短いですが愛妻の日話。
各地は今冬だが、常夏の地であるアユルダーマ島は、寒いどころか常と変わらず海と共に在るのに相応しい気候だ。冬のウォルロから王者のマント姿のままツォの浜を訪れたイザヤールは、眩しい太陽に少し息を吐いてマントを脱ぎ捨てた。
今日は、ミミの代わりにこの集落の長のところへウォルロの名水を届けに来たのだった。今頃ミミは、妖精たちの揉め事の仲裁にあたふたしているところだろう。また変なことを聞かれて困っていなければいいがと、イザヤールはかすかな苦笑を浮かべた。妖精たちはどうも、ミミに頼み事をしたいというよりも、恋愛の進展度を聞きたくて呼び出している節があるからだ。他人の色恋沙汰を聞いて何が面白いのだろうといつも思うのだが、だからイザヤールさんはボクネンジンって言われるのヨとサンディに言われた。
朴念仁で構わない。結局、天使から人間になろうと、生まれつきの性根はなかなか変わらないのだから。不器用なりに、愛しい者を大切に慈しむ術を、きっと生涯手探りで探していくのだろう・・・。
ここに来たついでに錬金の素材も買っていくかと道具屋に寄ると、珍しく桃色の珊瑚で作られた物が売っていた。輪切りにした珊瑚を花びらに見立て花の形に組み合わせた髪飾りで、中心にはピンクパールがあしらってある。少し幼いデザインかもしれないが愛らしく美しい。きっとミミに似合うだろう。
錬金素材と一緒に髪飾りを一つ買うと、店主は喜んだ。
「まいど!これは、村の新しい名物にしようと思っているんだ。あんたの彼女さんがこれを着けて歩いてくれたら、きっといい宣伝になるよ!もしかして、彼女さんの誕生日かい?」
「いや、特に何もない日だが」
「へえ?理由も無いプレゼントなんて、怪しまれないかい?ご機嫌取る理由があるんじゃないかって勘繰られるんじゃないか?」
「彼女は素直な子でな。素直に心から喜んでくれる」
「そうかい、それはめでてえなあ。でもな、それって財布が別の間だけだぜ。結婚した途端に、こんな無駄遣いして!って叱られるようになるのさ〜」
「そういうものか?」
「そういうもんさ!」
道具屋を出てから、イザヤールは髪飾りをポケットにしまい、代わりにキメラのつばさを出した。確かに、おとなしかった娘が、所帯を持った途端にみるみる逞しくなる例を、彼は守護天使の間ウォルロ村で山ほど見てきた。だがそれでも、夫婦という形になったところで、ミミが変わるとはあまり思えなかった。
恋人だろうが、愛妻だろうが、生涯最愛の存在であることに変わりはない。イザヤールは微笑み、キメラのつばさを彼女の待つ地へと向け放り投げた。〈了〉
各地は今冬だが、常夏の地であるアユルダーマ島は、寒いどころか常と変わらず海と共に在るのに相応しい気候だ。冬のウォルロから王者のマント姿のままツォの浜を訪れたイザヤールは、眩しい太陽に少し息を吐いてマントを脱ぎ捨てた。
今日は、ミミの代わりにこの集落の長のところへウォルロの名水を届けに来たのだった。今頃ミミは、妖精たちの揉め事の仲裁にあたふたしているところだろう。また変なことを聞かれて困っていなければいいがと、イザヤールはかすかな苦笑を浮かべた。妖精たちはどうも、ミミに頼み事をしたいというよりも、恋愛の進展度を聞きたくて呼び出している節があるからだ。他人の色恋沙汰を聞いて何が面白いのだろうといつも思うのだが、だからイザヤールさんはボクネンジンって言われるのヨとサンディに言われた。
朴念仁で構わない。結局、天使から人間になろうと、生まれつきの性根はなかなか変わらないのだから。不器用なりに、愛しい者を大切に慈しむ術を、きっと生涯手探りで探していくのだろう・・・。
ここに来たついでに錬金の素材も買っていくかと道具屋に寄ると、珍しく桃色の珊瑚で作られた物が売っていた。輪切りにした珊瑚を花びらに見立て花の形に組み合わせた髪飾りで、中心にはピンクパールがあしらってある。少し幼いデザインかもしれないが愛らしく美しい。きっとミミに似合うだろう。
錬金素材と一緒に髪飾りを一つ買うと、店主は喜んだ。
「まいど!これは、村の新しい名物にしようと思っているんだ。あんたの彼女さんがこれを着けて歩いてくれたら、きっといい宣伝になるよ!もしかして、彼女さんの誕生日かい?」
「いや、特に何もない日だが」
「へえ?理由も無いプレゼントなんて、怪しまれないかい?ご機嫌取る理由があるんじゃないかって勘繰られるんじゃないか?」
「彼女は素直な子でな。素直に心から喜んでくれる」
「そうかい、それはめでてえなあ。でもな、それって財布が別の間だけだぜ。結婚した途端に、こんな無駄遣いして!って叱られるようになるのさ〜」
「そういうものか?」
「そういうもんさ!」
道具屋を出てから、イザヤールは髪飾りをポケットにしまい、代わりにキメラのつばさを出した。確かに、おとなしかった娘が、所帯を持った途端にみるみる逞しくなる例を、彼は守護天使の間ウォルロ村で山ほど見てきた。だがそれでも、夫婦という形になったところで、ミミが変わるとはあまり思えなかった。
恋人だろうが、愛妻だろうが、生涯最愛の存在であることに変わりはない。イザヤールは微笑み、キメラのつばさを彼女の待つ地へと向け放り投げた。〈了〉
実際に所帯を持つといろんな面で逞しくなる女性は多いですが確かにミミさんの場合、今とあまり変わらなさそうですね。
でもきっとミミさんはお婆ちゃんになっても可愛らしく、イザヤール様はお爺ちゃんでも格好いいのでしょうねぇ(*´ω`)フフフ
女主「ふふふ。確かに夫婦になってもミミさんは変わらなさそうですが、あちらのイザヤール様本当にミミさんのことが好きなんですね」
イザヤール「………そういうお前も妻になっても変わるとは思えないがな(小声)」
女主「イザヤール様、何か言いましたか?」
イザヤール「いや。あちらの私が少々羨ましくてな」
女主「えっ。わ、私何かイザヤール様にご不快にさせてしまうことを致しましたかっ?」
イザヤール「いや、それは一切ないから安心しなさい。ただあちらの私は敬称で呼ばれてはいるが敬語は少しずつ取れているだろう?不満とまではいかないが恋仲なのに敬称と敬語のままは他人行儀のように感じるから、そろそろ変えてほしいと思ってな」
女主「え!あ、えっと…そ、それは…っ」
イザヤール「(しどろもどろになる女主に苦笑いしながら頭を撫でる)…まあ元々の性質もあるし今すぐにというわけではないが、せめて様づけは外せるようにな?」
女主「は…はい…」
十数年後
イザヤール「(過去のやり取りを思い出して)………そういえばそんなこともあったな」
女主「イザヤールさん、何か言いましたか?」
イザヤール「いや。いつの間にか『さん』呼びが定着したな、と思ったんだ」
女主「まあ。様付けをするなと言ったのはあなたではないですか」
イザヤール「まあそうなんだが、ただ懐かしく思っただけさ。あの頃は呼ぶように促してもなかなかしなかっただろう?」
女主「……そうですね。あの頃の私は弟子だったときの癖が残ったままというのもありましたが、恋仲になったとはいえ師だった方をそのように呼ぶなんて恐れ多いと思っていたので」
イザヤール「そうだったのか?」
女主「ええ。ただイザヤール様でもイザヤールさんでも関係ない、些細なことなんだと気付いてからは少しずつ呼ぶように心がけましたが」
イザヤール「うん?どういう意味だ?」
女主「呼び方が変わっても私の愛している方なのには変わらない、ということですよ」
少し離れた場所から女主達のやり取りを聞いた子供達
「お母さんってお父さんのこと様付けしてたんだ」
「元々師弟関係だったらしいし、おかしくはないんじゃない?まあラヴィエル叔母さんの話だと結婚して何年か経ってようやく『さん』付けになって、僕達が生まれてから『お父さん』呼びが増えたらしいけど」
「それにしてもお母さん、相変わらずこっちが恥ずかしくなるようなことをよく照れずに言えるね」
「母さんにとって普通のことだからさらっと言えるんじゃないかな?まあどちらにしても」
『私(僕)にはあんな甘い台詞絶対無理!』
とはいえ女主(と思ったことは基本ストレートに言うタイプのイザヤール様の)血をしっかり受け継いでる子供達なので、お相手ができたときは計算など一切なく甘い台詞をさらっと言うのでしたw
いらっしゃいませ、こちらこそせっかく頂いたコメントへのお返事が遅くなってしまいましてたいへん失礼致しました!確認をうっかり数日忘れていた私と、メンテナンスと称して勝手にコメント通知機能を解除したブログ運営会社許すまじ・・・(泣)
確かにいい意味でも悪い意味でもいつまでも少なくとも内面は変わらなそうです当サイトイザ女主。イザヤール様には超絶カッコいいお爺様になってほしいものです。
おお、また「幸せご家族エピソード」キター!♪当サイト女主の敬語が少しずつ取れていることに気付いてくださってありがとうございます☆そちらの女主さんは、時間はかかるけど「さん」付けになるのですね♪それも萌えますね〜♪
お子さんたちの前でさらっと激しくラブラブなこと言ってるし!そちらのお二人も生涯こんな感じなんでしょうね、ステキです☆
お子さんたちもすごいモテそうな感じになりそう☆お母さんよりは恥ずかしがりやさんじゃなさそう?ですね!