諏訪山岳会公式ブログ

諏訪地域の山好き、クライミング好きが集まって、ウラヤマからヒマラヤまで四季を通じてオールラウンドに活動しています。

北岳バットレス第4尾根主稜

2017年10月18日 | バリエーション・登攀
北岳バットレス第4尾根主稜

日時:2017年10月8日(土),9日(月)

メンバー:O石、I 氏(会外)



秋晴れの3連休を使って
北岳バットレス第4尾根主稜に行って来きました。
クラシックアルパインルートとして有名なこのルート、本チャンのアルパインクライミングを志す上で避けて通れない目標の一つです。
今回無事に行って参りましたので、そのレポートです。

10月7日(土)
今回は久しぶりの電車&バスアプローチなのでI 氏と甲府駅で待ち合わせて、これまた久しぶりのステーションビバークとなりました。元々の計画では金曜日に白根御池でまで入る予定でしたが、I氏の都合で急遽、明日一気に広河原からのアタックに変わりました。
明日からの天気は上々、始発に備えて、酔っぱらいの喧騒の中、寝ます。

10月8日(日)晴れ
予想通りの快晴。始発バスで芦安経由広河原に6:50着。

名物のつり橋を渡って、広河原山荘で身支度して7:10出発です。
恐らく大渋滞であろうし、そうでなくても時間的にルート途中の日没も予想されるので肩の小屋幕営計画としました。なので全装です。重いです。足取りも重くアプローチが長く感じる。
今回はD沢から入る計画なので大樺沢左俣を詰めます。


ヒドンガリーを過ぎると右から黒い大岩の転がるバットレス沢に出会います。


さらに詰めるとしっかりと水流のあるC沢と涸れたD沢が現れます。
D沢の右岸に目印があるので、登山道から外れて、そこから入渓し、すぐにトラバースしてC沢との間の支尾根に入ります。踏み跡と目印があるので迷うことはありません。


しばらく進むと開けたブッシュ帯に出ます。下部岩壁を一望できる爽快な景色です。


先行パーティーは見当たりません。落石のリスクも少なそうなのでDガリ―大滝から取り付くことにしました。


準備をしていると遥か上方から ラ~ク!のコール。小石が振ってきました。油断大敵、気を引き締めて、より安全なビレイ点を確保してスタートします。

1ピッチ―Ⅲ+ 40m( I氏)

濡れた被り気味の出だし、古いピトン、磨かれてツルツルした岩など、クラシックの香りが漂う1ピッチ。どうも昨夜からの食あたり?でイマイチ調子の上がらないO石。ここはI氏にお願いして離陸。
時間は11:00

2ピッチ―Ⅲ 40m (O石)
ルンゼ上のフェースを左上、横断バンド下で残置ピトンと古いスリングがあるので自己スリングでビレイ。

3ピッチ―バンドトラバース 30m (O石)

踏み跡のある横断バンド。ピラミッドフェースへ取り付く逆層スラブ下のバンドは落ちればオシマイな滑りやすい草付なので、スタカットで安全策を取ってトラバース。
終点の立木から先はコンテで進みCガリーに出る。

ガレガレのCガリーは右岸の比較的しっかりした足場を選んで詰めあがる。


しばらく進むと「4」と赤ペンキの目印のある支沢に寄るとヒドンスラブが現れた。
ここで再びスタカット準備。


4ピッチ―Ⅲ 30m (I氏)

濡れた逆層スラブ。スタンス、ホールドとも豊富だが泥混じりで注意が必要。
ここの終了点が第4尾根主稜の始まりです。

5ピッチ―Ⅳ 40m(I氏)

第4尾根主稜のファーストピッチ。どうやら先行パーティーに追いついたようなので大休止していると、あとからペアのパーティーが追いついた。我々よりも遅いパーティーがいるんだ...今日はどちらまで?と聞けば、北岳山荘で小屋泊しますと...軽装が羨ましい。

最初の短いクラックを越えると優しい快適なスラブが続く。先ほどまでの下部岩壁に比べ岩もしっかりしていて見晴らしもよい。快適な登攀がここから始まる。出だしでカムを一つ使用した。結局カムはここだけ使った。

6ピッチ―Ⅱ 40m (O石)
土のバンド、階段状の優しい岩場が終わると左からピラミッドフェースからのルートが入り込む。中央稜が正面に見えるが誰も取り付いていないようだ。

7ピッチ―Ⅲ 40m(I氏)
緩い傾斜の快適なスラブ登攀。白い岩のクラックと言われているようだがあまり白くない。

8ピッチ―Ⅲ 30m (O石)
渋滞待ちのはじまり。先行は3人パーティー。聞けば朝4時に白根御池を出たと…
それでこの時間にここ? 聞けば先行の渋滞が酷く、牛歩の進軍で辟易している様子。
我々のゆっくり出発でも変わらない渋滞にビックリ。人気の高さがうかがえる。
フェースから始まり快適なリッジに移る短いピッチ。

9ピッチ― Ⅳ+ 30m (I氏)

出だしの三角形の垂壁スラブを少し右に回り込むように超えると見晴らしのよい快適なリッジに出る。ピトン支点も豊富だ。


マッチ箱まで上がると行く先の渋滞の酷さが一望できる。
最後のチムニーで3つほど前の5人パーティーが、がんばって時間を稼いでいる。
隣のDガリ―奥壁から上がってきたパーティーも合流して枯れ木テラス廻りが実に賑やかだ。

ここでしばし懸垂待ちとなる

マッチ箱の頭から20m程懸垂下降した小テラスで先行と我々、そして後続の3パーティーが1時間ほど佇む。先の5人はまだチムニーで粘っている…

雲海から頭を出した夕暮れの富士山が綺麗だ。

10ピッチ―Ⅳ 30m(O石)

右のコーナーからカンテ上のクラックを越えてバンドに出てビレイ。もう少し上がりたいところだが渋滞が解消しない。これ以上上がると枯れ木テラスがあふれてしまうので仕方なく切る。ここで更に1時間半の待ち。まだ先の5人はチムニーで粘っている…(写真は先行パーティー)

日暮れ前、見納めのマッチ箱

そして日が暮れた。

11ピッチ―Ⅲ 30m(I氏)

ヘッデンでカンテから取り付きフリクションの効く快適なスラブを攀る。豊富なホールド、スタンス、立っているが緊張感ある快適なスラブ登攀だ。明るかったらもっと気持ち良かっただろう…。どうやら5人はチムニーをやっと抜けてくれたようだ!スムーズに動き始めた。

枯れ木テラスで切る。

12ピッチ―トラバース 20m (O石)
2010年の崩落でできた水平トラバース。リッジの先端をレイバック気味に進む。途中切れ落ちたクレパス状の隙間を超えるのだが暗くてよく見えない。明るければDガリ―奥壁に落ち込む高さを実感できただろうが仕方ない。先行パーティーがビレイ点を使っているので手前のピナクルとカムでビレイ点を作り最後のピッチを待つ。

13ピッチ―Ⅳ+ 40m (I氏)
やっと最後のピッチにきた。
2手ほど登ると残置カムがあり有り難く借りる。暗いがチムニー内はホールド、スタンスも豊富なので、よく見て選んで、ムーブを駆使していけば難しくはない。
19:10終了。2時間30分の渋滞ステイのおかげで既に15時間行動となっている。

この先、山頂経由で肩の小屋までヘッデン歩きとなるのだが、明日は下山を残すのみであることと、天候も安定していることから、リスクを冒して無理して進むよりもビバークをすることにした。

見ればここで泊まっていけとばかりに 通称靴脱ぎテラスがヘッデンに照らされている。
幸い全装であったので助かった。ルート中、常に励まし合った後続のパーティーに別れを告げ、長い一日が終わった。

10月9日(月)晴れ



ご来光で目を覚まし、朝日と富士山と、赤く染まる北岳山頂直下中央稜を眺め、山頂に向け出発。20分程で山頂に到着した。
記念撮影をして、肩の小屋、白根御池経由で広河原に10:40到着。

芦安でお湯につかり、甲府でトンカツを食べて帰京。我々の北岳バットレスは終了しました。

北岳バットレス第4尾根主稜。

下部岩璧から繋いで13ピッチと本チャンらしい豪快なルートでした。
クラシックルートの中のクラシックルートとして、またアルパインクライミングの入門ルートとして、いつか登らねばと願っていたルートです。
計画段階で会の先輩方から多くのアドバイスを頂き、ビバークする状況でも焦ることなく無事に帰ってこられたことに感謝して登攀報告とさせていただきます。
ありがとうございました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿