26日 09時29分10秒 | カ行
監督・脚本 ピーター・ウィアー

DATA 音楽/ハンス・ジマー ゴールデン・グローブ作品賞、男優賞=J・ドパルデュー

CAST ジェラール・ドパルデュー アンディ・マクダウェル ベベ・ニューワース グレッグ・エデルマン ロバート・プロスキー ジェシー・ケオジャン イーサン・フィリップス ロイス・スミス ジョン・スペンサー

リアリスティックでロマンティック!!それにつきます。本当にありそうな(まあ、ないだろうけれど)大人の恋の物語です。


NYの落ち着いたアパートメントが舞台なんですが、独身者は入居不可という条件があります。彼女はグリーンのない生活が耐えられないためにこの庭園付きアパートメントがどうしても必要。フランスから出てきたばかりの彼は労働許可書を取るために一番手っ取り早い方法を求めて「永住権=グリーン・カード」が欲しい。ひょんなことで出会った二人のこの願いを同時に実現できるもの・・・それが「偽装結婚」なのです~!!


アメリカ国籍を持った人と結婚すれば永住権は勝手についてくる・・・ということで、話し合いの末2人は協力しあうことになります。移民局の調査に向けて相手のことを猛勉強。デートの写真をでっち上げ、食べ物の趣味を語り合う。そしてお互いを知れば知るほど・・・なんと。気が合わない、そりが合わない、好きになれない・・・(笑)。フランスの名優であるジェラール・ドパルデューは思いっきりアメリカ人を馬鹿にしたフランス男だし、アンディ・マクダウェル(かわいい!!)演じるブロンティはスノッブでおすましのニューヨーカー。なかなか素直になれません。


わたしは監督のピーター・ウィアーさんが大好きなのですが、もともとオーストラリアの人で美しい景色を作品に織り込むことで有名で、どの作品を見ても映像が美しいんです。なので、大都会ニューヨークが舞台だと知ったとき、どうなるんだ?と内心心配したのですが、やっぱり美しいぃ~~~~。それだけでも見る価値があると思います。そのうえ、脚本も(ピーターさん担当)素晴らしいです。主演の2人がぴったんこはまっているということもあるんでしょうけれど・・・。


今コレを書いていて、二人がどうやって知り合ったのかが思い出せなくてモヤモヤしています(笑)。借りてこなくっちゃ。

料理ができる男性って素晴らしい度 ★★★★☆

刑事ジョン・ブック/目撃者 WITNESS '85米

2005年10月25日 09時27分25秒 | カ行

監督 ピーター・ウィアー
脚本 ウィリアム・ケリー アール・W・ウォレス

 

DATA アカデミー賞・脚本賞=ウィリアム・ケリー アール・W・ウォレス 編集賞=ソム・ノブル 英国アカデミー賞・作曲賞=モーリス・ジャール ブルーリボン賞・外国作品賞

 

CAST ハリソン・フォード ケリー・マクギリス ルーカス・ハース ダニー・グローヴァー ジョセフ・ソマー アレクサンダー・ゴドノフ ジャン・ルーブス パティ・ルポーン ヴィゴ・モーテンセン

完成度高し・・・。ごひいきのP.ウィアー監督の中でも特に好きな作品です!元々はオーストラリアの方です。ハリソン・フォードとは「モスキート・コースト」でも一緒にやってましたね。


「あれ?間違って違うの借りてきちゃった???」って思っちゃうような静かオープニングにびっくりですが、サスペンスです、刑事モノです。キリスト教の再洗礼派の流れを汲む、現在も自給自足、そして電話・電気などの文明を使わない(自家発電はあり)生活を送っている「アーミッシュ」の親子と、ニューヨークの敏腕刑事が出会います。その静かなオープニングから喧騒溢れる都会へ場面が変わっていく様が子供の目を通して描かれていきます。その対比が後々またアーミッシュの村に戻ったときに効いてきます。


静かな暮らしを送っていたサミュエルとレイチェル。レイチェルのダンナさんがなくなり、お葬式のあと姉を尋ねるために息子サミュエルを初めての都会へ連れて行くことになります。それは単なる「通過」になるはずだったのに・・・。駅のトイレに行ったサミュエルはなんと殺人事件を目撃してしまい取り調べを受けるために警察へ。ここで登場するのがハリソン・フォード(きゃーきゃー!!)。お約束にくちびる右端をきゅっとあげての登場なのですー。ホントにこの頃サイコーにかっこよかったですねぇ。少年の協力のおかげでジョン(ハリソン・フォード)は犯人を割り出しますが、同時に自身と親子に危険をもたらすのでした。ジョンは親子を無事村に送り届けるため車を飛ばしますが、犯人の銃撃で負傷。アーミッシュの村で治療するのですが・・・。


ここからは美しいアーミッシュの生活を堪能することになります。P.ウィアーの映画はどれもこれも風景が本当に美しくてため息が出ますが、この映画は舞台そのもの、村そのものがもう絵画です。忠実に再現された生活ぶりと、観光客の現実と、追われているにしてはくつろぎすぎのジョン・ブック。美しい未亡人レイチェルとの交流や、村人の結婚を祝って納屋を建てるお手伝いをしたり。惹かれあいつつお互いの世界を超えられない二人の指も触れないラブ・シーンはもう・・・ハナヂがつ~~~~~みたいな(笑)


ハリソン・フォードは俳優として売れなかった時代、本当に大工さんをしていて、当時は俳優業より稼いだそうですよ。有名なところではセルジオ・メンデスのスタジオを建てる仕事をしたとか。納屋を建てるシーンで手馴れているのにも頷けちゃいます。そういえば、乳搾りを手伝うシーンでうまく行かない・・・と、やきもきするところがありますが、実生活では牧場を経営しているハリソン君のことですからこちらもきっとお手の物なんでしょうね。


初めての都会に好奇心一杯の瞳を輝かせるサミュエルの息づかい!!駅で自分たちとよく似たおじいさんを見かけてアーミッシュだと思って近づき、ユダヤ教の人だ・・・と知ってびくっとするところなんかも繊細でいいです。その少年サミュエルを演じたルーカス・ハース君はその後パッとしませんが、今はひょろひょろ~~と手足の長い青年になっています。きっとそのうちよい作品に恵まれることでしょう。お母さんをやったケリー・マクギリスは最近はプロデュース業が多いみたいですが、「トップ・ガン」ではトム・クルーズの上官やってましたね。ああいうお色気ムンムンより、この映画みたいな清楚な野暮ったい役の方があっているような気がします。よい意味で。夫を亡くしたあと幼馴染でレイチェルにほのかな想いを寄せる男性がアレクサンダー・ゴドノフ。彼は若くしてなくなってしまいました。苦節の末「ダイ・ハード」のテロリスト役!かっこよかったのにな・・・。残念です。あとは「リーサル・ウェポン」で人気が出る前のダニー・グローバー。んで!今気がついたけどアラルゴン様ことヴィゴ・モーテンセンなんか出てたんですね!今度BSで放送があるので絶対録画してチェックしなくっちゃです。

※アーミッシュ(フリー百科辞典・ウィキペディアより)
アーミッシュはキリスト教の一派の再洗礼派に属している。アーミッシュは電気をつかわない。電話は家庭内に設置しない。原郷はスイス。ペンシルベニアダッチを話すのメノナイト派人々が知られている。 服装はきわめて質素。子供は多少色のあるものを着るが、成人は決められた色のものしか着ない。 洗濯物を見れば、その家の住人がアーミッシュかどうか分かる。ボタンも使わない。 ペンシルバニアのアーミッシュは、日常生活ではきわめて古い時代の技術しか使わない。このため自動車は運転できないが、旅行の際は自動車も飛行機も使用するようである。電気は使用できないが、風車・水車によって蓄電池に充電した電気は利用できる。ペンシルバニアでは馬車にウィンカーをつけることが義務付けられており、この方式で充電した鉛蓄電池を利用しているとされる。あまり詳しく語られることがなく、観光地として生活を覗くことは出来るが、写真を撮ることも撮られることも宗教上の理由から拒否されることが多い。ただしこれらの宗教上の制限は、成人になるまでは猶予される。したがって、未成年ならば自動車運転免許を持つアーミッシュも実在する。成人になる際、アーミッシュであり続けることを拒否することもできるが、ほとんどのアーミッシュの新成人はそのままアーミッシュであり続けることを選択するといわれる。 決まりごとも多く、戒律も厳しい。屋根付きの馬車は大人にならないと使うことを許されず、子供、青年は乗ることができない。馬車(バギー)が唯一のアーミッシュの交通手段で、車の行き交う道をこれで走るため交通事故も多い。 喋る言葉「ペンシルベニア・ダッチ」は、ペンシルバニア風のドイツ語というわけではなく、ドイツ語のかなり古いかたちのものと言われる。ただし、ドイツ人がそれを聞いて今日理解できるものではない。スウェヴィッシュ、スイスのドイツ語圏で話されていた古語が元になっているといわれる。

静謐度 ★★★★★

恋はデジャ・ブ GROUNDHOG DAY '93 米

2005年10月24日 09時09分16秒 | カ行
監督・脚本 ハロルド・ライミス

DATA 英国アカデミー賞・オリジナル脚本賞=ハロルド・ライミス、ダニー・ルービン

CAST ビル・マーレイ アンディ・マクダウェル クリス・エリオット スティーヴン・トボロウスキー ブライアン・ドイル=マーレイ マリタ・ゲラーティ ロビン・デューク

邦題のせいできっと見る人が半減していると思いますが、良質の大人のコメディーです。自信を持ってオススメしちゃいます!


日本でも「啓蟄(ケイチツ)」という虫がゴソゴソ動き出す頃を指す小節がありますが、原題の「GROUNDHOG DAY」というのは北米における立春のような行事のことです。グランドホッグというのは大きな猫くらいの、別名ウッドチャックとして知られている小動物です。冬眠が終わる頃=グランドホッグ・デイ(2月2日)になるといったん目覚めて地上に顔を出し、自分の影をチェックするといわれています。もし影が伸びると、ウッドチャックは「春はまだ来ていない」と判断して再び冬眠に戻り、六週間は出てこない(らしい)。その分春の訪れが遅くなる・・・という言い伝えがあるのだそうです。毎年2月2日(GROUNDHOG DAY)になると開拓時代の正装で、冬眠から覚めたばかりのウッドチャックを連れてきて、みんなしてウッドチャックの影を占うというけったいな儀式をするそうですよ。


このグランドホッグ・デイをバックに展開されるラブ・コメディーというわけです。主人公のビル・マーレイはテレビ局で仕事をしている高慢で嫌味なオトコ。グランドホッグ・デイの取材でペンシルバニア州を訪れ、そこで好きになった女性に言い寄るのですが、なかなかうまく行かず。それもそのはず、彼の性格から発せられる言葉はとても女性を喜ばせるものではなかったんです(笑)。眠りについた翌朝、目が覚めるとなぜかその日は2月2日。始まる一日はまるで昨日と同じこと・・・。「ん?オレは2月2日を2回生きている?」と気づいた彼は、告白をやり直そうとします。昨日の失敗を鑑みて言葉を選んで話すのですが、それでも失敗(笑)。あーあ、やっぱりダメだったか、と眠りにつき翌朝・・・。またまた2月2日。彼は2回の失敗を糧にまたまた告白にチャレンジ・・・。と、これが延々と繰り返されます(笑)。


まー、これがおかしいったらないんですよ。ドラゴン・クエストでもあった(毎日階段から落っこちちゃう・・・というやつ)のですが、必ず同じ水溜りにはまっちゃう(笑)。それもあのビル・マーレイおじさんがやるんですから、何倍も笑えちゃいます。お相手は幾つになっても知的でキュートなアンディ・マクダウェルです。失礼なこと言われてビル・マーレイをひっぱたきます(笑)。監督のハロルド・ライミスはライターとしてのキャリアの方が長くて、「ゴースト・バスターズ」ではアイヴァン・ライトマン監督と組んで大ヒットを飛ばしました。「赤ちゃんはトップレディがお好き」なんかも大人のラブ・コメディでよいですよ(なんてったてサム・シェパードが出ているし!)。・・・にしてもこの人の作品ってどうして邦題に恵まれないんでしょね(笑)。理不尽だわ。

明日があるって素晴らしい度 ★★★★☆