諏訪山岳会公式ブログ

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谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜

2021年10月05日 | バリエーション・登攀
山行日:2021年10月3日
メンバー:F見、O石、K嶋

谷川岳一ノ倉沢衝立岩中央稜に行ってきました。
楽しい秋のクライミングではありましたが、全体を通して甘くない山行でした。


<一ノ倉沢出合手前>
登攀日前日の土曜の午前中にベースプラザの駐車場に入り、一ノ倉沢出合へ向かう。
指導員の方とあいさつを交わしていると突然の降雨。
聞くと日本海側に低気圧ができたらしく明日(夜半)の方が悪いかもしれないとのこと。
事前の天気予報とは違った状況に少しがっかりするも、とにかく出合に向かう。

出合の展望広場には先客のテントが一張あって、我々も邪魔にならない場所にそれぞれのテントを張る。

小休止の後、ひょんぐりの滝の懸垂支点までアプローチの偵察をする。
前回来た時よりも赤布が多い印象。
翌日にありがたみがわかったが、このくらいないと暗い中では踏み跡を間違えやすい。
ひょんぐりの滝の懸垂支点から出合に戻る際、念のため一部ロープを出して下った。デプローチも甘くない。


<久しぶりの一ノ倉沢>


テントに戻り、出合からの一ノ倉沢の展望を眺めながら食事を取っているとひとしきりの強い雨。
明日の登攀に不安を残しながら就寝。


<出合から衝立岩を眺め>


翌日3時起床。星がきれいに見え、車道のアスファルトも乾いている。
皆それぞれのテントで出発の準備をしている。
ハーネスを着け4:30出発。
ヘッデン歩行ではあるが前日の偵察のおかげでスムーズに懸垂支点に着く。
懸垂下降の準備をしていると明るくなって来る。
朝焼けの衝立岩を見ながらテールリッジを登る。


<テールリッジから見るご来光>



<朝焼けの衝立岩>



<テールリッジの登りが楽しかった(K嶋さん談)>


中央稜の取付きに来ると先行パーティーは南稜の方に向かった様で我々が一番乗りだ。

6:30登攀開始。
O石さんは胃腸の具合が悪いとのことで、基本的には、K嶋さんがⅢ+級までのピッチ、F見がそれ以外のピッチのリードを担当する。
以下、ピッチの内容は備忘の為の注意点と感想(あくまで主観)。ピッチグレードは「新版日本の岩場・上」より。

1P目:40mⅣ。特記することは無いが、左上すれば棚の終了点に着く。

2P目:25mⅡ。ルンゼは1P目の終了点から見えない。左にトラバースしてリッジを回り込んでからルンゼ状を登って行く。濡れた箇所もありⅡ級以上に感じた。

3P目:25mⅣ。まず右へトラバースしてリッジを回り込んでから上へ。逆層/草付き/岩がはがれそうな感じで意外と悪い。結局ヌンチャクを使い果たし、途中の終了点でピッチを切る。トポ通りなら4P目の凹角が見えるところまで進む。

4P目:25mⅤ-。左のフェースと右の凹角と2ルートある。凹角は濡れており、迷わずA0通過。

5P目:25mⅢ。トポには凹状フェースⅢ級とあるが、濡れているところはそれ以上に感じる。

6P目:40mⅢ+。トポにはルンゼⅢ+とあるが、濡れているところはそれ以上に感じる。

以降:100mⅡ。トポには土のルンゼ~草付きⅡ級とあるが、最後はⅢ~Ⅳ級に感じる岩のパート。O石さんもリードに入ってもらいロープを伸ばしてもらった。

全体的に~Ⅲ+級のピッチはそれ以上の難易度と悪さに感じられ、そんなところの多くをK嶋さんにお任せすることになってしまった。


<日当たりは乾いた岩なのだが、、、>


暑いくらいの秋晴れの中、11時過ぎにトップアウト。


<衝立岩の頭と烏帽子岩を背に>



下山は北稜。(この山行の核心でした)
ルートを間違えやすいというのは知っていたので事前の準備はしておいたものの、懸垂下降で予想以上のトラップにハマってしまった。
以下、自戒と備忘を兼ねて記載。(下降ルートの感想は主観ですので参考までに)

衝立岩の頭から一ノ倉沢側へ踏み跡をたどって数分下ると金属製の立派な1P目の懸垂支点に着く。


<懸垂1P目支点 写真だと岩と同化して見える>


1P目懸垂支点から40m懸垂下降して2P目の懸垂支点はトポ通りで問題なし。

問題は3P目の懸垂支点。

2P目の懸垂支点から降りてくると、トポに記載の下降距離40m(より5mほど手前)くらいのところで立派な白い木に工作された懸垂支点に出くわす。

丁寧に新しい捨て縄で補強され、おまけにカラビナもついている。(普通のメジャールートならこれで正解でしょうが谷川は甘くなかった)

白木の生えている場所は棚状でよく踏まれており、山肌に向かって右手側に踏み跡が続いている。

左手にも藪の中をなんとなく踏み跡があるが、トポでは左に下ってダイレクトカンテに出てはならぬと書いてあるし、カラビナは右手に降りる方向についている。

総合的に考えてここが3P目の懸垂支点で右手を下降するのだろうと判断する。

しかしこれが間違いで、この白木の支点を無視して左手の藪の踏み跡を5mほど下ったところに正解の3P目の懸垂支点がある。

(白木の位置から3P目の支点は見えないので知らなかったらロープ5m程度の誤差をどうとらえるか難しい判断ではあると思う。)

この後、白木から山肌に向かって右手の間違ったルートに降りてしまい、間違いに気付いたものの登り返しで1時間ほどのロス。

前回の南稜のアプローチでは、トラロープに従って進んだら間違いだったなんてこともあった。

谷川は、立派な踏み跡を信用してはならない。立派な人工物を信用してはならない。ということか。
立派な踏み跡、人工物を見ても他に可能性は無いかという視点が必要なのだと思う。

そうこうしているうちに後続の2パーティーが先行する。

後続になったので先行の人を追えばいいだけなのでわかりやすいが、初見で降りるとなるとルーファイの難易度は相変わらず高い。
空中懸垂のところは下降ラインの延長線にピナクルが見えていれば正解と思っていいと思う。
降りていけば階段状のスラブに支点が打ち付けてある。


<空中懸垂>


空中懸垂の後、トポでは懸垂20mでコップスラブに下り立つとなっているが、そこからピナクルまで歩くのは怖い。
先行パーティーもやっていたように、そのままロープいっぱいまでピナクルまで懸垂で歩く。
今回60mのロープを使ったが、ロープの残りは10mあったかなかったかくらい。


<ピナクルから撮影 ほぼ60mここまで一気に降りてきた>


懸垂パートを終え、ピナクルからブッシュ帯を少し下り、水流のある沢を越えて次の枯沢が衝立前沢でこれを下る。

濡れていたり苔が生えていたりで結構悪い。そして人が踏んでいる雰囲気に乏しい。
下って行くとトポ通りに岩に打ち付けられたリングボルトの20m懸垂ポイントに着く。これが最後の懸垂下降。


<衝立前沢 20m懸垂下降>


さらに少し下って一ノ倉沢の水流が見えはじめ、これ以上フリーで下れない所から左手の斜面を登り上げて草付きの踏み跡に出る。
登り上げるところが初見だと不明瞭かもしれない。


<左手の草付きの斜面を登り上げるところがやや不明瞭>


一ノ倉沢まで降りる草付きの斜面のトラバース下降が本当に悪かった。
神経をすり減らしてようやく一ノ倉沢の河原に降り立った時には薄暗くなっていた。

この先の下りはこれと言った悪場はなく、朝来た道を戻るだけ。
前日の偵察時の記憶もあるので暗くなっても迷うことなく18時に出合のテントに着く。
振り返ると中央稜の取付きあたりでビバークを決めたであろう人たちのヘッドライトが光っていた。

指導センターの自販機でコーラを買い、3人での無事の下山に乾杯して帰路に就いた。




アプローチからデプローチまで気の抜けない山という意味では今までで一番でした。
中央稜~北稜の途中まで、先頭を初見でトレースできたのは先行パーティーを追いかけるよりは面白かったしよい経験になったと思います。
谷川特有の?トラップにハマってしまったのは反省点で、O石さん、K嶋さんにすごく負担をかけてしまい申し訳なく思っています。
そのような状況でもみなさんが冷静に対処されて助かりました。
無事に下山できたのもみなさんの協力のおかげでした。



谷川岳、今回も甘くなかったですがありがとうございました。



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