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→♂♀←_no.44_2020:拾い子

2020-09-19 14:17:25 | 今月のお薦め_XX.20XX
拾い子_ある小さなスズメの記録_第一章 クレア・キップス 文藝春秋

第一章では生まれて数時間後から、ざっと三か月の様子が書かれています。

1st July(A.D.1940)、ロンドン郊外の小さなバンガロー玄関前におそらく生まれて数時間の目も開いていない雀の雛が落ちていた。フランネルに包み、嘴を何とか開けて使い古しのマッチを挟み、数分ごとに温かいミルク一滴を垂らした。30分ほど経ち、体は冷たいままだったが片方の羽がかすかに身じろぐ。内側と外側を毛糸で覆ったプディング用の鉢の中に雛を入れ、鉢なり温かな衣類乾燥用戸棚の中にしまいつつも諦めの境地で眠る。翌朝、かすかだけれども絶え間ない声が衣類乾燥用戸棚から。

水で湿らせたパンにビーマックスとかたゆで卵の黄身、肝油一滴を混ぜたものマッチの柄の先をとがらせものにつけ、ほんの少しずつ、何度も何度も、そっとのどに入れてあげる。三日目、目が開く。
羽毛は夜半にもっぱら伸び(数日後には)、左翼は正常だが右翼は主羽が背中から小さな扇のように突き立っている感じになっていることが分かる。このままでは飛べるようにならないかもしれない。それでも、両翼を羽ばたかせ走り回っていたが左足も変形して曲がり込んだ蹴爪をもっていることも分かり、ある程度成長しても野に戻せそうにないと考える。

雛として振る舞えるようになってから、巣と見なしているものは全て、決して汚さなかった。(同居人オンリーの安心な状況では)あまり見かけることがない、ひっくり返る動作をよくやっていた。寝返り、訪問客など幾つかの問題から(桶に小さな木を植える作戦は失敗したが)空間たっぷり、床にプティング鉢を置いた鳥籠をダメもとで用意したら拾い子は自分の住処としてくれた(。以降の籠も気に入る)。同居人が家にいるときは籠からの出入り自由状態。鳥籠と同居人のベッドと同居人が拾い子の私的資産。同居人の足を木の幹、指は止まり木、頭は砂浴びのごとく行動の場になったり、一方の耳からもう一方への全力移動や巻き毛にぶらぶら揺れたり幼鳥のアスレチックの場。

成長するにつれ、翼に少しずつの調和が見られた。籠の覆いをとって朝食。その後にベッド一方の端に同居人が座り、もう一方の端に陣取った拾い子が尾を広げ、翼をいっぱいに伸ばし、突撃し相手の手をつつき、一旦退き、再び攻撃するというスズメ同士のやり取りを同居人と行う朝の諍いが行なわれた(。耳たぶ、指の爪の下、目などが弱点であることを学ばれ、毎回、ゴーグルをつけてことになる)。ただし、この朝の時間以外で攻撃をしてくることはなかった。
朝の献立は麻の実、レタス、リンゴに甘いビスケットなどバラエティに富んできた。カナリヤ用の餌、肉や魚も食べたが玉ねぎ風味は嫌った。好物をほんの少しあげて、大急ぎで走って家の別の場所に逃げ隠れるゲームもよくやり、彼は部屋から部屋へ探し回った。(見つけることもあっただろうが)作者が呼ぼうとするだけで発声寸前の呼気を聞きつけるのかやってきて、ご褒美をゲット。

留守中の様子が心配でこっそり覗いたら、同居人が出掛けたことを知ると諦め、食べ物やヘアピン、トランプの札、マッチ棒などおもちゃでやり過ごしていた。けれど、帰宅を知るや否や同居人に夢中。同居人が病気で寝込んだ時は、家にずっといることに喜び、看病に来た人々を叱り飛ばした。
また、客人が連れてきたスズメの子には敵意丸出し。


人間と鳥との間に培われた親密な友情がスタートする最初の三カ月をまとめたく、第一章の長め要約になりました。
第二章以降では、戦禍で人々を癒す様子、拾い子の名前がつく経緯、素敵な鳴き声、青年時代、書籍にある写真についてなどなど。

鳥の知性に関する近年のとらえ方がこの本では既に描かれている。

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