セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

見るなの倉庫

2018年04月22日 09時47分45秒 | クエスト184以降
座った寝オチしてしまいました真っ白な灰かよすみません・・・状態でようやく完成の追加クエストもどき。昔話の「見るなの蔵」風な話ですが、当サイト女主みたいなタイプには果たして有効か否か。今回イザヤール様の出番が無いと思いきや、不在でも存在感を見せつけます。物理的に居なくても支えになる話が書け満足です☆

 キャプテン・メダルに会う為にカラコタ橋に来ていたミミは、橋の上に佇んでいる一人の老人を見かけた。ひどく痩せていて、高く尖った鼻と貪欲な色を浮かべた目が酷薄そうな印象を与えていた。
 ミミが彼の側を通り過ぎようとしたとき、老人はふいに彼女に声をかけた。
「娘さん、あんたはとても誠実そうなお人じゃな。一つ頼まれてくれんか」
 いきなりの頼みごとをされるのは馴れているのでミミは立ち止まり、澄んだ濃い紫の瞳でじっと彼を見つめて答えた。
「ご用件によります」
 ミミの可憐だが強い意志を秘めている存外に力強い眼差しに、老人は一瞬戸惑ったようだったが、皺だらけの口を歪めるように笑って言った。
「なあに、簡単なことじゃよ。わしは旅をしているんじゃが、ちょっとでかい土産を買ってしまってな。持ち歩くのも厄介だし、家の倉庫まで届けてほしいんじゃよ」
 それくらいなら造作は無さそうだが、家がとんでもない場所にあるとかなのかな、とミミが思っていると、そんな彼女の考えを読んだように老人は続けて言った。
「わしの家は、ビタリ海岸の高台にある。眺めがいいので、最近建てさせたんじゃよ」
 それなら天の箱舟で問題なく行けそうだとミミが思っていると、老人は彼女に鍵束を差し出した。
「ほれ、これが家と倉庫の鍵じゃ。どこを開けても構わんが、十三番目の倉庫だけは、決して開けてはならんぞ。預けた品は、七番目の倉庫に入れておいてもらいたい。頼まれてくれるかの?」
「わかりました。お任せください」
 ミミはクエスト「見るなの倉庫」を引き受けた!
 老人はミミを宿屋の前に待たせておいて、中から引きずるように大きな包みを運んできた。その大きさや形状は、まるで人を袋詰めにしているかのようだった。ミミが怪訝な顔をすると、老人は落ち着き払って言った。
「これは人形じゃよ。わしのコレクションに加えようと思ってな。これは中を見ても構わんぞ。どうせ倉庫に入れる時に、袋から出すんじゃしな」
 開ける前にミミは袋ごと持ち上げてみた。確かに大きさほど重くはなく、藁の詰まったもの、という感触だ。袋の口を開けて見てみると、人形に化けた悪魔メフィストフェレスにそっくりな形状と色の人形が入っていたが、ただし顔は全く違う、スライムの平和な顔だった。
「メフィストフェレスのレプリカなんじゃが、顔はスライムという珍しい人形じゃ。これはレアなコレクションなんじゃぞ!」
「確かに珍しいですね・・・」
 こんなお茶目な物をコレクションするなんで、このおじいさん、顔はちょっと怖いけれど、意外とユーモラスな人なのかな、と思って、ミミはにっこり微笑んだ。大切にお預かりします、と言って、ミミは小さな女の子が誕生日に貰った豪華な人形を抱える丁重さで預かった荷物を抱えた。

 ミミが天の箱舟を呼んで中に入ると、暇そうで眠そうにしていたサンディが目を輝かせて飛び起きた。
「何なにナニ?アタシにお土産?」
「違うの、これは預かりもののお人形なの。サンディのはこっち」
 ミミはサンディにサンマロウ土産のエディブルフラワーキャンディの包みを渡した。
「ありがとーミミ!・・・へ〜、人形?マウリヤちゃんみたいな?どれどれ見せてよー」
 言うやいなやサンディは、ミミが止める間もなく預かった方の袋の中を覗いた。
「何コレ!メフィストフェレスかと思ったら、顔だけスライム〜?マジウケるんですケド〜!」
「サンディったら・・・!これじゃ、目的地の倉庫には、連れていけないね」
「え、何なに?」
 ミミは引き受けたクエストの内容と、目的地を話した。
「開けちゃいけない倉庫?超アヤシイんですケド!しかもそのじじい、開けるなって言った倉庫の鍵ごと寄越したんデショ?それって絶対アレじゃん、芸人が熱湯風呂の前に立って押すなよっていうアレ!」
「熱湯風呂・・・????」
「とーにーかーくー、押すなよってのが押せという意味なよーに、ホントは開けてほしいんじゃないの?」
「そうかなあ・・・?だって、本当に見られたくないプライベートな場所かもしれないよ?ポエムや出せなかったラブレターがしまってあるとか」
「アンタってホントロマンチストよね〜。善意に解釈し過ぎだし!やっぱしアタシがついててあげなきゃダメよね〜」
「え、サンディ来てくれるの?ありがとう♪・・・でも、開けちゃダメって倉庫開けたりしないよね?」
「アンタがしないって言ったら勝手に開けたりしないって。・・・ところで、今日イザヤールさんはどーしたの?」
「私の代わりにルイーダの酒場の店番引き受けてくれていて・・・後で待ち合わせしているの♪ベレンの岸辺で一番星見ようって♪」
「アンタらが元天使って知ってなかったらキザね〜って言ってるトコだケド、ま、いーわ」
 カラコタ橋からビタリ海岸の高台までは天の箱舟ならごくごく近距離だったので、こんなやりとりの間にとっくに通り過ぎていた。
「あ・・・行き過ぎちゃった。戻らなきゃ」
「まったく〜、何やってんのよ」
 引き返して二人は、今度こそようやくビタリ海岸の高台に着陸した。

 高台の山頂寄り南側に、確かにぎっしりと建物が集まっていた。小さな家を囲むように倉庫が寄り集まっている奇妙な作りだ。ミミは、まずは本宅らしい中心の建物の玄関扉をノックしてみた。すると中から、ウィッチハットのような帽子を深く傾けてかぶって片目を隠している少年が出てきた。
「じーさんのお使いかい?ご苦労さん。・・・あれ?おまえは・・・いやなんでもない。届けものをしまったら、十三番目の倉庫以外は、好きに見てもいいぜ」
 そう言うと彼は、さっさと家の中に引っ込んでしまった。留守番が居たのなら、何故おじいさんは預かりものは彼に渡すよう言わなかったんだろうとミミは少し怪訝に思ったが、留守番の人にはそこまで頼まなかったのかもしれないと思い直した。そして、七番目の倉庫に向かった。ぐるりと囲む建て方ではどれが何番目か迷うところだが、各倉庫の壁それぞれに一から十三まで数字が書いてあるので、迷い様が無かった。
 ミミは七と書いてある倉庫の鍵を開けた。すると中には、床に奇妙な図形が描かれているだけで、他には何も無かった。
「やっぱりめちゃめちゃ怪しいんですケド・・・」
 サンディが呟く。ミミはためらったが、何が起こるか見届けようと腹をくくって、袋から人形を出して部屋の床に座らせた。しかし、特に何も起こらなかったので、安堵の息をついた。
 それからミミは、せっかくなので倉庫を一から十二まで見ていくことにした。
「それとも、さっさと帰った方がいいと思う?」ミミはサンディに尋ねた。
「んー、ヤな予感バリバリのバリンバリンだけど、何があるのか気にもなるよねー。ちらっと見てこー」
 サンディはそう答えつつも、ちゃっかりミミの背後に隠れ気味の体勢を取った。ミミは一番目の倉庫を開けた!
 中には、小麦などの穀物がぎっしり詰まっていた。
「超フツーじゃん。つまんない〜」とサンディ。
「普通がいいと思うけどなあ」
 ミミは言って扉を閉めて、二番目の倉庫に向かった。
 二番目の倉庫には、樽がぎっしりと詰まっていた。ワインの樽のようだ。全て壊してちいさなメダルがあるか確かめたいところだがそれはぐっと堪えて、三番目、四番目と見ていくと、三番目の倉庫にはツボが、四番目の倉庫には何故かキノコがぎっしりと生えていた。
「何故キノコ・・・?」ミミは首を傾げる。
「キノコルームってヤツじゃね?」
「何それ?」
 五番目には薪が、六番目には夏に備えた氷室の為か雪が、七番目は先ほどの人形が変わらない姿勢で座っていて、八番目の倉庫には麻や綿が、九番目には石炭が詰まっていた。どれも生活必需品の備蓄のようだ。
 この調子では何事も無いかもとミミは安心したようながっかりしたような気持ちになり、サンディはつまらなそうにしている。しかし、二人は十番目の扉を開けて驚いた。錬金にも使える「てっこうせき」や、それを加工したらしい鉄のインゴットや鋼のインゴット、そして銅のインゴットもあった。
「一個くらい貰ってもバレなくない?」
「サンディったら、冗談でもダメよ」
 十一番目の倉庫は金銀プラチナ、ミスリルの鉱石に金塊がゴロゴロし、十二番目の倉庫は石材と共に色とりどりの宝石の原石や、蓋を開けた宝箱にはカットした宝石が詰まっていて、下がっている袋からは真珠の数珠が垂れて覗いていた。
「綺麗ね・・・」
「うんっ、超デコってる♪」
 ミミとサンディは宝石の織り成す色彩をうっとりと楽しんでから、扉を閉めた。
「なかなか楽しかったね、じゃあカラコタ橋に報告に行こうか」
「十三番目はスルー?ま、決めるのはアンタだけどね」
 ミミとサンディが帰ろうとすると、家に居た少年がいつの間にか立っていて、意外そうに呟いた。
「おまえ、最後の倉庫は見ていかないのか?」
「?ええ、だって見てはいけないんでしょう?」
「ああ、そーなんだけどさ、もっとスゲーお宝有るとか、何が入ってるとか気になんねーの?」
「気にはなるけど、人の秘密は尊重しないと」
 すると少年はくるりと背を向けてまた家に入っていったが、気のせいか舌打ちしたような音がしていた。
「やっぱし開けさせたいんじゃね?びっくり箱があるとかさ〜」
「びっくり箱ならパンドラボックスで馴れてるの」
 今度こそ帰ろうとしたミミとサンディだが、そのとき、十三番目の倉庫の中から悲鳴が聞こえた。
「キャー!助けてー!」
 ミミはそれを聞いてぴたりと歩みを止め、十三番目の倉庫に駆けつけた。家に居る少年を呼ぶことも考えたが、これが事件で彼も共犯だとするとそのためらいで間に合わなくなる可能性がある。だが、扉の向こうからは、通常の生き物の気配ではなく、禍々しい気配しか無かった。一瞬どうしよう?と迷った彼女をだめ押しするように、中から別の声が、ものすごく馴染みのある声が聞こえた。
「ミミ、助けてくれ!」
 それはイザヤールの声だった!
「イザヤールさん?!なんで?!」サンディが叫ぶ。
 だが、ミミは開けなかった。
「・・・やっぱりこれは罠なのね・・・」ミミは呟いた。「イザヤール様は、緊迫しているとき、私に決して『助けてくれ』とは言わないもの・・・。こんなとき、イザヤール様は・・・『ミミ、来るな!罠だ!』と言ってくれるわ」
 すると、ちくしょー!という声がして、倉庫の中から家に戻った筈の少年が飛び出してきた!
「だから見習い天使は大っ嫌いなんだよ!俺の声帯模写が効かないなんて!」
 少年の姿が煙に包まれ、なんと「みならいあくま」が正体を表した!十三番目の倉庫の中には、宝の地図の洞窟の魔王の一人シドーにそっくりな像が飾ってあって、先ほどカラコタ橋で別れた筈の老人が祈りを捧げていた。
「開けなかったことは褒めてやろう、だが、結局は同じことだ。神の生け贄になるがよい!」
 邪神を信奉する神官「きとうし」が正体を表した!七番目の倉庫からは、普通の顔に戻ったメフィストフェレスが飛び出してきた!
「やっぱしワナだったんだ〜、でも、ワナにかける相手のチョイス、超間違ってるんですケド〜」
 サンディが呟き、ミミは剣を抜いた。
 メフィストフェレスのルカナンやヘナトスも虚しく、ミミは魔物たちを撃退した!すると、倉庫も家も消えて、「しんかんのブーツ」だけが後に残った。
 それからミミは、約束の時間通りに待ち合わせのベレンの岸辺に行った。
「おや、サンディも一緒だったのか。何かあったのか?」イザヤールが首を傾げる。
「別に〜、いつも通りなコトくらい?」とサンディ。
「今日も、イザヤール様に助けてもらったの」
 ミミは微笑んで言い、ますます不思議そうな顔の彼に、今日の出来事を話し始めた。〈了〉
コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« また土曜にも間に合わなかっ... | トップ | 天然強烈ラリホーマ »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
開けるなよ?開けるなよ…開けろよ! (神々麗夜)
2018-04-23 11:11:10
あーあ、罠にかける相手を間違えちゃいましたね。見習い悪魔、ミミちゃんの正体に気付いたまでは良かったものの詰めが甘かったなぁ
もしミミちゃんの言う通りイザヤール様の声で『逃げろ!』と叫んだ方がミミちゃんを罠に嵌められた可能性は高いでしょう。まぁ結果は変わらないでしょうけどw
しかし開けるなと言われた倉庫の中にはラブレターやポエムが入っているのかもと予想したミミちゃん、お花畑モード入っていたかな?

リリン「普通見ず知らずの他人に荷物預けるかしら?」
ククール「ミミちゃんなら他人の荷物を盗むなんてしないだろ。」
リリ「その鞄の中身が盗んだ物だったりとか」
クク「スライム顔のメフィストフェレスが?」
リリ「本当にスライム顔のメフィストフェレスの人形だったら高値で売れたりして(G∀G)」
クク「リリンまた目がGになってる…人の道に反することはするなよ?」

イザやん「ここで番組からのお知らせです!メフィストフェレス顔のスライムぬいぐるみを抽選で7名にプレゼント。応募方法は…」
ドカッ!ゲシッ!
クク「このお知らせは嘘だからなっ!」
リリ「応募しても何もあげないわよ!」
イザやん「ピクピク…
返信する
もはや伝統芸熱湯風呂リズム☆ (津久井大海)
2018-04-24 14:12:13
神々麗夜様

いらっしゃいませこんにちは☆
たぶん今回の罠のコンセプトは、「好奇心に負けた人間を邪神の生け贄にする」的なアレだったと思うんですが、確かに元天使と気付いたのに放置したみならいあくまの怠惰も敗因、しかもおっしゃる通りひっかかったとしても結果は同じでまさに人選ミスです(笑)

クエストって、見知らぬ他人にほいほい荷物を預ける的なおつかい系がけっこうあると思うんですよね。それこそ主人公が持ち逃げするんじゃないかなんて心配なんかせずに。これも一種の主人公補正なんでしょうか。
女主さん、美人が目をGにしてはいけませんてば(笑)スライム顔のメフィストフェレス人形、高く売れます・・・か?!

師匠、何故逆を行ったんですかwメフィストフェレス顔のスライムぬいぐるみ、ベスカラー辺りならハロウィン辺りに需要がある・・・か?番組ってなんですか、とか満載ツッコミどころを鮮やかに一瞬で片付ける皆様流石です!
返信する

コメントを投稿