第3章 北の国へ
『帰ろう故郷へ 帰ろう北の国へ……(以下略)』
(高石友也「北の国へ」)
郡山に着く。いよいよ旅は始まったのだ。駅を降りると何か異様な臭いが鼻を突いた。
まだ旅に出た気分が出ないのは、そんなに目立った物がないからだろうか。空気がすごく冷たい。もう冬が近いのだろうか。それとも北の国に来たからなのか。世間の風邪が身に染みる(?)。
見知らぬ世界を行くのは初めてではない。僕にとってこれまでの生活すべてが見知らぬ世界の連続であった。
人生これまた日々旅にして谷をすみかとする。もう何が起きても、どう変わろうと驚きはしない。ただ、消えていく物を少し惜しがるだけ。
バスに乗りこむ。もう進むだけ。
サジは……じゃなかった……サイは投げられた。バスは走っていく。陽はもうくれかける。猪苗代湖にて一時停車。水が冷たい。そして寒い。浜を歩くと靴に砂がはいる。そして日暮の道をまた再びバスは走る。
第一の旅館に着いた時には、もう日は暮れていた。アメもパラパラ降り出してくる。
旅館のすぐ裏には檜原湖があるという。ここはもう磐梯だという。ここに来た人は磐梯山の名前を3回唱えるという。「バンダイ三唱」とか言って……。(石を投げないでください!)
早速、湖を見に行く者がかなりいる。僕は行かなかった。雨が降ってるし寒かったから。それに暗闇は恐い。閉所恐怖症みたいなところがあって、そして、それに伴う暗闇もあまり好かない。
各部屋に一つずつ炬燵が置いてある。それを真ん中に置き、そしてそのまま、その回りに各自布団を敷く。ジローだけは勝手に布団を敷く。彼はかなり疲れている様子。全然眠っていないとのこと。それでも彼の十八番の落語をみんなに披露する。そしてそのまま彼は眠ってしまった。しかし彼を除いて他の者は眠れない。灯りが消え、布団にもぐったまま、炬燵を中心に、なんとなくいろんな話をする。そんな雰囲気の中で僕もふだん考えている事を話す。反戦の事、『愛』について、宗教について……。まだ僕の心にしっかりとはついてこない。でもおそらく中心をなすであろう事柄、愛とは何なのか、本当の宗教ってどうあるものなのか。僕にとって有意義な話し合いだった。
「私たちの望むものは 与えられることではなく……(以下略)」
(岡林信康「私たちの望むものは」)
『帰ろう故郷へ 帰ろう北の国へ……(以下略)』
(高石友也「北の国へ」)
郡山に着く。いよいよ旅は始まったのだ。駅を降りると何か異様な臭いが鼻を突いた。
まだ旅に出た気分が出ないのは、そんなに目立った物がないからだろうか。空気がすごく冷たい。もう冬が近いのだろうか。それとも北の国に来たからなのか。世間の風邪が身に染みる(?)。
見知らぬ世界を行くのは初めてではない。僕にとってこれまでの生活すべてが見知らぬ世界の連続であった。
人生これまた日々旅にして谷をすみかとする。もう何が起きても、どう変わろうと驚きはしない。ただ、消えていく物を少し惜しがるだけ。
バスに乗りこむ。もう進むだけ。
サジは……じゃなかった……サイは投げられた。バスは走っていく。陽はもうくれかける。猪苗代湖にて一時停車。水が冷たい。そして寒い。浜を歩くと靴に砂がはいる。そして日暮の道をまた再びバスは走る。
第一の旅館に着いた時には、もう日は暮れていた。アメもパラパラ降り出してくる。
旅館のすぐ裏には檜原湖があるという。ここはもう磐梯だという。ここに来た人は磐梯山の名前を3回唱えるという。「バンダイ三唱」とか言って……。(石を投げないでください!)
早速、湖を見に行く者がかなりいる。僕は行かなかった。雨が降ってるし寒かったから。それに暗闇は恐い。閉所恐怖症みたいなところがあって、そして、それに伴う暗闇もあまり好かない。
各部屋に一つずつ炬燵が置いてある。それを真ん中に置き、そしてそのまま、その回りに各自布団を敷く。ジローだけは勝手に布団を敷く。彼はかなり疲れている様子。全然眠っていないとのこと。それでも彼の十八番の落語をみんなに披露する。そしてそのまま彼は眠ってしまった。しかし彼を除いて他の者は眠れない。灯りが消え、布団にもぐったまま、炬燵を中心に、なんとなくいろんな話をする。そんな雰囲気の中で僕もふだん考えている事を話す。反戦の事、『愛』について、宗教について……。まだ僕の心にしっかりとはついてこない。でもおそらく中心をなすであろう事柄、愛とは何なのか、本当の宗教ってどうあるものなのか。僕にとって有意義な話し合いだった。
「私たちの望むものは 与えられることではなく……(以下略)」
(岡林信康「私たちの望むものは」)