映画は静かに始まる。彼の住むテネシー州の静かな川の畔。静かで美しい風景。彼にとってこの場所は永遠に失われて欲しく無い場所、そして彼の子供達やその次の世代にも受け渡し続けたい風景なのだ。
ゴア氏の片手には常にアップル社の「PowerBookG4」があった。彼が持つと12インチなのかと思うほどだが、15インチのモデルだ。彼はこのマックのハイエンドマシンに膨大な情報を詰め込んで、スライドを作成し、スライドショーによる講演を続けている。
その講演の冒頭で、誰もが見たことがある、月から昇る美しい地球の姿が映し出される。米国のアポロ計画で、8号のクルーが宇宙から写したものだ。時は1968年のクリスマスイブ。その地球は実に美しいものだ。
そこから彼のこの地球の重大な危機についての「不都合な真実」が語り始める。
冒頭でマーク・トゥエインの言葉が印象的だ「災いを引き起こすのは、”知らないこと”ではない。”知らないのに知っていると思い込んでいること”である」。もう誰も知っている「地球温暖化」という言葉。しかし、その真実をあまりに知らずに漠然とその重大な危機を”知っているつもり”になって日々過ごして無いだろうか。これこそが最大の災いなのだ。
なぜならこの事が、「不都合な真実」だからなのだ。「自分たちの生活を変えないといけない、そんな面倒な事は少しでも後回しに出来ないものか・・・」そんな思いが、この真実を「不都合なもの」にしているのではないか?
ゴア氏のプライベートな話題も盛り込みながら、しかし、ほとんどは彼の講演の内容をその豊富なデータと分かりやすいスライドショーによって、我々のような科学者でも何でもない素人でもなるべく分かりやすく、この驚くべき事実を淡々と説明していく。彼が言うように信頼出来るデータを用い、それを客観的な事実のみで表現していく。だからこそこの事実は恐ろしいものとして私たちに襲いかかってくる。
例えばこんな以下のような事実が印象的に語られた。
・南極で採取され調査された65万年前から現在までの二酸化炭素濃度の推移をみて、現時点の濃度が65万年の間でずば抜けて高い濃度である事
・1860年以降でもっとも気温が高かった年は2005年である
・2004年は歴史的なハリケーン(台風)の年だった。米国では4つもの大型ハリケーンが襲い、日本では史上最多の10の台風が上陸した。そして、これまで「南大西洋にハリケーンが来ることはありえない」と書かれていた科学の教科書は書き換えを余儀なくされる。この年史上初めてのハリケーンがブラジルを襲った。この事実は海水の気温上昇がもたらしたものだ(そしてこの翌年に米国はあの巨大ハリケーン「カトリーナ」で未曾有の被害を受けた)
・キリマンジャロの雪はもうほとんど無くなっている。万年雪が消えたのだ
・世界中のあらゆる氷河がこの50年で完全に様変わりしている写真が比較して映し出される
・世界中の都市で記録的な豪雨と熱波が観測されている。これは日本でも都市の人間は体験しているはずだ
・北極と南極の氷床が大規模に溶け出している。北極では北極クマが溺死するという異常事態も確認されている
・この30年の間に新しいウィルス性の病気が次々と災いをもたらしている。これは温暖化でこれらのウィルスが活発化しているからだ
・温暖化による海面上昇は加速してきている。最悪のシナリオではあと10年で、世界の様々な大都市圏が水没し、1億以上の人々が家を失う
次々と不都合な真実がゴア氏によって語られる。
映画の中では、こうした地球温暖化の事実に異論を唱える勢力や、人々の認識についても描かれている。
かなり、ブッシュ大統領についての「ネガティブ・キャンペーン」的な描かれ方もしているので、政治的な意図を感じる人もいるだろう。何せそのブッシュ大統領に僅かの差で負けた元大統領候補の講演だから。
しかし、そういう部分だけで見てしまっては、やはり「不都合な真実」から目を逸らしているのと同じ事になると思う。
炭素排出量では米国はダントツの存在だ。一人当たりの排出量では、発展途上国は中国も含めて1トンを遙かに切っているのに対し、日本、EU、ロシアが2トン強、そして米国だけがダントツの5トン強だ。
その米国が京都議定書の批准を拒否している。ただ、米国では州や都市レベルで批准しているところもあるというのは初めて知る事実だった。
そして、ブッシュ大統領が批判もしていたが、環境問題と経済問題は相反するという意見にも異論を唱えていた。
面白かったのは自動車産業の現状でこの部分に反論していたところだ。
驚いたが、日本は燃費の基準で世界トップの19km/リッターであるが、米国はそのはるか下である。そして、皮肉にもその日本の自動車メーカーのトヨタ、ホンダが時価総額を上げているのに対して、フォード、GMは大きく落としている。つまり優れた燃費の自動車を製造している日本のメーカーが経済的にも好調だという例を挙げていた。
(ちなみに映画の最後にいろんな温暖化防止の為の提案の中に、「ハイブリット車に乗りましょう」というのがあった。私はトヨタのプリウスに乗っているので、何かうれしかったりして・・・)
ゴア氏は最後の方で、環境問題を政治問題化しようと提言している。政治家であるのでもっともな意見だと思うが、この部分は当初は違和感を感じたが、その後改めて考えればこれは大事な提言なのかもしれないと思った。なぜなら、今、もっとも倫理観が失われているのが政治の世界だと思ったからだ。その根本を変えなければ、この問題の解決にならないと思ったからだ。
これは米国だけの問題じゃない。日本も、EU諸国も、ロシアもそしてこれから台頭してくる中国やインド、ブラジルという国においてもこの政治的な問題は避けて通れない。まずは有権者である国民一人一人の政治的な行動に懸かっているのでないかと思った。1枚の写真が映し出された。ハイチとドミニカ共和国との国境である。ハイチ側の山はほとんどの森林が伐採されているのに対し、ドミニカ共和国側は森林に覆われている。これは両国の政策の違いが如実に表れている証拠だ。
講演の最後に1枚の宇宙からの写真が映し出された。これは故カール・セーガン博士が、宇宙探査機が太陽系を出た時に一度だけ地球側にカメラを向けて地球を写しものだった。
そこには小さなしかしながら青い点が写し出されていた。これが私たちの唯一の故郷なのだ
今、地球全体が危機に陥り、我々人類がそこで生きる為にその文明の能力が問われている。
ゴア氏は言う「私は、これは倫理(モラル)の問題であると信じている」
自分以外の子孫の将来の為に何が出来るのか、絶望では無く、その行動が待ったなしで問われている。
ゴア氏の片手には常にアップル社の「PowerBookG4」があった。彼が持つと12インチなのかと思うほどだが、15インチのモデルだ。彼はこのマックのハイエンドマシンに膨大な情報を詰め込んで、スライドを作成し、スライドショーによる講演を続けている。
その講演の冒頭で、誰もが見たことがある、月から昇る美しい地球の姿が映し出される。米国のアポロ計画で、8号のクルーが宇宙から写したものだ。時は1968年のクリスマスイブ。その地球は実に美しいものだ。
そこから彼のこの地球の重大な危機についての「不都合な真実」が語り始める。
冒頭でマーク・トゥエインの言葉が印象的だ「災いを引き起こすのは、”知らないこと”ではない。”知らないのに知っていると思い込んでいること”である」。もう誰も知っている「地球温暖化」という言葉。しかし、その真実をあまりに知らずに漠然とその重大な危機を”知っているつもり”になって日々過ごして無いだろうか。これこそが最大の災いなのだ。
なぜならこの事が、「不都合な真実」だからなのだ。「自分たちの生活を変えないといけない、そんな面倒な事は少しでも後回しに出来ないものか・・・」そんな思いが、この真実を「不都合なもの」にしているのではないか?
ゴア氏のプライベートな話題も盛り込みながら、しかし、ほとんどは彼の講演の内容をその豊富なデータと分かりやすいスライドショーによって、我々のような科学者でも何でもない素人でもなるべく分かりやすく、この驚くべき事実を淡々と説明していく。彼が言うように信頼出来るデータを用い、それを客観的な事実のみで表現していく。だからこそこの事実は恐ろしいものとして私たちに襲いかかってくる。
例えばこんな以下のような事実が印象的に語られた。
・南極で採取され調査された65万年前から現在までの二酸化炭素濃度の推移をみて、現時点の濃度が65万年の間でずば抜けて高い濃度である事
・1860年以降でもっとも気温が高かった年は2005年である
・2004年は歴史的なハリケーン(台風)の年だった。米国では4つもの大型ハリケーンが襲い、日本では史上最多の10の台風が上陸した。そして、これまで「南大西洋にハリケーンが来ることはありえない」と書かれていた科学の教科書は書き換えを余儀なくされる。この年史上初めてのハリケーンがブラジルを襲った。この事実は海水の気温上昇がもたらしたものだ(そしてこの翌年に米国はあの巨大ハリケーン「カトリーナ」で未曾有の被害を受けた)
・キリマンジャロの雪はもうほとんど無くなっている。万年雪が消えたのだ
・世界中のあらゆる氷河がこの50年で完全に様変わりしている写真が比較して映し出される
・世界中の都市で記録的な豪雨と熱波が観測されている。これは日本でも都市の人間は体験しているはずだ
・北極と南極の氷床が大規模に溶け出している。北極では北極クマが溺死するという異常事態も確認されている
・この30年の間に新しいウィルス性の病気が次々と災いをもたらしている。これは温暖化でこれらのウィルスが活発化しているからだ
・温暖化による海面上昇は加速してきている。最悪のシナリオではあと10年で、世界の様々な大都市圏が水没し、1億以上の人々が家を失う
次々と不都合な真実がゴア氏によって語られる。
映画の中では、こうした地球温暖化の事実に異論を唱える勢力や、人々の認識についても描かれている。
かなり、ブッシュ大統領についての「ネガティブ・キャンペーン」的な描かれ方もしているので、政治的な意図を感じる人もいるだろう。何せそのブッシュ大統領に僅かの差で負けた元大統領候補の講演だから。
しかし、そういう部分だけで見てしまっては、やはり「不都合な真実」から目を逸らしているのと同じ事になると思う。
炭素排出量では米国はダントツの存在だ。一人当たりの排出量では、発展途上国は中国も含めて1トンを遙かに切っているのに対し、日本、EU、ロシアが2トン強、そして米国だけがダントツの5トン強だ。
その米国が京都議定書の批准を拒否している。ただ、米国では州や都市レベルで批准しているところもあるというのは初めて知る事実だった。
そして、ブッシュ大統領が批判もしていたが、環境問題と経済問題は相反するという意見にも異論を唱えていた。
面白かったのは自動車産業の現状でこの部分に反論していたところだ。
驚いたが、日本は燃費の基準で世界トップの19km/リッターであるが、米国はそのはるか下である。そして、皮肉にもその日本の自動車メーカーのトヨタ、ホンダが時価総額を上げているのに対して、フォード、GMは大きく落としている。つまり優れた燃費の自動車を製造している日本のメーカーが経済的にも好調だという例を挙げていた。
(ちなみに映画の最後にいろんな温暖化防止の為の提案の中に、「ハイブリット車に乗りましょう」というのがあった。私はトヨタのプリウスに乗っているので、何かうれしかったりして・・・)
ゴア氏は最後の方で、環境問題を政治問題化しようと提言している。政治家であるのでもっともな意見だと思うが、この部分は当初は違和感を感じたが、その後改めて考えればこれは大事な提言なのかもしれないと思った。なぜなら、今、もっとも倫理観が失われているのが政治の世界だと思ったからだ。その根本を変えなければ、この問題の解決にならないと思ったからだ。
これは米国だけの問題じゃない。日本も、EU諸国も、ロシアもそしてこれから台頭してくる中国やインド、ブラジルという国においてもこの政治的な問題は避けて通れない。まずは有権者である国民一人一人の政治的な行動に懸かっているのでないかと思った。1枚の写真が映し出された。ハイチとドミニカ共和国との国境である。ハイチ側の山はほとんどの森林が伐採されているのに対し、ドミニカ共和国側は森林に覆われている。これは両国の政策の違いが如実に表れている証拠だ。
講演の最後に1枚の宇宙からの写真が映し出された。これは故カール・セーガン博士が、宇宙探査機が太陽系を出た時に一度だけ地球側にカメラを向けて地球を写しものだった。
そこには小さなしかしながら青い点が写し出されていた。これが私たちの唯一の故郷なのだ
今、地球全体が危機に陥り、我々人類がそこで生きる為にその文明の能力が問われている。
ゴア氏は言う「私は、これは倫理(モラル)の問題であると信じている」
自分以外の子孫の将来の為に何が出来るのか、絶望では無く、その行動が待ったなしで問われている。
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国や企業に求めることも是非進めて欲しいと思いますが、自分にもできることもやっていこうと思います。
知っていることと、実行することがリンクしていけると良いですね。
この冬、信州は雪が少ないです。今のところ。夏に水不足になるか、梅雨に災害を起こすほどの大雨が降るか、どちらかになるかもしれないと危惧しています。
これも地球温暖化による、気候の変化がもたらす現象ですよね。
例えば、在宅でも充分出来る仕事や直行直帰が出来れば、通勤での車の燃費を抑えたり出来ますよね。
雪が降る地方は、やはり雪不足が深刻のようですね。今日もスキー場で雪不足で大打撃という報道があっていました。
福岡だと突然の豪雨とかの水害と渇水ですね。
身近な問題として温暖化の影響は出てきているんですね。
でも悲観ばかりせず、まずは自分で出来る事、そして企業が取り組める事、そして、我々有権者の行動で政治を変える事と、出来る事をやっていけば、温暖化を防ぐ事が出来るという希望のプロセスも映画の最後には示されてました。
映画の最後の方で、確かアフリカの祈祷師の言葉だったと思います。「祈る時には、行動も伴わなければいけない」いい言葉だと思いました。
ちなみに私はハイブリット車で通勤しております(笑)