HONDA N-oneが世の中の傾向に目を背けて(?)発売され意外にも(?)売れてしまった。これは、一発限りの当たりだったのか。殆どの乗用車が、ワンモーションフォルムで燃費を追求している時にレトロスタイルに振ったのは何故なのかということです。
これについて、車の走行抵抗について振り返ると・・・。車の空気抵抗は、70~80km/時位から顕著になって走行抵抗の中で大きな割合を占める様です。更に高速道路を巡航する、特に欧米のアウトバーンなどの走行では、エンジンの燃焼効率そのものが直接効いてくる。つまり、走行速度について3つのモードに分けて考えた方が良いみたいです。
これについて思い出すのが、初代プリウスです。初代プリウスの燃費は、それ程良いものではなかった。勿論、リッター20kmは超えてましたが、今考えるとそれ程でもなかった。そこを突いたのがフィットで、エンジンをあえて2バルブにして低速主体にし、ワンモーションフォルムのスタイルを徹底して中速域の燃費を向上させた。この設定の巧みさによって、当時としては際立った燃費を実現してカローラをベストセラーの座から降ろしてしまった。それを見てトヨタもハイブリットだけに頼るべきではないと思ったのかな。2代目からはワンモーションフォルムにスタイルを変更して、燃費を向上させた。以後はどこのメーカーの新車もワンモーションフォルムになった。
クリーンでスタイリッシュなスタイルは好感の持てるものですが、ある時点からそれが類型的で個性の無いものに(突然)なってしまう。段々区別がつかなくなってしまう恐れが出てきた。一方でスクエアなボデーの使い勝手の良さが確かにある。それを端的に示したのがスズキのMRワゴンだったと思います。永い試行期間を経てワンモーションフォルムで発売した。ところが、モデルチェンジの度に後退していき、結局ボックススタイルになってしまった。
それでは、スクエアな車体で空気抵抗が低減出来ればそれに越したことはない。そこに、レトロや「道具」としての使い勝手や移動建築としての街角への溶け込みやすさを盛り込めれば様々な魅力が発揮できる・・・。そんな事を追ってみると面白いかもしれません。
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ワンモーションフォルムとスクエアなボデーの変化で思い出したのが、サーブのことです。
第2次大戦後、航空機メーカーのサーブは、戦後の需要変化への対応として自動車に進出します。サーブ92です。それは、航空機の経験をフルに活かした流線型の理想主義的なものでした。最初は、トランクリッドすら切らなかった程です。リアウィンドウは流線型に拘る余り小さな2つのスプリットウィンドウでした。その後少しずつ手直しを加えていきましたが基本形は変わりませんでした。
次世代モデルのサーブ99が、1968年に発表されました。それは、セダン型に変化してました。92シリーズからの大きな変化は、前後のウィンドウに表れていました。まず、フロントウィンドウを大きく立てました。それでは空気抵抗がもろに増えるので円筒形の基本形から、必要な部分を切り取った形になってました。リアウィンドウ視界を歪ませない為に、ガラスは平面形に近いものでした。それを普通のセダンの様に立てるとリアにスムーズに空気が流れないので少し斜めに傾けました。それにトランクリッドを少し折る形でつなげました。トランクリッドの両サイドも少し絞って気流が流れ易くします。ファストバックでなく、逆にコンケイブした形です。ドライバー、乗客の視界、居住性、居心地に配慮した結果でしょう。その上で、気流をスムーズに流す様に配慮している。単純な流線型から脱却したとも言えるのでは?
サーブ92オリジナル
サーブ99初期型
この2車、実は大きさが余り変わりません。流線型かどうかで随分印象が変わります。特に気になるのが、99のフロントウィンドウ。かなり立てた形ですが、これで気流がスムーズに流れるのかなと思います。そこら当たりにまつわる話を次回に。
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さてフロントウィンドウを立てた空力ボデーというと思い出すものがあります。1970年代の前半に石油ショック後の変化の中で自動車の車体を風洞に入れて計測しようという風潮が本格化しました。その魁の様な形で、VWが過去の車を風洞に入れて計測しました。その過程で大きな驚きを巻き起こしたのが、1924年のルンプラートロッペンバーゲンでした。平面形では、舟形の流線型をしています。ところが、側面形では、四角四面の形をしていたのです。ところが、この車のCd値が0.28という値を記録し、大きな驚きをもたらしました。
1924年トロッペンバーゲン
写真を見て驚くのが、フロントウィンドウに当たった気流がルーフ側に流れず、側面に綺麗に流れていることです。垂直に近いフロントウィンドウが抵抗にならなかったのは、この為かなとも思います。平面形では、キャビンが綺麗な流線形をしています。ということは、キャビンの流線形をどれだけ幅広く、太らせることが出来るかで実用への応用が考えられるのでしょう。もう一つこの時の計測で、後輪のリフトがゼロであったことが注目されました。よくよく見ると、リアの底面が少し跳ね上がって整形されています。それ程大袈裟な形状ではありません。この程度の整形でディフューザー効果が発揮出来るなら使えそうですね。
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さて、フロントウィンドウを立てた過去の空力実験車の例として、もう一人の巨匠のトライを見てみると。
ヤーライの実験車とパテント書類です。同じ様なボデーを複数のメーカーのシャシーに載せています。(4車くらいあったかな)。何だか奇妙なプロポーション。この当時、曲面ガラスの製造が難しく、平面ガラスを使わざるを得なかったという事情もある様です。しかし、こうまで垂直に立てなくてもと思ってしまいます。ボデー下半分は、板金で流線型にする。そして上半分は舟形の垂直に立てた流線型とする。但し、舟形の流線型の形状はルンプラーの方がデリケートに整形してある(特にルーフ前端部の形状)。ということは、ヤーライの下半分とルンプラーの上半分を組み合わせるという考えもあるかも。その方が、現在のスクエアな車体との親和性も良いかも。
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さて、まずトロッペンヴァーゲンを元にして考えてみると。マーレイのT.25を横目で見ながら・・・
オリジナルのトロッペンヴァーゲン
T.25の平面図。同様に3シーターで運転席が涙滴型になっている。
どうでしょう。かなりアグリーです。しかし、スクウェアなボデーへの空力形態への示唆にはなると思っています。トロッペンヴァーゲンも発表された時は、世間からかなり無視されたみたいです。
・N-BOXなど軽自動車サイズのBOXカーでのサイドボデーの涙滴型の成形。
・新軽規格での3シーター構成とアッパーボデーへの示唆
があると思います。ここから更に、T.25をいじってみたくなりました。うまくいくかな?
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