Nueva York Life -Refuse Passive Interest-

某サイトのブログを使ってたのですが、ある事情で、こちらで再出発させてもらいます。

Biutiful

2011-02-05 15:53:19 | 映画
このイナリトゥの新作が今までと決定的に違うのは、脚本にギエルモ・アリアガが参加していないところだろう。前作『Babel』にて喧嘩別れした後、この新作に、ギエルモ・アリアガは関わっていない。そういう意味で、この映画は、イナリトゥが、アリアガなしでやっていくことができるかどうかの試金石でもあるのだ。タイトルからして、アリアガなしだったら、英語の綴りも、正しく表記できんのか?と、冗談はさておき。この映画は去年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品され、ハヴィエル・バルデムが男優賞を受賞している。また、今年のアカデミー賞では、ハヴィエル・バルデムが主演男優賞に、そして、外国語作品賞にノミネートされている。ノミネート前には、イナリトゥの『21 Grams』に主演したショーン・ペンが、ハヴィエル・バルデムの演技は、『ゴッドファーザー』のマーロン・ブランド以来最高のものだと絶賛し、ノミネートを後押しした。

この映画の舞台はスペインのバルセロナ。主人公は二人の幼い娘と息子を育てているが、体調不良に気付き、検査を受ける。結果、余命幾許も無いことを知る。別居している妻が訪れ、関係を修復に向かう。この映画は、これまでのイナリトゥ作品同様、貧困層で暮らし、家族の問題で苦慮しているキャラクターが描かれる。でも、何か物足りなさを感じる。全体的に、キャラクターへの同情が漂っていて、ストーリーが平坦に感じられてしまうのだ。イナリトゥのスタイルとしては、序盤は勢いに乗って緊張感を高めていき、最後に感傷を漂わせていた。この映画は、緊張感が一向に高まっていかないし、退屈なヨーロッパ映画のように、やけに冗長に感じられる。やはり、イナリトゥは、詩的な映像と、テンションを高めて爆発させることに長けた人。ストーリーは、アリアガに頼るところが大きかったのだ。ストーリー構成の不慣れを露呈してしまっている。アリアガには、イナリトゥ作品の他に、隠れた傑作であるトミー・リー・ジョーンズ監督の『The Three Burials of Melquiades Estrada』がある。アリアガは、イナリトゥなしでも、いい作品を作れるが、イナリトゥは、アリアガ無しでは、難しい

ただ、イナリトゥはやはり、俳優から演技を引き出すのには長けている。オスカー俳優であるハヴィエル・バルデムをカメラは執拗にじっくりと、そのキャラクターの哀しみを引き出していく。だから観た後、ストーリーよりハヴィエル・バルデムの姿の方が印象として残る。また、ハヴィエル・バルデムの心象を表すかのようなバルセロナの街並みを絶妙に捉える撮影を担当しているのが、イナリトゥ作品には欠かせないロドリゴ・プリエト。病院の窓から、ハヴィエル・バルデムが望むバルセロナの光景は、鑑賞後も強く、印象に残っている。アリアガがいなくても、プリエトが残っていたのは、せめてもの救いだったのではないだろうか。このプリエトだが、アカデミー賞にノミネートされたのは、意外なことに『Brokeback Mountain』での一回のみ。ロジャー・ディーキンスの無冠と並んで、アカデミー撮影賞の不思議の一つだと言えるだろう。

総括すると、ストーリーが、ぎこちなく展開していくのが、やはり目立つ。イナリトゥは、映像で魅せることについては、まだまだ健在だが、脚本については、やはり手馴れた人を見つける必要があるだろう。


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