たた&にせ猫さんの備忘録

―演劇、映画、展覧会、本などなど、思うままに―

『近松心中物語』新国立劇場中劇場

2018年01月23日 | 日記
     『近松心中物語』新国立劇場中劇場    2018.1.16
        2018年1月10日(水)~2月18日(日)

    作:秋本松代 演出:いのうえひでのり 
    出演:堤真一 宮沢りえ 池田成志 小池栄子 市川猿弥 立石涼子 小野武彦 銀粉蝶他

  -秋本松代原作×蜷川幸雄演出による衝撃の初演(1979年)以来、人々の心に生き続ける不朽の名作をいのうえひでのり演出で新たに描く。忠兵衛(堤真一)・梅川(宮沢りえ)、与兵衛(池田成志)・お亀(小池栄子)、男女二組それぞれの情念の道行き。憧れの戯曲への強い思いとともに、キャスト・スタッフの総力で新たな世界の扉を開く!-

  舞台の幕が開くと背の高い格子窓のある廓の世界。たくさんの赤い風車がつけられ、蜷川さんへのオマージュが感じられます。
  にぎやかな往来、そして鮮やかの花魁道中。
  そこに悪所通いとは無縁の実直な男が、丁稚が拾った1分の金を落とし主に返すために、廓に足を踏み入れます。遊ぶつもりなく帰ろうとしたその時、店に帰ってきた梅川を見かけ、一瞬で引き付けられます。雷に打たれたように恋に落ちるという言葉がありますが、それこそ恋に打たれたという言葉がよりぴったりのような、この時の堤さんの芝居のうまさ。これがなければこの芝居は成立しません。

  梅川と相思相愛の仲になりますが、梅川に身受け話が出、それを阻止すべく、公金に手を付けて、追っ手に追われることになります。
  300両の金の工面、公金に手を付けてでもそうしないと男の恋が立ち行かない、そして見受け話をけって船女郎に落ちたとしても、男に無理をさせたくない、女の情が言わせます。この場面の宮沢りえさんの廓言葉での硬質なせりふ回しのすばらしさ。やはり泣けます。
  そして雪の場面の道行き。なぜか森進一さんの「それは恋」が流れる中の、平幹二郎さんと太地喜和子さんの道行きの映像を見たことがあり、「それは恋」が流れるのかと先入観があったのですが、今回は違いました。
  新国立の高い天井を使った雪の場面の道行きは印象的です。

  忠兵衛と梅川の話に並行して、与兵衛とお亀が描かれます。
  与兵衛は忠兵衛と幼馴染。お亀は幼馴染の与兵衛と結婚できたのですが、与兵衛は大店の婿が重荷で逃げが入っています。そんなダメ夫に対してお亀は一途で、与兵衛が忠兵衛にお店のお金60両を無断で貸し、更に忠兵衛が追っ手におわれると、与兵衛も追われる身になってしまいます。連帯責任の時代。そんな夫と心中を図りますが、ダメ夫の与兵衛は助かってしまいます。
  ダメ夫の心の中に自分以外の人が住んでほしくないお亀。小池栄子さんの芝居のうまさ。目の動きが語ること語ること。舞台での表現の躍動感。小池さんに注目し出してから、一度も裏切られたことがないのがうれしい。

  忠兵衛、梅川の心中で、舞台が美しく終わるのかと思いきや、生き延びてはぐれ坊主になった与兵衛がやはり死に損ない、寿命あるまで生きていくことで舞台は終わります。

  背の高い格子窓の舞台装置が動き、通行人や群衆の動かし方がうまく、舞台が華やかで、かつ話の流れが分かりやすい、いのうえさんらしい演出。

  堤さんは関西出身なので、近松のせりふがすっと耳に入ってきます。
  市川猿弥さんは敵役ですが、歌舞伎役者さんらしい口跡。小野さん、立石さん、銀粉蝶さんが舞台を引き締めます。

  ネットで買ったチケット。ネットで買うといつも良い席が当たらないのですが、今回は片手内の列の真ん中の席。にせ猫さんが今までで一番良い席と。役者さんの表情もよく見え、舞台に入り込んだかのような観劇でした。
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