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蛭子能収さんの現在

2021年10月28日 | 社会
2020年の夏に放送された健康情報番組の中で、アルツハイマー型とレビー小体型の認知症を併発していると診断された漫画家の蛭子能収さん(73)。テレビの仕事はセーブしつつも、今春には書籍を出版しました。二人三脚のマネジャーとの掛け合いで取材現場を和ませながら、柔らかな表情で認知症とともにある日々を語ってくださいました。

蛭子能収さんの現在「認知症になっても変わらない」インタビュー


──こんにちは。顔色が良くて元気そうに見えます。最近、体調はいかがですか?
蛭子さん 
すごくいいですよ。もともとお酒とタバコはやらないし、3食ちゃんと食べているし、健康体なんです。
──早寝早起きですか?
蛭子さん 
けっこう寝るのは早くて、だいたい夕方6時ぐらいかな。日が落ちたら寝るという感じで、朝は 7時半くらいには起きています。
マネジャー 寝すぎですよ。
蛭子さん 
そう? 寝すぎかな。
──熟睡できていますか?
蛭子さん 
熟睡できることのほうが多いです。気持ちよく眠れるのはいいですよね。今日もね、朝起きたらいいお天気で、ラジオを聴いて。
──ラジオがお好きですか?
蛭子さん 
普段はテレビを見ることが多いかな。普通にテレビを見たり、動画サイトで昔の自分の映像を見て笑ったりして、時間潰しみたいなことをしています。自分が映っているのは、やっぱりちょっと恥ずかしい。でも自分が笑って見ている人も笑ってくれるなら、すごく嬉しいです。


──蛭子さんは2020年の夏に初期の認知症と診断されました。その頃、自分で「忘れっぽくなったな」とか何かおかしいと思うことはありましたか?
蛭子さん う~ん、むずかしいな。
マネジャー もともと忘れっぽいというか、昔から人の名前を覚えるのが苦手ですよね。
蛭子さん そうなんだよね。

──たとえば何か不便を感じるなど、診断前と後で生活は変わりましたか?
蛭子さん 
自分としては全然変わっていません。不便もあんまり感じないです。(マネジャーに)なんかそういうことあった?
マネジャー いろいろ忘れていることはありますが、ちょっと触りを言えばすぐに思い出して普通に話ができるので、僕もそんなに変化を感じていません。
──認知症になってから嫌な思いをしたことはありますか?
蛭子さん 
それもないですね。俺はあんまりいろんなことに怒ったりしないし、たぶんすごくおとなしいほうだと思います。
──今春、出された本『認知症になった蛭子さん~介護する家族の心が「楽」になる本』の中に、「(レビー小体型認知症による幻視で)認知症になったことでいろんなものが見えた」というお話が書いてありました。洗濯物を入れたカゴが、奥様が倒れているように見えたり……
蛭子さん 
ああ! なんかありましたね。なんでそんなのが見えていたのか不思議でした。
マネジャー デパートの売り場で「電車が走っている」と言ったこともあって、その様子を漫画に描きましたよね。
蛭子さん 
知らないことが起きるとすごく興味が湧いてくる。でも最近は(幻視は)ないんですよ。周りの人からよく「もっと描いてよ」って言われるんですけど。
──今は、幻視は治まっているんですね。認知症のお薬は飲んでいらっしゃいますか?
蛭子さん 
いや、全然飲んでないです。
マネジャー 薬は毎日、昼食後に飲んでいますよ。
蛭子さん ああ俺が知らずに飲んでいる中にあるわけね。

──コロナ禍なので、通院も大変でしょう
蛭子さん 
そうですね。だから最近はあまり病院に行っていないです。

──蛭子さんといえばギャンブルですが、最近はいかがですか?
蛭子さん 
最近あまり遊んでいないんだよね。競艇も行かなくなったし。
──競艇はとてもお好きでしたよね。心境が変化したのはなぜでしょう
蛭子さん 
1番の理由は、これまでお金を使いすぎちゃったから。やっぱり負け続けているとね、同じことを繰り返しているだけなのでちょっとまずいなと思います。でも最近は本当にほとんどやってなくて、我慢しているというよりも、それほどしたくなくなっちゃった。したくなくなったと言うと、嘘になるかもしれない。したいんだけどしないで済むような覚悟(=やめる覚悟)はできています。多分、今後どんどん減っていって、そのうち完全にやらなくなるんじゃないかな。

──最近の楽しみは?
蛭子さん 
以前は映画もすごく好きで、昔の映画とか不条理な映画っていうか、訳のわからないような映画を見に行っていました。
マネジャー 『砂の女』とかですよね。
蛭子さん 
そうそう、洋画も邦画も好きで。最近も面白い映画はやっていると思うけど、そんなに見たいと思わないんですよね。コロナ禍が始まってから映画館に行かなくなって。映画から離れていっているような気がします。

──外出するのが億劫になった?
蛭子さん 
外に出るのはすごく好きですね。近くに公園があって子どもたちが走ったりしていて、それをベンチに座ってコーヒーを飲みながら見ているのが好きで。以前は人と会うのはあまり好きじゃなかったんですが、最近はそうでもなくて、人の動きを見るのが面白いんだよね。
──ご自宅で過ごす以外にショートステイを利用なさっていると伺いました
蛭子さん 
俺、ショートステイに行ってたっけ?
マネジャー 週2~3日利用しています。
蛭子さん 
行ってたんだ。行ってないと思ってた(笑)


 
──2020年の夏に初期の認知症であることを公表した時は、どんな思いだったのでしょうか? 

蛭子さん 自分では割と簡単に考えていました。床屋に行くような感じです。いつもとはちょっと違うかもしれないけど、生活が大きく変わるようなこともない。だから周囲が認知症と言っているだけで、本当は認知症に罹っていないかもしれない、なんてね(笑)。周りが認知症だと言っているだけで。
 
──逆に、こうやって周りが認知症で取材にくるのが不思議な感じもしますか? 
蛭子さん 
そうですね。だから(認知症について)たいしたことは言えなくて、申し訳ないような気もしています。

──お仕事の調子はどうですか? 

蛭子さん 
あまりしていないですね。たまに漫画を描いたり。でも働いていたいです。働いてお金が欲しい。やはりお金に対する思いが強いんですよね。働かなくてお金が入ってくるならそれが1番いいですけど。 

──絵のタッチは病気になる前と、なってからでは変わりましたか? 

蛭子さん そんなに変わらないと思います。自分ではよくわからないな。(マネジャーに)どう? 
マネジャー 僕が見る限りでは、輪郭とか、少し変わったような気がします。 
蛭子さん 雑になった? 

マネジャー ちょっと雑になったかな。 

蛭子さん 最近ちょっと絵が乱れていてあまり熱心にやっていない感じがして、それが気になっています。描くなら時間をかけてしっかり描きたいですね。

 ──あまり認知症のことを漫画やイラストにしようとは思わなかったですか? 
蛭子さん 
そうですね。認知症のことを描こうという気には、なんかなれなかったですね。
──女性誌で悩み相談に回答するお仕事も続けていらっしゃいます。回答を考えるのは大変ですか? 

蛭子さん 
ちょっと難しいですよね、人の悩みはね。でも俺は自分が思っているとおりに素直に答えています。難しく考えず、頭の中に浮かんだことをそのままアドバイスすればいいんじゃないかな。 
──「今後、こういうことをやってみたい」という希望はありますか? 

蛭子さん 
人を笑わせたいとは思っているけど、具体的にはどうしたらいいのか。ぜひ笑わせないとね。

──認知症になって、奥様と一緒に過ごす時間が増えたそうですね 

蛭子さん 
女房は神社巡りがすごく好きなんです。俺も一緒に行っています。神社って必ず階段があるから、上り下りはいい運動になります。以前、バスで旅をするテレビ番組に出ていたときはいっぱい歩いてすごくきつかったですが、あのくらい歩いたほうが体のためにはいいよね。

──先ほど「働いてお金が欲しい」というお話がありましたが、奥様と旅行に行きたいとか? 
蛭子さん 
女房はそう思っていて、それがすごくわかりますね。
──蛭子さんの本に「最近は奥様にありがとうと言うようになった」と書かれていました 
蛭子さん 
そんなこと書いたかな。でも昔は恥ずかしくて言えなかったけど、今はありがとうって言えるかな。 
──自然に出てくるようになったのでしょうか? 
蛭子さん 
自然に言えていると思いますね。自分では全然考えた感じがしないんだよね。
いつもそばにいてくれる安心感
──認知症になった方に、伝えたいメッセージはありますか? 
蛭子さん 
俺のようにすでに認知症になっていたら元に戻せるわけではないし、まあいいか、みたいな。人間だしこんなこともあるよねっていう感じです。やっぱり病気はなりたくないですよね、ならないほうがいいけど俺自身は変わらないから。
──蛭子さんが以前と変わらず生活できるのは、蛭子さんご自身の自然な心のありようだけでなく、奥様やマネジャーさんなど、そばで見守っている方々の存在も大きいでしょうか 
蛭子さん 
みんな俺のことをよくわかっているし、いろいろ教えてくれるからすごく勉強になりますね。 
──そばにいてくれると安心感がありますか? 
蛭子さん 
それはもう。いてもらったほうがいいのに、俺が自分の好きなことを選んだり、みんなで麻雀したり、そんなようなことばっかりして呆れられているから。それでもみんなそばにいてくれるのは、ありがたいですね。「いつもありがとう」って、言うしかないかな(笑)。

(聞き手/松浦祐子  なかまぁる 2021.10.16 -28.)


 

 

 
 

 
 
 
 


 

 

 

 

 
 
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