ここで、科学技術がエラい進化を遂げて、シャツ工場においてシャツ製造の労働を全てロボットに置き換えるとどうなるか?ってことを考えてみる。なお、シャツの製造能力や原材料に関わる費用は変わらないものとする。
1時間あたりの労働の価値が2000円で、労働者が1日時給1000円で8時間働いている剰余価値率100%の世界で、100人の労働者が働いている…その労働者を全てロボットに置き換えるのだ!
資本家は、労働者に賃金を払う必要がなくなる。ただし、ロボットに投入する費用は必要だ…これは不変資本に入り込む。ところが剰余価値は労働者の賃金分、可変資本から生まれるので、賃金がゼロになれば、可変資本もゼロになり、剰余価値もゼロになる。
シャツ1枚あたりの資本の有機構成は
不変資本:c 原材料500円+工場設備10円+ロボットα円=510+α円
可変資本:v 0円
剰余価値:m0円
剰余価値率m/vも、v=0で計算が出来ない?労働者を雇わないと、搾取のしようがなくなるのだ…従って、可変資本分の支払いをケチって、労働者を全てロボットに置き換えると、資本家の取り分…剰余価値、利潤がなくなってしまう!
ここで、シャツ1枚当たりのロボットにかかる不変資本αが、90円だとしてみよう。それも結果は同じ…
不変資本:c 原材料500円+工場設備10円+ロボット90円=600円
可変資本:v 0円
剰余価値:m 0円
なお、価値は価値通りに売られるので、この場合のシャツ1枚は、600円で売られることなる。労働者を使って生産していた時は、1510円だった…
もし、他のシャツ工場が、同じような工場設備で、あいかわらず労働者を100人、時給1000円で8時間雇い、1日にシャツを1600枚生産し、1510円で販売していたとしよう。おっ、チャンスだ!ロボットを導入した資本家は、シャツ1枚を1000円で売れば、他のシャツ工場のシャツより価格競争で絶対に有利だ!確実に売れる。
この場合、シャツ1枚あたり1000-600=400円の「利潤」が出る。1日1600枚売って、400×1600=640,000円 労働者を使ってシャツを作っていた時に得られた「剰余価値」800,000円よりは少ないが、なんとか「利潤」は出た…しかし、こんな「やり方」で良いのだろうか?
全ての工場が、シャツ1枚あたり90円かかるロボットを使うようになれば、シャツは1枚600円で売るしかないので、剰余価値ゼロだと絶対に「利潤」なんか出なくなる。
そうすると、資本主義社会である以上、「全ての労働者を、不変資本たるロボットで置き換えることはアリエナイ」という結論になるのだろうか?
まあ、こういったことをいろいろ考えてみようという実験である。
おまけ…江ノ電の写真