久々にギリギリですが金曜日更新できました〜♪(ハードル低いな)の追加クエストもどき。これまたギリギリ六月の終わりなのでおかしな?ジューンブライドネタをやってみましたが、考えてみたらガラスの山も婿探し話だったな・・・。またもや半分が前フリですが(笑)今回も依頼人に振り回されております。
ジューンブライドのシーズンも今日で終わり、新婚旅行先に披露宴会場・二次会・ブライダル装備で常にも増して大忙しだったリッカの宿屋・ルイーダの酒場・ロクサーヌの店は、本格夏シーズンを前にようやく一息つくことができそうで、カウンター内で充実感と安堵に満ちた空気が流れていた。
「ミミ、たくさんお手伝いしてくれてありがとう。とっても助かったよ」
リッカがにっこり笑って、ちょうど錬金をしてカウンター前に居たミミに言った。
「ほんとね。店番してくれてとても助かったわ。さ、ミミ、カウンター席にいらっしゃい。ささやかなお礼だけど、冷たい飲み物を作るわ」
ルイーダも言って、ウインクした。ミミは嬉しそうに笑って、ルイーダの酒場のカウンター席定位置におどりこのドレスの裾を翻らせてするりと座った。
それからみんなで、明日から交代でちょっとだけ休暇にしようとか、ようやくみんなで冒険に出られるとか、海岸出張の店の準備ができるとかウキウキした気分で話をしていると、そこへルイーダの酒場の為に限定の蒸留酒を樽買いに行っていたイザヤールも帰ってきた。ミミは目を輝かせて駆け寄り、イザヤールも幸せそうに彼女にただいまを告げてから、二人で改めてカウンター席に腰掛けた。
「樽は地下室に置いたが、構わないか?」
「ありがとう、イザヤールさん。イザヤールさんにもずいぶんお手伝いしてもらっちゃってるわよね。はい、お礼」
こうしてイザヤールの前にも冷たい飲み物が置かれ、辺りは更に和やかな空気に包まれた。
だが、平和極まりないときに何かが起こるのが、元守護天使二人プラスこの宿屋のもはやお約束である。例にもれず、そのとき、ルイーダの酒場に、「何かが」と表現したくなる勢いで、誰かが突進してきた!
カウンターにぶつかる直前で急ブレーキをかけたその人物は、そんなガサツな行動の割には意外にも妙齢の美しい女性だった。彼女は、呼吸を調える間も無くずいっとルイーダの方に身を乗り出し、ミミとイザヤールはあっけにとられて女性を見つめた。
「紹介してください!」女性は叫んだ。「イケメンで強くてリッチで優しくて家事も子守りも得意で姑問題も無い男性を!」
「ここは冒険者の出会いと別れの酒場よ。結婚相談所じゃないわ」
ルイーダはぷりぷりしながら答えた。
「え?そうなんですか?出会いと別れの酒場って聞いていたから、てっきりあたし・・・」女性はきょとんとしたが、またカウンターによじ登りそうな勢いで言った。「じゃあ、冒険者でいいんで、そんな男性が居たら紹介してください!」
「あのねえ・・・」
ルイーダは溜息をついて脇のカウンター席をちらりと見た。該当の男性に心当たりが無くはない。現に今、ミミの隣に座っている。イザヤールの貯金の額は知らないが、彼ならゴルスラ狩りを一日してくれば一生遊んで暮らせる額の金額を余裕で稼ぐだろう。ミミ同様親は居ないと言っていたので、姑問題も無さそうだ。
だがもちろん、大切な仲間のミミを候補として紹介する気など、ルイーダにはさらさら無かった。女性の条件を聞いて、ミミはびくっと身を震わせイザヤールの腕に自分の腕を絡め、潤んだ哀願するような瞳でルイーダを見た(イザヤールは自分に迫る危機にさっぱり気付いておらず、怯えるミミを不思議そうに見ていた)。ルイーダは安心させるように力強くミミに頷き、他をあたれと女性にきっぱりと告げた。
「だいたい、なんでそんなに慌てているわけ?」ルイーダは呆れながら言った。
「それは・・・六月が今日で終わるからです!」女性は答えた。
全員で「?」のマークを頭上に浮かべていると、女性は説明した。
「だって、六月の花嫁は幸せになれると言われているんですよ!今日を逃したら、また一年待たなきゃいけないじゃないですか!」
「それならこうやって慌てて探さないで、六月に入る前にいい人捕まえておきなさいよ」
「あたし、夏休みの宿題最後の日までやらないタイプなんですー」
「知らないわよ、そんなこと」
ルイーダが呆れていると、女性は今度はロクサーヌの前に突進するように移動し、カウンターの上にゴールド袋をどかっと置いて言った。
「ウェディングドレスとシルクのベールとエナメルのヒールをレンタルさせてください!」
「申し訳ございません、当店はレンタルは承っておりませんわ」さすがのロクサーヌも少したじたじになりながら答えた。
「そこを何とか!お金が半分しか集められなかったんです!」
「そうおっしゃられましても・・・」
「でもでも!例えば、あたしが正規料金で買ってから、一回着てすぐにまたあなたに売ると、あなたの店に残るお金は、結局半額分ですよね?」
「ええ、まあ、そういうことになりますわね」
「それなら、あたしが半額分に相当するレンタル代を払って、使い終わったらすぐに一式返却すれば、同じことになりません?」
「それはそうですけれど・・・。でもやはり、当店ではお受けしかねますわ。その代わり、衣装レンタルをしている知り合いに掛け合ってみますから、少々お待ち頂くというのは如何?」
「ほんとですか!お願いします!」
ロクサーヌはキメラのつばさを持って、外に出て行った。すると、女性は今度はミミに向かって(この頃にはイザヤールは訳がわからないままでさりげなく皆に逃がされていた)ずいっと顔を寄せて言った。
「では、その間に、小顔エステをする為にハードな運動をしたいと思いますので、あなた、お付き合いくださいません?ドミール火山辺りを登って下ればあたし、汗でむくみも取れてすっきりすると思いますわ」
「そんな、むくみ取りの運動なんて、あなたは全然必要ないですよ、充分以上に綺麗ですってば」ミミは慌てて言った。「それより、他の相談場所に行かれた方がいいんじゃ・・・」
「いいえ!ウェディングドレスを綺麗に着る為には一切の妥協をしたくありません!それに見知らぬ土地なら運命の出会いもあるかもしれませんし!お願いします、行きましょう!」
「えええ・・・!」
そんなことでいいのかなあ、本末転倒じゃないかなあ・・・とミミは戸惑ったが、まさか彼女一人でドミール火山を登らせるわけにもいかないので、付き添うことにした。ミミはクエスト「駆け込みの花嫁」を引き受けた!
こうしてドミール火山をおそらく冒険素人の女性と二人で登るハメになったミミだったが、引き受けた以上きちんと責任を果たそうと、まずはマグマでダメージを受けないように自分と女性共に「みずのはごろも」と「オベロンのくつ」を装備した。そして、補給用水分と「エルフののみぐすり」をたっぷりと持った。ステルスを使ってなるべく敵を避け、もしも魔物に見つかってしまったら、バックダンサーよびとキラージャグリングを駆使して撃退するつもりなのである。
「念のためお尋ねしますが、冒険やダンジョンに入った経験はありますか」ミミは女性に尋ねた。
「ありませんわ!」ムダに力強い返事が返ってきた。
やっぱり・・・と溜息をこっそりつきつつ、ミミはきっぱりと言った。
「時間がありませんから、せめて片道、登りだけにしましょう。頂上に着いたらすぐに帰る、いいですね?」
「仕方ないですわね〜、まあ登りだけでもすごい運動になりますから、いいですわ」
それなら、危険そうだったり、思ったより苦戦しそうだったら、道の途中でも天井が無い場所ならルーラで頂上へ行ってしまって、「着きました、さあ帰りましょう」ということもいざとなったらできそうだとミミは少しほっとした。リッカとルイーダも一緒に行くと言ったが、人数が少ない方がステルスで魔物をかわしやすいので留守とイザヤールへの伝言を頼み、ミミはドミールの里へとルーラを唱えた。
ミミが出発した直後、イザヤールが地下室から出てきた。
「リッカ、だいおうイカのスルメなんて、やっぱり無かったぞ?・・・ん?ミミはどこに行った?それに先ほどの騒々しい客は?・・・まさか」
「あのね、イザヤールさん、そのまさかなの」
リッカとルイーダは、ミミが女性客と一緒にドミールに出かけたことを説明し、聞くやいなやイザヤールはキメラのつばさを取り出した。
「今から行けば追い付けるな」
「イザヤールさんは行っちゃダメよ!私が行ってくるから、酒場の留守番していて!」
ルイーダの言葉に、イザヤールは怪訝な顔をした。
「何故だ?私がドミール火山に行くと何か不都合が?」
「ドミール火山でもどこでもアウトよ。強いところを見られたら、惚れられちゃうかもしれないわ!だからダメ!」
「はあ?!」
ますます訳のわからなくなったイザヤールは、ルイーダから自分があの客の条件にストライクな危険があると聞いて、腹を抱えて笑い出した。
「そんなわけないだろう。まあそれなら、ステルスを使って後をこっそりついていって、本当に危険な時にだけ手助けするようにする、それでいいだろう。ミミなら大丈夫だろうしな」
リッカとルイーダはそれならと賛成したが、成り行きを最初からにやにやしながら見守っていたラヴィエルは、「それではまるでミミのストーカーだな、イザヤール」と茶化して、彼に思いきり睨み付けられたのだった。
一方ミミは、ドミール火山への入り口に着いていて、自分たちにステルスをかけ、女性にドミール火山の内部の地図を渡してから念押しした。
「決して私から離れないでくださいね、そして、ちょっとでもきついと思ったら、すぐに言ってくださいね」
「わかってます!では参りましょう!」
言うやいなや女性はまたもや突進の勢いとスピードで走りだし、ミミは慌ててぴったり後を追った。冒険者もびっくりのスピードである。魔物にぶつからないよう軌道修正させるのはたいへんだったが、これならもしかしたら本当に行けるかもとミミは依頼人を見直した。この足の速さ、冒険者に向いているかもしれない。
五分後。
「あ、あたし、も〜ダメです〜!水、水ください・・・」
やはりスタミナは一般人だったようだ。というより、完全にペース配分を誤ったのだろう。水のはごろもをもってしても、煮えたぎる溶岩の醸し出す暑さは、気分的に耐えられなかったらしい。ミミはゆっくり飲むようにと注意しながら飲み水を差し出し、こっそり見守っていたイザヤールは、やはりなと苦笑した。
「もう汗は充分ですよ、さあ、帰りましょう」
「はーい」
というわけで、あっという間の帰還となり、ミミとそして少し離れたところに居たイザヤールは、「おもいでのすず」を使ったのだった。
ミミと依頼人の女性(とそしてイザヤール)がリッカの宿屋に帰ってくると、知り合いと交渉を終えたらしいロクサーヌも帰っていた。
「おかえりなさいませ☆ウェディングドレスとシルクのベールとエナメルのヒールのレンタルに成功しましたわ☆」
「すごい・・・さすがロクサーヌさん・・・」
「ありがとうございますー!」女性ははしゃいだ声を上げた。「ではさっそくお借りして着て、運命の相手をゲットに行きまーす!」
リッカが用意した部屋で着替えると、女性は本当に花嫁衣装そのままの格好で城下町に駆け出していった。
数時間後。女性は、上品な老紳士と一緒にリッカの宿屋に戻ってきた。
「教会の前で運命の出会いしちゃいました〜☆あたしたち、結婚しました!条件ぴったりだったんです〜♪愛があれば、年の差なんて☆」
「えええー!!」
驚愕する一同。だが、そういえば、年齢は条件に入っていなかった。
「妻がお世話になりましたな。これはほんのお礼の気持ちです」老紳士は「きんかい」をくれた!
そんなにすぐに決めちゃって大丈夫だったのかなと心配していたミミや宿屋メンバーだったが、風の噂によると二人は幸せに暮らしているらしい。ギリギリ六月の花嫁効果なのかは謎ではあったが。〈了〉
ジューンブライドのシーズンも今日で終わり、新婚旅行先に披露宴会場・二次会・ブライダル装備で常にも増して大忙しだったリッカの宿屋・ルイーダの酒場・ロクサーヌの店は、本格夏シーズンを前にようやく一息つくことができそうで、カウンター内で充実感と安堵に満ちた空気が流れていた。
「ミミ、たくさんお手伝いしてくれてありがとう。とっても助かったよ」
リッカがにっこり笑って、ちょうど錬金をしてカウンター前に居たミミに言った。
「ほんとね。店番してくれてとても助かったわ。さ、ミミ、カウンター席にいらっしゃい。ささやかなお礼だけど、冷たい飲み物を作るわ」
ルイーダも言って、ウインクした。ミミは嬉しそうに笑って、ルイーダの酒場のカウンター席定位置におどりこのドレスの裾を翻らせてするりと座った。
それからみんなで、明日から交代でちょっとだけ休暇にしようとか、ようやくみんなで冒険に出られるとか、海岸出張の店の準備ができるとかウキウキした気分で話をしていると、そこへルイーダの酒場の為に限定の蒸留酒を樽買いに行っていたイザヤールも帰ってきた。ミミは目を輝かせて駆け寄り、イザヤールも幸せそうに彼女にただいまを告げてから、二人で改めてカウンター席に腰掛けた。
「樽は地下室に置いたが、構わないか?」
「ありがとう、イザヤールさん。イザヤールさんにもずいぶんお手伝いしてもらっちゃってるわよね。はい、お礼」
こうしてイザヤールの前にも冷たい飲み物が置かれ、辺りは更に和やかな空気に包まれた。
だが、平和極まりないときに何かが起こるのが、元守護天使二人プラスこの宿屋のもはやお約束である。例にもれず、そのとき、ルイーダの酒場に、「何かが」と表現したくなる勢いで、誰かが突進してきた!
カウンターにぶつかる直前で急ブレーキをかけたその人物は、そんなガサツな行動の割には意外にも妙齢の美しい女性だった。彼女は、呼吸を調える間も無くずいっとルイーダの方に身を乗り出し、ミミとイザヤールはあっけにとられて女性を見つめた。
「紹介してください!」女性は叫んだ。「イケメンで強くてリッチで優しくて家事も子守りも得意で姑問題も無い男性を!」
「ここは冒険者の出会いと別れの酒場よ。結婚相談所じゃないわ」
ルイーダはぷりぷりしながら答えた。
「え?そうなんですか?出会いと別れの酒場って聞いていたから、てっきりあたし・・・」女性はきょとんとしたが、またカウンターによじ登りそうな勢いで言った。「じゃあ、冒険者でいいんで、そんな男性が居たら紹介してください!」
「あのねえ・・・」
ルイーダは溜息をついて脇のカウンター席をちらりと見た。該当の男性に心当たりが無くはない。現に今、ミミの隣に座っている。イザヤールの貯金の額は知らないが、彼ならゴルスラ狩りを一日してくれば一生遊んで暮らせる額の金額を余裕で稼ぐだろう。ミミ同様親は居ないと言っていたので、姑問題も無さそうだ。
だがもちろん、大切な仲間のミミを候補として紹介する気など、ルイーダにはさらさら無かった。女性の条件を聞いて、ミミはびくっと身を震わせイザヤールの腕に自分の腕を絡め、潤んだ哀願するような瞳でルイーダを見た(イザヤールは自分に迫る危機にさっぱり気付いておらず、怯えるミミを不思議そうに見ていた)。ルイーダは安心させるように力強くミミに頷き、他をあたれと女性にきっぱりと告げた。
「だいたい、なんでそんなに慌てているわけ?」ルイーダは呆れながら言った。
「それは・・・六月が今日で終わるからです!」女性は答えた。
全員で「?」のマークを頭上に浮かべていると、女性は説明した。
「だって、六月の花嫁は幸せになれると言われているんですよ!今日を逃したら、また一年待たなきゃいけないじゃないですか!」
「それならこうやって慌てて探さないで、六月に入る前にいい人捕まえておきなさいよ」
「あたし、夏休みの宿題最後の日までやらないタイプなんですー」
「知らないわよ、そんなこと」
ルイーダが呆れていると、女性は今度はロクサーヌの前に突進するように移動し、カウンターの上にゴールド袋をどかっと置いて言った。
「ウェディングドレスとシルクのベールとエナメルのヒールをレンタルさせてください!」
「申し訳ございません、当店はレンタルは承っておりませんわ」さすがのロクサーヌも少したじたじになりながら答えた。
「そこを何とか!お金が半分しか集められなかったんです!」
「そうおっしゃられましても・・・」
「でもでも!例えば、あたしが正規料金で買ってから、一回着てすぐにまたあなたに売ると、あなたの店に残るお金は、結局半額分ですよね?」
「ええ、まあ、そういうことになりますわね」
「それなら、あたしが半額分に相当するレンタル代を払って、使い終わったらすぐに一式返却すれば、同じことになりません?」
「それはそうですけれど・・・。でもやはり、当店ではお受けしかねますわ。その代わり、衣装レンタルをしている知り合いに掛け合ってみますから、少々お待ち頂くというのは如何?」
「ほんとですか!お願いします!」
ロクサーヌはキメラのつばさを持って、外に出て行った。すると、女性は今度はミミに向かって(この頃にはイザヤールは訳がわからないままでさりげなく皆に逃がされていた)ずいっと顔を寄せて言った。
「では、その間に、小顔エステをする為にハードな運動をしたいと思いますので、あなた、お付き合いくださいません?ドミール火山辺りを登って下ればあたし、汗でむくみも取れてすっきりすると思いますわ」
「そんな、むくみ取りの運動なんて、あなたは全然必要ないですよ、充分以上に綺麗ですってば」ミミは慌てて言った。「それより、他の相談場所に行かれた方がいいんじゃ・・・」
「いいえ!ウェディングドレスを綺麗に着る為には一切の妥協をしたくありません!それに見知らぬ土地なら運命の出会いもあるかもしれませんし!お願いします、行きましょう!」
「えええ・・・!」
そんなことでいいのかなあ、本末転倒じゃないかなあ・・・とミミは戸惑ったが、まさか彼女一人でドミール火山を登らせるわけにもいかないので、付き添うことにした。ミミはクエスト「駆け込みの花嫁」を引き受けた!
こうしてドミール火山をおそらく冒険素人の女性と二人で登るハメになったミミだったが、引き受けた以上きちんと責任を果たそうと、まずはマグマでダメージを受けないように自分と女性共に「みずのはごろも」と「オベロンのくつ」を装備した。そして、補給用水分と「エルフののみぐすり」をたっぷりと持った。ステルスを使ってなるべく敵を避け、もしも魔物に見つかってしまったら、バックダンサーよびとキラージャグリングを駆使して撃退するつもりなのである。
「念のためお尋ねしますが、冒険やダンジョンに入った経験はありますか」ミミは女性に尋ねた。
「ありませんわ!」ムダに力強い返事が返ってきた。
やっぱり・・・と溜息をこっそりつきつつ、ミミはきっぱりと言った。
「時間がありませんから、せめて片道、登りだけにしましょう。頂上に着いたらすぐに帰る、いいですね?」
「仕方ないですわね〜、まあ登りだけでもすごい運動になりますから、いいですわ」
それなら、危険そうだったり、思ったより苦戦しそうだったら、道の途中でも天井が無い場所ならルーラで頂上へ行ってしまって、「着きました、さあ帰りましょう」ということもいざとなったらできそうだとミミは少しほっとした。リッカとルイーダも一緒に行くと言ったが、人数が少ない方がステルスで魔物をかわしやすいので留守とイザヤールへの伝言を頼み、ミミはドミールの里へとルーラを唱えた。
ミミが出発した直後、イザヤールが地下室から出てきた。
「リッカ、だいおうイカのスルメなんて、やっぱり無かったぞ?・・・ん?ミミはどこに行った?それに先ほどの騒々しい客は?・・・まさか」
「あのね、イザヤールさん、そのまさかなの」
リッカとルイーダは、ミミが女性客と一緒にドミールに出かけたことを説明し、聞くやいなやイザヤールはキメラのつばさを取り出した。
「今から行けば追い付けるな」
「イザヤールさんは行っちゃダメよ!私が行ってくるから、酒場の留守番していて!」
ルイーダの言葉に、イザヤールは怪訝な顔をした。
「何故だ?私がドミール火山に行くと何か不都合が?」
「ドミール火山でもどこでもアウトよ。強いところを見られたら、惚れられちゃうかもしれないわ!だからダメ!」
「はあ?!」
ますます訳のわからなくなったイザヤールは、ルイーダから自分があの客の条件にストライクな危険があると聞いて、腹を抱えて笑い出した。
「そんなわけないだろう。まあそれなら、ステルスを使って後をこっそりついていって、本当に危険な時にだけ手助けするようにする、それでいいだろう。ミミなら大丈夫だろうしな」
リッカとルイーダはそれならと賛成したが、成り行きを最初からにやにやしながら見守っていたラヴィエルは、「それではまるでミミのストーカーだな、イザヤール」と茶化して、彼に思いきり睨み付けられたのだった。
一方ミミは、ドミール火山への入り口に着いていて、自分たちにステルスをかけ、女性にドミール火山の内部の地図を渡してから念押しした。
「決して私から離れないでくださいね、そして、ちょっとでもきついと思ったら、すぐに言ってくださいね」
「わかってます!では参りましょう!」
言うやいなや女性はまたもや突進の勢いとスピードで走りだし、ミミは慌ててぴったり後を追った。冒険者もびっくりのスピードである。魔物にぶつからないよう軌道修正させるのはたいへんだったが、これならもしかしたら本当に行けるかもとミミは依頼人を見直した。この足の速さ、冒険者に向いているかもしれない。
五分後。
「あ、あたし、も〜ダメです〜!水、水ください・・・」
やはりスタミナは一般人だったようだ。というより、完全にペース配分を誤ったのだろう。水のはごろもをもってしても、煮えたぎる溶岩の醸し出す暑さは、気分的に耐えられなかったらしい。ミミはゆっくり飲むようにと注意しながら飲み水を差し出し、こっそり見守っていたイザヤールは、やはりなと苦笑した。
「もう汗は充分ですよ、さあ、帰りましょう」
「はーい」
というわけで、あっという間の帰還となり、ミミとそして少し離れたところに居たイザヤールは、「おもいでのすず」を使ったのだった。
ミミと依頼人の女性(とそしてイザヤール)がリッカの宿屋に帰ってくると、知り合いと交渉を終えたらしいロクサーヌも帰っていた。
「おかえりなさいませ☆ウェディングドレスとシルクのベールとエナメルのヒールのレンタルに成功しましたわ☆」
「すごい・・・さすがロクサーヌさん・・・」
「ありがとうございますー!」女性ははしゃいだ声を上げた。「ではさっそくお借りして着て、運命の相手をゲットに行きまーす!」
リッカが用意した部屋で着替えると、女性は本当に花嫁衣装そのままの格好で城下町に駆け出していった。
数時間後。女性は、上品な老紳士と一緒にリッカの宿屋に戻ってきた。
「教会の前で運命の出会いしちゃいました〜☆あたしたち、結婚しました!条件ぴったりだったんです〜♪愛があれば、年の差なんて☆」
「えええー!!」
驚愕する一同。だが、そういえば、年齢は条件に入っていなかった。
「妻がお世話になりましたな。これはほんのお礼の気持ちです」老紳士は「きんかい」をくれた!
そんなにすぐに決めちゃって大丈夫だったのかなと心配していたミミや宿屋メンバーだったが、風の噂によると二人は幸せに暮らしているらしい。ギリギリ六月の花嫁効果なのかは謎ではあったが。〈了〉
うーん、溶岩地帯を猛スピードで走ればそりゃ水の羽衣装備していようが冒険者だろうが間違いなくすぐにバテますって!
そして相変わらず自分の危機(笑)には鈍いイザヤール様、ミミちゃんのピンチには敏感なのにね
あ、年齢は条件にはなかったね、イケメンっていうから若い男性を希望と皆思ったのね…しかし老紳士さん(きっと物腰の柔らかいダンディなお方なんでしょうね)もよくあんなの(失礼)と結婚式を挙げましたね。しかも出会って数時間って…
でも依頼者の娘さんがドタバタ系なので落ち着いた雰囲気の人がいいのかもしれませんね
リリン「純白のウエディングドレスに身を包んで素敵な教会で永遠の愛を…」
シェルル「なんで想像の新郎が某探偵アニメの犯人みたく黒塗りなんだよ⁉︎」
リリ「えー…じゃククールを新郎役で」
ククール「よっしゃ!」
シェ「なんで⁉︎」
リリ「なんとなく」
クク「リリンは俺のお嫁さん〜♪」
レレン「はいはーい!私はステーキに、チキンに、ケーキ、ご馳走たくさんぜーんぶ一人で食べるの」
リリ「…結婚式って何か知ってる?」
レレ「ご馳走たくさん食べる日でしょ?それぐらい知ってるもん!」
クク「おいおい…」
その頃、イザやんはウエディングドレスを着て幸せを探す旅に出ると訳のわからない事をのたうちまわっていた!
いらっしゃいませこんばんは☆ギリギリで生きていると津久井のようなダメ大人になる可能性があります。お気を付けくださいませ(泣)
こればかりはたぶんどのサイト様のイザヤール様もそうだと思われるんですが、イザヤール様って自分がモテている自覚が一切無いタイプな気がします(笑)
今回の依頼人「為せば成る」状態。老紳士はたぶん、彼女が亡き妻の若い頃にそっくりだったとか何か理由があるんです・・・と思いたい。自分で書いといてなんですが。
女主さん、そこはダイレクトに彼氏さんじゃないんですかw某名探偵アニメの犯人的アレww頑張ってください彼氏さん、マジで取られないうちに・・・。妹さんの中ではお祝いイコールご馳走?!
師匠、何故そこは白いタキシードではないのでしょうかwwなんだかどんどん乙女化していらっしゃる・・・?