昨年観た映画。
黒木華,野村周平主演のドラマ、“ビブリア古書堂の事件手帖”。
原作は三上延氏の同タイトルの小説。
キャッチコピーは、“本がつなぐ過去と今 心揺さぶる感動ミステリー”
本当は観る予定ではなかった映画。
別の映画を観るつもりだったのに、上映時刻に間に合わず、
次の上映時刻まで待つのも時間がもったいない。
でもせっかく映画館に来たのだから、他に面白そうな映画・・・。
そうして観ることになったのが、このビブリア古書堂の事件手帖。
なんだか見覚えのあるタイトル。
前にも同じタイトルの映画が上映されてなかったっけ?
タイトルの雰囲気からして、アニメ映画か何かかな?
そんなことを考えながらチケットを購入する。
主演が黒木華っていうのと、文学がメインのミステリーっていうんで、
なんとなく面白そうだなと思って鑑賞に臨む。
母と一緒に亡き祖母の部屋を片付けていた大輔(野村周平)。
本棚に古い本がずらっと並んでいる。
そのうちの一冊を手に取り、幼少期の記憶がよみがえる。
とても優しかった祖母だったが、ただ一度だけ激怒されたことがあった。
それが、この本を手にしたのを見つかったときだった。
そのときのトラウマで、大輔は活字が読めなくなってしまった。
当然、本も読めず、教科書の音読も苦手だった。
なぜ祖母はあんなに怒ったのか?
ふとその本を手にとって開いてみる。
夏目漱石の詩集、「それから」。
何気なくページをめくると、中から一枚の古い写真。
うつろげに外を見つめる美しい若い女性が写っていた。
そして巻末には「夏目漱石」と、本人直筆?のサインがあった!
漱石のサインと一緒に、贈呈者の「田中嘉雄」と聞き慣れない人物の名前もあった。
大輔は本の処分も兼ねて、古書店をたずねる。
美しい黒い長髪に、透き通るような白い肌をした若くて美しい女性の店主が居た。
店主の名は、栞子(黒木華)。
内向的で極度の人見知り、人付き合いが苦手だが本の知識と情熱は凄まじく、
ふだんは他人と目も合わせられずたどたどしい口調なのに、
本のことになると とたんに饒舌になり、語りだすと止まらない。
そんな栞子に大輔は漱石の詩集に書かれていた例のサインを見てもらう。
本の状態やサイン、そして挟まれていた若かりし頃の祖母の写真を見て、
サインの真贋のみならず、贈呈者である田中嘉雄の正体から、
祖母との関係まで、それらを全てを瞬く間に推理していく栞子。
あっけにとられる大輔だったが、栞子に惹かれて強く興味を抱く。
ちょうど自身は職探し中、栞子は体を壊していて力仕事ができない。
帰宅した栞子の妹、文香(桃果)の強引な推挙もあり、
大輔は本が読めないくせに古書店で働くことに。
栞子の推理は、祖母と田中嘉男との禁断の恋だった。
大衆食堂のおかみとして働いていた若き日の祖母、絹子(夏帆)。
そこへふらりと立ち寄ったのが、小説家志望の青年、嘉雄(東出昌大)。
嘉雄は食後、店を出る際に頭をしたたかに打ち付けて気を失ってしまう。
意識を取り戻すまで看病してくれていた絹子。
礼を言って、そそくさと立ち去る嘉雄だったが、絹子に惚れてしまう。
だが、相手は食堂のおかみ。
子どもはまだのようだが、れっきとした旦那が居る。
それでも、嘉雄は食堂に通い詰め、その都度、絹子に小説を貸す。
絹子もまた、教科書以外で小説を読んだことがなかったため、
嘉雄が勧めて貸してくれる小説の虜になった。
仕事ずくめの毎日のなか、暇をみつけて嘉雄が貸してくれた小説を読み、
そして嘉雄と感想を交わすのが楽しみになっていき、
いつしか、絹子もまた嘉雄に惹かれてしまう。
ふたりは禁断の恋に落ちてしまう。
大輔は祖母のそんな過去を知りながらも、古書店での仕事を始める。
本に詳しくないので、配達や買い取り商品の引き取り、
運搬作業など力仕事や運転業務がメインのアルバイト。
それでも、栞子ひとりではできなかったことなので、大輔は重宝される。
古書の交換会にも二人で行く。
本に興味のなかった大輔。
並んだ古い本、それに対して目を輝かせる本の愛好家たち。
栞子も饒舌に並んだ本を説明してくれる。
そこで、ネットで古書販売をしているという稲垣(成田凌)という男に出会う。
栞子と稲垣とは以前から知り合いのようで、親しく会話を交わすふたり。
それを見て、どこか嫉妬してしまう大輔。
本に詳しくないので二人の会話には割って入ることができない。
稲垣は自身が所有する貴重な漫画を盗まれてしまう。
買い取り希望のとある客、査定をしている最中に盗られたという。
だが、その男が置いていった伝票を元に、
栞子がまたも推理して、犯人の人物像や居場所を特定していく。
見事、犯人の居場所を突き止める。
だが、稲垣は漫画を盗んだ犯人の動機を聞くと、そのままその漫画を貸すのだった。
栞子の元へ脅迫メールが届く。
相手は“大庭葉蔵”を名乗る人物。
栞子の所有する、太宰治の「晩年」の初版を譲って欲しいといってきていたが、
それを断ったため、脅迫メールを送りつけてきた。
大庭葉蔵を名乗る人物は、太宰治を買い漁るマニアとして有名な人物で、
古書交換会のときも、その話題が挙がっていたほど。
すでに雨の日に階段から突き落とされ、怪我をしていた栞子。
犯人は脅迫してきた、大庭葉蔵に違いない。
栞子が祖父から引き継いだ大切な本。
栞子と貴重な「晩年」を守るために大輔は必死になる。
だが、犯人は二人をあざ笑うかのように動きを先読みし執拗に襲ってくる。
追い詰められる二人。
はたして二人は「晩年」を守りきることができるのか?
・・・イマイチだったかな。
祖母の過去の話だけかと思ったら、現代にも事件が起きちゃって、
そのきっかけがまた、祖母の過去と因縁があるっていうんで、
偶然とはいえ、子孫である主人公にそれが降りかかるっていう、なんとも複雑なお話。
夏目漱石は「坊っちゃん」と「吾輩は猫である」くらい。
太宰治はけっこう読んだつもりだったけど、「晩年」も「人間失格」も読んだことがない。
それらを読破していて、劇中たびたび出る引用が理解できれば、もっと楽しめたかもしれない。
日本人が読むべき純文学というか、あまりそういった本を読んでいない。
学生時代はもっぱら漫画や、ファンタジーもののライトノベルズだったし、
社会人になってからは、経済白書とか世界情勢とか実用書とかそんなんばっかり。
ストーリーはイマイチだと思ったけれど、主演のふたりは良かったと思う。
栞子を演じた黒木華は良かった。
おっとりしているが、本のことになると豹変する実は怖いひと。
的確な推理で鋭いくせに、周りには鈍感で、大輔や妹に迷惑をかける。
なかなかにいいキャラクターをしていた。
この後に観た映画、億男にも主人公の妻役で出演していたが、
栞子とはまったく違うキャラで、黒木華の凄さを改めて知った。
まあ一番凄かったのは、銀の匙の時の高飛車なお嬢様役かな。
大輔を演じた野村周平も良かった。
名前は見たことあるけれど、どんな俳優さんだったっけ?
そんなふうに思っていたら、ビリギャルに出てた、
医者の親に反抗するダサいヤンキー?役だった子だ!
本に対する知識のなさとは裏腹に、栞子に対する好奇心と恋心、
途中から現れた恋のライバル?への嫉妬と焦り。
思いとちぐはぐに動いてしまう、大輔の不器用さが分りやすくって観ていて面白かった。
パッと見、ジャルジャルのエラ張ってる方に見える。
成田凌ってひとは初めて見た。
老若問わず、女性に大人気の俳優さんらしく、
映画が終わった後、周り近所のオバちゃんやおねいさんたちは、彼の話で持ち切りだった。
劇中は、ひょうひょうとしていてどこか鋭いミステリアスな役。
口ひげに帽子の出で立ち、ラストの猟奇的な演技も手伝って、ご婦人方のハートを掴んだのだろう。
わしは気に入らんけどね。
いや、男だからね。
そういえばこの映画を観た劇場ではパンフレットが完売していた。
ジャニタレやアイドルが出演している作品ならば、たまにあることだけど、
この映画にはそういったひとは出ていなかったはず・・・?
もしかしたら、この成田凌ってひとかもしれない。
過去パートで禁断の恋を演じた、夏帆と東出昌大のふたりも良かった。
夏帆ってすっきりとした顔立ちで快活なイメージだったので、
こういうドロドロした役は似合わないと思ったのだけど、
それがなかなかどうして、しっとりと演じていた。
東出昌大はもう雰囲気そのままの当たり役。
最近は、永山絢斗と区別がつかない。
感想の冒頭にも書いたけれど、文学に精通しているひとなら楽しめたかもしれない作品。
詳しくなくとも、大輔が素人ってことで、
栞子も稲垣も、引用した作品をきちんと教えてくれて、
その意味もきちんと語ってくれるので、ワケ解らない!とはならない。
だけど、自身が知っていりゃ、もっと楽しめたはず。
クイズ番組なんか見ていて、出演している東大生やインテリ芸能人を相手に、
負けじとガンガン回答していくのだけど、文学などから出題されるととたんに黙ってしまう。
そんなとき、圧倒的に読書が足りないな・・・と痛感する。
恥ずかしくないよう、有名どこは読んでおきたいところだけど、なんだか食指が動かないのよね。
大輔みたく、栞子さんみたいな方に勧められれば読むかも。
観終わった後、無性にカツ丼が食べたくなった。
劇中、絹子が嘉雄に出すカツ丼。
あれが美味そうで美味そうで。
また東出昌大もこれを美味そうに頬張る。
ただ、このところ胃腸の調子が芳しくなく、揚げ物は控えているのよね。
若い頃はカツ丼も天丼も得盛でがっつり食っていたのになあ。
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