夏真っ盛り。夏といえば海。そして花火。これらを題材にした曲は数多い。海なら最近ではオレンジレンジのロコローションや上海ハニー、ケツメイシの夏の思い出。しかし私が最も夏を感じる曲といえば、もう一つのキーワード、花火をテーマにしたDREAMS COME TRUEの「あの夏の花火」だ。ドリカムは1989年にデビューし、1990年に「笑顔の行方」でブレーク、その後はヒット曲を連発し、デビューから17年経つ現在でもシングルは常にトップ10入り、最新アルバムも1位になるなど人気を維持している。ドリカム最大の魅力といえば吉田美和のボーカルだろう。aikoや大塚愛などの女の子っぽい可愛い声や歌い方が好きな人はもしかしたら苦手かもしれないが、歌唱力は間違いなく日本でトップクラス。奥の深い声も癒される。ドリカムといえば「未来予想図Ⅱ」などアルバム曲にも名曲が数多くあるが、「あの夏の花火」も1992年リリースの5thアルバム「The Swinging Star」収録のアルバム曲である。ちなみにこのアルバムはセールス300万枚を突破し、当時のアルバム歴代セールス1位を記録した。
イントロダクションのあとの1曲目として収録されているこの曲は、コーラスとともに始まるイントロから、曲の間中花火の音が頭の中に聞こえてくるような感覚を覚えさせる。Aメロは目の前の風景を見ながら過去を思い出している感じ。
遠くから胸震わす音が聞こえてくる 蒸し暑い闇の向こうが焼けている
閃光が呼び覚ましたあの夏の花火を 川風が運んだ花火の匂いを
夏祭りの情景が目に浮かぶ描写がすばらしい。そしてBメロをはさんでサビ。
今頃あなたもどこかで思い出してるの? あの日のこと
ここから一気に2番の回想シーンへ入る。そしてBメロ。
川に落ちる花びらが 消えてく間際に立てる音が切なくて
目をそらせなかった
この歌詞はまさに絶品。場面が頭に浮かぶだけでなく、本当に「パチパチッ」という音が聞こえるよう。誰でも聞いたことがあるであろうあの音を、こんなに繊細に表現できるなんて。そして大サビ。
今頃あなたも誰かと思い出してるの あの夏の花火を
今年もきれいね あの日と同じように輝く花たち
今頃あなたもどこかで 散ってく季節を生きてる 今頃誰かと
ハモリが美しいラストのサビ。最後の歌詞は本当に切ない。フェイドアウトしていくアウトロは夜空で花火がぱらぱらと消えていく様を思い出させる。歌詞の内容は花火を見ながら昔の恋人を思い出すというものだが、この歌詞を聴いて自分も同じような経験をしたことがあると言う人は大勢いるのではないだろうか。花火を見ている彼女は決して未練がましく昔の恋人のことを思い出しているのではない。ただ美しくも儚く咲き散る花火を見て、少し感傷的な気持ちになることは誰にでもあるだろうし、だから多くの人がこの曲に惹かれ共感を覚えるのだと思う。
歌詞もメロディーも編曲も、夏祭りと花火の雰囲気をありありと感じさせるこの曲。シングルでないが故にあまり知られていないが、間違いなく夏を代表する名曲の一つ。すでに14年の月日が流れているが、この曲の最大の魅力は今も変わらない。聞いているとどうしようもなく、花火を見に行きたくなる。