セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

終焉の竜と勇者とロール姫36

2019年05月24日 23時57分35秒 | クエスト184以降
いつまで続くのかちまちま連載追加クエストもどき。前回のあらすじ、鍵の店で手に入れた鍵を使って洞窟の宿屋の閉ざされた扉を開けた・・・!

 扉の鍵は解除された。しかし用心深さに定評のあるこの元師弟は、いきなり扉を開けたりはしなかった。スライムベスたちは普通に出入りしているように見えるが、トラップがあるかもしれない。
 守備力の高い自分が先に、いいえ私が、という動作とアイコンタクトだけの無言の庇い合いが数秒の間起こったが、いつ魔物たちが戻って来るかもわからないので、結局二人は思いきって普通に扉を開けた。
 扉の先はなんと!・・・何の変哲も無い台所だった。レンガを組み合わせて作った調理台には暖かい火が燃えており、鍋では何かが煮込まれ、石造りの流しや素焼きの水瓶が設置され、籠には野菜が積まれており、天井からはハム等が吊るされている。
 総じて居心地のいい台所なのだが、残念ながら流しにはまだ洗う前の使ったフライパンや食器が山と積まれていた。
 ミミとイザヤールは用心しながら部屋に足を踏み入れたが、ミミの足元がつるりと滑って、バランスを失いかけた彼女をイザヤールが抱き止めるように支えた。
「ありがとう、イザヤール様。・・・これ、油を撒いたトラップ?」
「いや、単なる掃除のさぼりだな」
 出された料理はなかなかだったのに、衛生面がこれではと二人は溜息をついた。宿王リッカが見たらさぞかし嘆くことだろう。
 野菜籠や水瓶、ツボの中を覗いてみても特に何も無かった。どうやらただの台所のようだ。とはいえ何故厳重にカギをかけるのかの疑念は相変わらず有る。二人は手早く捜索を続けたが、片付いていない台所は、元村の守護天使のサガをいたく刺激した。
「ねえ・・・イザヤール様・・・」
「何だ?ミミ」
「怒らないで聞いてくれる・・・?」
「怒るものか。・・・むしろ、おまえの言いたいことがわかる気がするぞ」
「私・・・」
「流しを綺麗に片付けたいんだな?」
 恥ずかしそうに俯き、こくりと頷くミミ。
「それと・・・」
「床も綺麗に磨きたいんだな?」
 再び恥ずかしそうにこくりと頷くミミ。
「そんなことしている場合じゃないってわかっているのだけれど、どうしても気になって・・・」
「心配するな」イザヤールはにっこり笑って腕捲りした。「私も同じだ」
 こうして二人はこっそりと、しかしてきぱきとまずは食器洗いから始めた。手際のいい共同作業は慣れっこなので、汚れた皿やフライパンが瞬く間に綺麗になる。幸いモップも見つかったので、床もすぐに綺麗になった。
 台所が片付いて清々しい気分になったところで、ミミは調理した後の食材のゴミが果物の種や皮が多いことに気付いた。どうやら、夕べ泊まった自分たち以外の誰かにも食事を作っているらしい。まだ誰かが囚われているのかとも一瞬考えたが、そんな様子も無い。
 そこへ、案の定というか、スライムベスとゴーストが戻って来た。今度はミミたちは隠れずに彼らを迎えた。
「わー!おまえたち、何してんだー!てゆーか、どうやってここに?!てゆーか台所がすっげーキレイになってる!」
 慌てたり喜んだりと忙しいスライムベスたちにミミはいささかマイペースに尋ねた。
「普通の台所なのに、何故わざわざ鍵をかけているの?」
 ミミが尋ねると、スライムベスとゴーストはそっぽを向いた。
「そんなこと答えるわけないだろ!」
 すると、イザヤールが小さく笑って混ぜ返した。
「答えないのではなくて、答えられないのではないか?おまえたちのような下っぱに、重要な情報を伝えるわけないものな」
「バカにするな!」スライムベスはムキになって叫んだ。「ちゃんと知っているぞ!ここにカギをかけているのは、宿屋の客だけじゃなくて終焉の竜への食事も作っているからだよ!」
「バカかー!完全に乗せられてるじゃないかー!」ゴーストが慌ててこれまた叫んだ。「しょーがねえなあ、台所をキレイにしてくれたお礼にちょっとだけ教えてやるよ、ここで作った料理は、キメラのつばさで魔城へ運んでいるのさ。さあもうこれ以上喋らないからな!」
 ゴーストはスライムベスを引きずって高速で逃げ出してしまった。
 今のところこれ以上の情報は得られそうもない。ミミとイザヤールは顔を見合わせて少し苦笑してから洞窟を出た。〈続く〉
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