お茶から、新しい世界へ…

その喫茶店は
Ｇ座でも、外れの
裏通りにあるから
気軽な感じで
でも、小綺麗で明るい
気分の良いお店だった
もうみんなは
お茶を、飲んでいる
自分は、最後の方の
手続きだったみたいだ
軽く、挨拶して
おしゃべりに、入る
簡単な、自己紹介
それで、話題は
このスクール、事務所のこと
どうだろうね、と
ひとりは、あの
国民的アイドル事務所
あそこに、所属していたと言う
ただ、もちろん
研修生だっただけで
生き残れなかった
そんな話だけどね
とにかく、あの事務所に
ジュニアとして在籍した
それだけで、なかなかだ
三十代前半かなって
そんな感じだ
多分、８０年代位に
いたのかな
まあ、会社員の自分には
まったく、縁のなかった世界
面白い裏話が、聞けそうだ
自分を、誘ってくれたのは
ＪＲＡの調教助手だと言う
住んでいるのは
トレセンだから
自分以上に、遠くから
来ている訳だ
しかも、聞いたことのある
厩舎所属で、息子なのだと
でも、調教師には
ならないらしい
まあ、そりゃそうだ
アラフォーの壮年で
こんなとこに、浮気とか
あり得ないよね
せっかく、跡を継げるのに
勿体ない話だ
調教師の親父さんは
歯軋りしてそうだな
それから、やっぱり
アラフォーの嘱託会社員
有名老舗のレコード会社
その元社員だ
大歌手のスタッフなども
していたらしい
それが、嫌になって
欧州旅行に行って
戻って、元の会社に
伝手を頼って、再雇用
嘱託に、格下げでね
お気楽な独身者らしい
随分、甘い世渡りだな
まあ、他人のことは
言えないけど
もう、ひとりは
アラサーだったかな
よく覚えていないけど
だから、いちばん
普通な子だったのだろう
結構、話は弾んだ
よく分かったのは
自分も、含めて
ここに来た連中に
共通しているのは
とにかく、甘い
半ば、社会不適合者
社会の枠組みに
きちんと、はまれないから
いや、はまっていても
なんとか、抜け出したい
そんな、ふらふらした思いの
その果てに
今、ここに
辿り着いている
そんな印象だった
でも、自分も
社会不適合で、こうして
迷走し始めていたから
ちょうど、お似合いの
仲間たちだったのだろう
まあ、甘いおまえには
居心地は良さそうだ
それだけで、良い…
　　　　　　　　to be continued