「仏教」とは、文字どおり、「仏」の「教え」による宗教・思想ということですが、なぜ「釈迦教」ではないのでしょうか?
仏教の創出者はインドのお釈迦様です。それなら、キリスト教と同じように、釈迦教で良いはずですが、なぜか「仏教」と呼ばれています。
どうやら、仏の教えと釈迦の教えは同じではないようです。「仏教」を勉強するということは、つまりは、この違いを、さらには「仏」とは何かを勉強することのようです。
学校でも歴史の授業で、小乗仏教と大乗仏教というのを学びました。多くの経典が編纂されたように、多くの仏が存在するようです。
ということで、第1巻ではお釈迦様の教え、つまりは「釈迦仏教」を学びます。「はじめに」でもお話したようにこのブログは、「仏教の思想」(全12巻)の内容の要素を私なりに抽出して整理したものです。各巻のタイトルついても、本のタイトルを必ずしもそのまま採用していません。私なりに理解して、できるだけ直接的な意味合いのタイトルにしていますので、ご承知おきください。
「釈迦仏教」は3章に分けて整理しました。今日はその第1章をご紹介します。
仏教思想概要1:釈迦仏教
第1章 釈迦仏教の背景
1.インドにおける古代都市の成立
1.1.ブッダの活動舞台
サーキャ(釈迦)族よりいでし聖者、すなわちブッダ・ゴータマ(本名:ゴータマ・シダッタ)が誕生した紀元前400年代、中インド・ガンジス川中流からそのいくつかの支流の地域に古代都市が形成されます。その中で以下の都市が思想活動の中心舞台となりました。
・チャンパー(瞻波)
・ラージャガハ(王舎城)
・サーヴァッティー(舎衛城)
・サーケータ(沙計多)
・コンサービー(驕賞弥)
・パーラーナシー(波羅捺)など
1.2.古代都市と精舎
ブッダの活動舞台の古代都市には、郊外に「精舎*」が作られます。
*精舎:ブッダとその弟子の修行者の為の、住居、休息所、修行の施設
(代表的な精舎 表1)
2.王と長者の役割
2.1.王国と共和制の衰退
古代都市は、インド的ポリスと呼ぶことが可能なものであったが、それらの新しい舞台において、もっとも重要な役割を演じたのが、王と長者であったのです。
仏教文献のなかには、「十六大国」という言葉が見えます。これらは大国とは言えない部族いった意味合いで、ブッダ・ゴータマの時代には、弱小部族は次第に征服され、中インドの5つの大国が成立していました。
- コーサラ-都城:サーヴァッティー(舎衛城)
- マガダ-都城:ラージャガハ(王舎城)
- ヴァッジー-都城:ヴェーサーリー(昆舎離)・・・共和制
- ヴァンサー-都城:コンサービー(驕賞弥)
- アヴァンティ-都城:ウッジェーニー(烏惹儞)
五大国のうちヴァッジーだけが共和制で、部族社会としての共和政は次第に絶対君主制に移行することとなりました。
2.2.古代貿易をになう大商人
古代都市(ナガラ)すなわちインド的ポリスにおける重要な存在は、長者たちであったのです。王が政治の中心であったのに対して、国と国を股にかけ活躍する経済(=古代貿易)の中心的存在、それが長者であったのです。
彼らは、ギルドの親分でもあったのと同時に、精舎の設置・維持に王とともに支援をしたのです。
さらに、古代貿易の道は同時に仏教伝道の道ともなったのです。
3.新しい思想家たちの生まれいで-六師外道-
紀元前1000年以上前にインド領域にたどり着いた、インド・アーリヤン民族(5つの部族)は古代都市の出現・成立とともに、その部族社会は崩壊し新しい市民社会が出現してきました。
この市民社会の出現は、新しい思想のいとなみを現すこととなり、その代表的な存在を「六師外道」と総称します。
ここにおいて六師外道は、ブラーマニズム(婆羅門教)の3つの柱(*)の否定を共通の立場としていました。
ブッダ・ゴータマもこれら新しい思想家の一人であったのです。
*ヴェーダ(吠陀)の権威、祭祀の至上性、ブラフマン(婆羅門)社会制度
(六師外道の思想の素描 表2)
これらの新しい思想家たちに共通する思想として、以下があげられます。
①現実所与の対象そのものが思想の出発点であり、そのよりどころであった。
ブラーマニズム(婆羅門教)の三つの柱(ヴェーダの権威、祭祀の至上性、ブラフマン的社会制度)の否定
②個人格を中心として学派が形成されたこと。それ以前は、ヴェーダやブラーフマナ(梵書)など部族共同体の中から成立したもの。
本日はここまでです。次回は「第2章 釈迦仏教の思想体系」についてです。1週間ほどお待ちください。
なお、基本となるテキスト「仏教の思想」(全12巻)について、簡単にご紹介しておきます。
12巻は、インド編、中国編、日本編の各4巻の構成となっています。各巻は2名の方により執筆されており、3部構成で、第1部は仏教の専門の先生が各巻の内容に沿って解説をしています。第3部は仏教というより哲学の専門家が、その立場で内容沿ったポイントを解説しています。第2部はこの2人による対談となっています。
1949年の出版で、単行本として発行されましたが、現在は文庫化されており、電子ブックもあります。
ご興味のある方が、さほど高価でもありませんので、是非原本を読まれることをお勧めします。
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