Nueva York Life -Refuse Passive Interest-

某サイトのブログを使ってたのですが、ある事情で、こちらで再出発させてもらいます。

Barbara

2012-12-24 19:35:17 | 映画
この映画を観て、ヨーロッパの風景って、どうして、ここまで自転車を乗るシーンに趣きを感じさせることができるんだろう、と思わされた。それは、今年の初めに観たダルデンヌ兄弟の『The Kid with a Bike』のシーンが記憶に残っているからだろう。この映画でも、タイトル・ロールのバーバラが自転車で通勤している。例えば、車が走るシーンをハリウッド映画に例えるなら、自転車のシーンはヨーロッパ映画の魅力を表しているのかもしれない。アメリカでは、自転車は、スポーツのイメージが強く、日常的な移動手段として生活感を出すことは難しい。スピードを売るせっかちなハリウッド映画に対して、ゆっくりな時の流れの中に、粋な演出をさりげなく見せることを得意とするヨーロッパ映画。目立とうとさせない、だからこその良さを見せる。この映画のラストシーン。言葉は交わされることはない。ただ、キャラクターの視線と表情だけで、会話が交わされる。それで説明は十分だし、完結している。このラストシーンがあるから、心地いい余韻を感じながら、劇場を後にできる。

舞台は1980年代の東西分かれた西ドイツの片田舎。医師であるバーバラが、その田舎の病院に赴任してくる。彼女には秘密があり、監視されている。『善き人のソナタ』と似たシチュエーションだが、この映画が描いているのはもっと地味。バーバラは美貌もあることから、院長であるアンドレは、想いを寄せていく。ただ、このアンドレはシングルであり、バーバラに興味がある素振りを見せるも、強引に彼女を押し倒したりせず、ゆっくりと距離を縮めていく。バーバラも、そんなアンドレの人間性を見出していくという、今のハリウッド映画ではありえない、古典的でストイックなラヴ・ストーリーが展開される。焦らず、ゆっくりと見せていくミステリー。出演者も知らない人ばかりだし、地味な田舎が舞台なのに、気品に溢れて、鑑賞後に芳醇な味わいに満たされる、ヨーロッパだからこそ作れる映画だと思う。