植物分類に詳しい方からは今さら何を、と言われそうですが、私がそれを実感したいきさつです。
オニグルミは小さいころからその堅果を割って食べていたので馴染みがありました。しかし、大人になってから知ったサワグルミは、名称に「クルミ」と付いているのに両種が同じ仲間だとは意識していませんでした。その理由は、多分私に以下の考えがあったからだと思います。
まず植物の名前には、例えば「○○ラン」となっていてもランの仲間(ラン科)ではない例があります。ヤブラン(クサスギカズラ科)、スズラン(キジカクシ科)、タケシマラン(キジカクシ科)、クンシラン(ヒガンバナ科)等です。また、私がアルバイトで普段よく剪定している庭木の定番であるイヌツゲもツゲ科のツゲの仲間ではなく、モチノキ科です。ですから、植物の名前だけで(同じ科の)仲間だと一概に断定はできません。
また、目で見た感じも似ていません。
樹形は、オニグルミは、太くて長い枝を横に伸ばし、全体的にずんぐり丸く、高さは10mくらいまでと低いです。
一方サワグルミは、上に向かって真っすぐにすらりと伸び、高さは20~30mくらいまでと高いです。
果実は、オニグルミは、直径約4cmの緑色の卵のようなもので、これが多いもので10個くらいもブドウの房のように枝に着いています。
果実の外側の緑色の肉質部分が取れると、表面がゴツゴツした硬い堅果になっています。
殻の中には油脂に富んだ種子が入っています。堅果が真っ二つに割れた片割れは山などによく落ちているので、その断面の模様はよく知られていると思います。特に堅果を割って食べたことのある方はよく知っておられるでしょう。
種子散布の方法は、リスやネズミによる貯食行動により、また、水に流されて行われているとされています。
一方サワグルミの果実は、一つの果実は真ん中に直径8~9mmの皮に包まれた丸い塊があり、その両脇に1.5cmくらいの不揃いの翼が付いています。この果実が10数個、長さ30cmもの穂のように付いてぶら下がっています。
種子散布の方法は、翼があるので風によるのでしょう(あとで本で読んだのですが、水に流されることもあるようです)。
こんなことから、オニグルミとサワグルミは同じ仲間だと意識していませんでした。
ところがあるとき、地面に落ちていたサワグルミの果実を手に取り、翼と真ん中の塊の皮をむしり取って見たら、直径7~8mmのゴツゴツした硬い殻が出てきました。下の写真の右側がそれです。
随分小さいですが、殻の堅さといい表面のゴツゴツ感といい、オニグルミの堅果に似ています。柔らかい翼を取ったらこんなものが出てきて意外でした。もしかしたらこれが「クルミ」という名がついているゆえんなのではないか、と新しいことを発見した気持ちになりました。
そこで今度は、その堅果を奥歯で噛んでみました。うまい具合に真っ二つに割れました。その片割れの断面を見たとき、サワグルミはオニグルミの仲間だと確信しました。
細長いサワグルミの断面と比べて上下に潰れて丸っこくなり、中央部分が広くなっていますが、まさしくそれはオニグルミの断面の模様と瓜二つだったのでした。
さらに、この小さな堅果の中に入っている種子をほじくって食べてみました。そしたら、あの「くるみ和え」や「くるみ餅」に用いるオニグルミの種子と同じ味がするではないですか。
多分、植物の分類では生殖器官とか葉とか多くの特徴を調べて分類しているのでしょうが、堅果の断面の模様と種子の味という2点で、私はそのとき初めて、サワグルミとオニグルミが同じ仲間であると確認できたと思ったのでした。
その後、こんなことは専門の世界ではよく知られているのではないかという疑問がわきました。それで図書館に行き、サワグルミとオニグルミの堅果の内部について記載しているものがあるかどうか図鑑を調べてみました。結果は、オニグルミの堅果の断面のスケッチは一つありましたが、それ以外は見つかりませんでした。したがってこの両種の堅果の内部構造と種子の味は同定のポイントになっていないのでしょう。
しかし私は、この両種の堅果の断面の模様と種子の味は両種が同じ仲間であることの証拠の一つだと思っています。
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