セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

リアルお菓子の家

2013年12月20日 23時38分34秒 | クエスト184以降
今週は間に合いましたよかった~の捏造クエストシリーズこと追加クエストもどき。今回お使いクエスト話であり、ドイツのクリスマスはお菓子の家をご家庭で作ったりするんですねへえ~。という訳でクリスマスネタの一環としてお菓子の家クエスト話ともなりました。お菓子の家と言えば、迷い込んだ先には怖い魔女が待っているものですが、今回待つものは果たして・・・。しかしタイトルからもご推察される通り、平和で脱力系な内容でございますことを予めお断りしておきます。

 クリスマスも間近、セントシュタインの城下町にも雪が降り始めた。まだ積もるまでには至らないが、今年はホワイトクリスマスになりそうだ。教会での子供たちの為のイベントの手伝いを終えたミミは、フード付きマントにすっぽりくるまって、家路・・・すなわちリッカの宿屋に向かって急いでいた。
 雪が舞う黄昏の街の中、吐く息も白い。急ぐのと体を温めるのも兼ねてミミは、少し駆け足で通りを走った。だが、とある家の窓辺に飾られている物を見て、ふと足を止めた。家族で作ったのだろうか、小さな可愛らしいお菓子の家が、暖かなランプの灯りを背に受けて、建っていた。この場合「置かれていた」と言う方が正しいのだろうが、なかなかよくできていて、如何にも小人でも住んでいそうな雰囲気だったのだ。
 おもちゃ屋や菓子屋のショーウインドーに張り付く子供のような熱心さで、ミミはうっとりとそのお菓子の家を眺めた。壁は固い焼き菓子、屋根はメレンゲと砂糖衣で被ったケーキ、窓ガラスは透明な板状の飴で作られているようだ。他にもチョコレートやカラフルなマジパンやナッツ類で、綺麗に飾り付けされている。
 ふと我に返って、フードや肩にうっすら雪が着いたほど眺めていたことに気付いて、ミミは自分で自分がおかしくなって笑って、名残惜しそうに窓から離れた。このお家の人に見つからなくてよかった。お菓子の家に感心されるのは嬉しくても、小さな子供でもない私にあんまりに熱心に眺められていたら、びっくりするかおかしく思うかもしれない。そう内心呟いて彼女は、再び駆け足しようとしたそのとき、ものすごく馴染みのシルエットを、夕闇の中に見つけた。
 この背丈と体格は、やはりフード付きマントに身を包んだ大切なあの人。
「イザヤール様」
 名を呼ぶと同時にミミは駆け寄り、瞳を輝かせて愛しい顔を見上げた。イザヤールは、いくらか照れくさそうに微笑んで、呟いた。
「すまない、おとなしく待っているつもりだったが、つい出てきてしまった。・・・入れ違いになってしまうかもしれないのにな」
「ううん、迎えに来てくれて、嬉しい・・・お待たせしちゃってごめんなさい」
「いや。可哀想に、こんなに冷えて・・・」
 大きなあたたかな手が、フードや肩の雪をそっと払い、淡い薔薇色だが冷たい彼女の頬をそっと包んだ。
「自業自得なの。あれを、見ていたから」
 頬に感じるぬくもりにうっとりしながら、ミミはイザヤールの手をそっと引いて、先ほどの窓辺に引き返した。そして、お菓子の家を見せた。
「なるほど、これはよくできているな」
 肩を並べてまた少し立ち止まって眺めてから、二人は互いに預けた手をそのままに、今度こそ家路に就いた。

 その翌日。ミミとイザヤールは、前からの予定でアルマトラに会いにアルマの塔に出かけ、そこでアルマトラの友人であるスライムから、面白い情報を得た。
「この塔の西に森があるでしょ?そう、ミスリル鉱石が落ちている先の。あの森に最近、誰かが住んでるみたいなんだ」
「誰か?」
「うん、ボクも直接見たわけじゃないけど、すごい年取ったおばあさんらしいよ」
 アルマトラはこの件に無関心らしく放っておけと言ったが、気になったのでミミたちは帰りにさっそくその森を訪れてみた。
 すると、森の奥から、この場にふさわしくないいい匂いが流れてきた。お菓子を焼いているような、そんな匂いだ。不思議に思ってその方向に行ってみると、森の一角にとんでもなく大きな石窯があって、一人の老婆がせっせと菓子の生地をこねていた。
「何をしているんですか?」
 おずおずとミミが尋ねると、老婆は二人をちらりと見てから、無愛想に答えた。
「見ればわかるじゃろ。菓子を焼いておるんじゃ」
「どうしてこんなところで?」
「わしは菓子で家をこしらえようと思ってな。今はこうして材料を焼いておるんじゃ。・・・しかしまだまた材料が足りんのう。そうじゃ、おまえたち、せっかく通りかかったんだから、ちょいと頼まれてくれんか」
「何をすればいいんですか?」
「エラフィタの小麦粉とバター、サンマロウの蜂蜜、グビアナの香料にナザムの卵を手に入れてきてくれんか。必要な量と細かいことはほれ、このメモに書いてある」
 メモには、業務用並のかなりの分量が書いてある。ミミがちょっとためらってイザヤールの顔を見ると、彼は一瞬だけ鋭い視線で老婆を見つめていたが、すぐに楽しげな笑顔になって、言った。
「面白そうじゃないか、ミミ。手伝ってみないか」
 確かに、人が本当に住めるお菓子の家を作るのは、楽しそうだ。冬だから、虫などの心配もとりあえずはなさそうだし。ミミはクエスト「リアルお菓子の家」を引き受けた!

 とりあえず軽い物から始めようということで、まずはルーラでグビアナに行った。バニラやシナモン、スターアニスなどの香料は、バザールですぐに手に入った。
 それからサンマロウに行って蜂蜜を買い、エラフィタに移動した。町から町への移動で、ルーラで行けるので、移動自体は楽だ。エラフィタに着くと小麦粉はすぐに分けてもらえたが、バターが売り切れていた。
「すまねえがあんたたち、ひとっ走り牧場に行って、牛の乳を採ってきてくれねえか。そしたら急いでバター作ってやるからよ」
 そんなわけでミミとイザヤールは村の外の牧場に行って牛の乳絞りをし、大きなバケツ四つにたっぷりクリームの浮いた牛乳を村に持ち帰り、クリームをバターにする重労働も手伝って、イザヤールが重い小麦粉袋とバターの樽を持って村を出た。彼は、割れやすい蜂蜜と卵を頼むと言って、ミミに重い物を持たせなかった。いくつもの小麦粉袋や樽を器用に重ね、バランス良く担いでいる。
「私だって今はすごい力持ちなのに・・・」
 ミミは少し不満そうに唇を尖らせる。そんな彼女に彼はいたずらっぽく笑いかける。
「それはわかっている。だがおまえには、卵の籠を割らずに持っていく難題が待っているぞ。ある意味一番難易度が高い」
 卵も無事手に入り、箱舟でアルマの塔の西の森に戻った。その道中、箱舟に居たサンディは、大量の菓子材料に驚いてから、首を傾げた。
「そのおばーさん、超アヤシクね?お菓子の家のおばーさんってさ、なんかどっかで聞いたことがあるよーな・・・」
「でも、面白そうだし、変な材料今のところ無いし」とミミ。
「いずれにしても、ミミにお菓子の家作りをさせてやれそうだからな」とイザヤール。
「イザヤールさん、もしかして、その為にミミにクエスト引き受けさせたワケ?!どこまで甘いのヨ!」
 でも確かに面白そうだと、この後はサンディも着いていくことにした。

 頼まれた材料を全て持って老婆の所に行くと、彼女は目を細めて材料を受け取り、そしてミミとイザヤールに告げた。
「じゃあわしは菓子を焼き続けるから、あんたらは、そこに石積みの家の土台があるじゃろ、そこに煉瓦みたいに固い菓子を積んでいっておくれ。ほれ、そこに設計図があるから、その通りにやるんじゃぞ」
 元々むしろ組み立ての方をやってみたかった二人なので、ミミとイザヤールは張り切って材料を組み立て始めた。焼き菓子の煉瓦を接着するのは、溶かした粉砂糖だ。サンディも気まぐれに手伝い、たまに砂糖をつまみ食いしたりしている。
 とはいえかなり根気の要る作業である。さすがに少々疲れた二人が休憩している間、老婆が代わりに煉瓦を積んだ。その姿は、既にできている壁に隠れてよく見えない。ミミとイザヤールが切り株に座って建てかけの家を眺めていると、信じられない速さで焼き菓子の煉瓦は積み上がっていった。まるで手が無数にあるかのようだ。老婆の年齢からするとあり得ない。
「イザヤール様、あのおばあさん、やっぱり、もしかして・・・」
 ミミがそっとイザヤールに囁くと、彼も頷いた。
「・・・だろうな。だが、もう少し様子を見よう」
「はい」
 透明な板状の砂糖の塊でできた窓ガラスを嵌めたり、薄く固い焼き菓子の屋根板の上に、ふんわりしたスポンジでできたロールケーキの丸太を載せる楽しい作業には再びミミたちも参加し、色の着いたメレンゲやマジパン、ボンボンやキャンディ、チョコレートで思い思いに飾り付けをして、ついにお菓子の家は完成した!入り口の扉は巨大な板状のキャンディでできている。
「すごい・・・」
 人が入れるサイズのお菓子の家に、ミミは濃い紫の瞳を輝かせてみとれ、イザヤールは随所にちりばめた職人技に満足そうに頷いていた。老婆も完成した家を満足気に眺めていたが、急に不気味な笑い声を上げた。
「ヒッヒッヒ・・・これで、間抜けな人間のガキどもが集まってくるっていう寸法じゃよ・・・。さあ、おまえたちはもう用無しじゃ、ここで死ぬがいい!」
 老婆は正体を表した!「じごくのメンドーサ」が現れた!
 だが、とっくに気付いていたミミとイザヤールは・・・ついでにサンディも・・・驚かなかった。
「そんなことだろうと思っていたの」ミミが呟いた。
「なんじゃと?!では何故手伝った!」
 じごくのメンドーサが叫ぶと、二人はあっさりと答えた。
「実物大お菓子の家が作ってみたかったから」
「きい~ふざけおって!地獄で後悔するがいい!」
「あ、その前に」イザヤールが淡々とした声で尋ねた。「こんな人里離れた、人間もほとんど居ない場所で、子供たちをどうやって誘き寄せるつもりだったのか、教えてくれないか」
「・・・」
 じごくのメンドーサは固まってしまった。どうやらそれをすっかり忘れていたらしい。超デコ盛りおバカなメンドーサかよ!とサンディが呆れて呟く。ここでは、子供たちが迷い込むのを待っていたら、間違いなくその前にお菓子の家は傷んでしまうだろう。
「わ・・・わしの努力が・・・」
 じごくのメンドーサはへなへなと座り込んでしまった。ミミは、その肩(じごくのメンドーサに肩があるとすればの話だが)をぽんと優しく叩いて、囁いた。
「人間の子供はやめて、お菓子を、食べよう?その方が絶対おいしいよ」
「そうじゃな・・・わしゃもう子供を拐うのは諦めよう・・・元々甘党じゃし」
 こうしてミミたちとじごくのメンドーサは完成したお菓子の家の中に座って、思い思いの場所を少しずつ食べ、お茶を飲んだ。家の中はほんのり甘く香料やバターの香ばしい香りが漂い、案外暖かく居心地よかった。それからじごくのメンドーサは、余った材料で「クリスマスケーキ」を焼いて、ミミたちにくれた!そして律儀にも集めた材料の費用も返してくれた。
 念のためアルマトラに不穏なことが起きないかたまに見ていてくれるよう頼んでから帰ったミミとイザヤールだったが、しばらくして再び様子を見に来ると、お菓子の家は石の土台だけを残して無くなっていた。スタッフならぬ近所のギガンテスたちが、あの後おいしく頂いたのだという。そしてじごくのメンドーサは、モンスター専門の菓子屋の開店を検討していた。
 でもいつか、また中に入れるお菓子の家を作って、リッカたちにも見せたいな。そんなことを思ったミミだった。〈了〉
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