セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

夢のなかでも

2014年11月26日 04時27分22秒 | クエスト163以降
夜明け前更新になっちゃいましたがノリノリで書いたちょっと変化球イザ女主話。ほぼパラレル的な内容、そしてなんと最初から夢オチとばらしている斬新さです(笑)しかもメロドラマチック(爆)夢の中の内容のベースは、間違いなくドラクエ6~。後半がものすごくはしょりです。でないと本当にパラレル話をきちんと書いた並のとんでもない長さになりそうだったもので。以前は夢の原因がムドーでしたが、さて今回は・・・。

 夢とわかっていても覚めない覚められない。それは、どんなに幸せな夢でも、悪夢の一種なのだろうか。

 ふわりと暖かくやわらかい布を肩にかけられた気配で、ミミは目を覚ました。どうやら、繕い物をしている途中で眠ってしまったらしいと、膝の上にある男物のシャツを見て、まだ半ば朦朧とした意識で彼女は思った。糸を通した針が、シャツにきちんと留められて光っている。
「起こしてしまったか?」
 毛布をかけてくれたイザヤールが、ミミの顔を覗き込んで申し訳なさそうに囁いたので、彼女は微笑んで首を振って答えた。
「ううん、いいの。ありがとう、イザヤール様」
 すると彼は、驚いた顔でミミを見つめた。
「どうした、ミミ?そんな呼び方をして・・・」
「え?」
 ミミも驚いて首を傾げると、イザヤールは更に動揺したように呟いた。
「急に・・・名前で呼ぶなんて。いつもは、『お兄様』なのに、どうした?何かあったのか?」
「え?え?」
 思いがけない言葉に彼女もまた動揺し、ミミは混乱のあまりにただイザヤールをぼんやりと見上げることしかできなかった。だが、そのぼうっとしている間に、芝居を見ているかのように今までの記憶が脳裏に浮かぶ。
 ミミは、小さな山奥の村に、兄のイザヤールと二人で暮らしている。両親は早くに亡くまるで覚えていない。彼女はときどき親友のリッカの宿屋を手伝い、村一番の強者の兄は、魔物から村を守ったり錬金の素材集めをしたりして生計を立てている。兄は村の女性に人気があるのにその自覚がさっぱり無く、自称ケンカ友達の美人で知的なラフェットという女性と相思相愛かとミミは気になっていて・・・違う、違う、私とイザヤール様は、と、ミミは混乱した頭で身を震わせる。そんな彼女を心配そうに見つめ、イザヤールは座る彼女の傍らに膝を着き、落ち着かせようと背中を優しくなでた。
 愛しい男の顔が、間近になった。きりりとした眉が心配の憂いでひそめられ、澄んだ濃い茶の瞳が、まっすぐにミミを見つめる。背をなでる手はいつものようにあたたかく、優しく、力強いのに、どこかおずおずとして、抱きしめてはくれない。
 それに悲しくなってミミは、自分でも思いがけない大胆なことをした。イザヤールの顔をそっと両手で挟み、引き寄せて彼女もまたじっと相手の瞳を見つめた。濃い紫の瞳が潤んで、熱っぽさと悲しさを湛えて妖しく煌めく。お願い、嘘か冗談だと言って、イザヤール様の言葉も、私のこのおかしな記憶も。そんな切ない願いを込めて、ミミはイザヤールの顔を引き寄せ、口づけた。
 イザヤールは一瞬、雷に撃たれたかのように固まった。常なら優しく食み返してくれる唇が、強ばったように動かなかった。何かと戦っているかのようにミミの背に置かれた手がかすかにわななき、力んで・・・だが次の瞬間、その手は彼女を引き寄せ、重ねられた唇は熱い吐息と共にゆっくりと動いて、ミミの薔薇色の唇をほしいままに貪り始めた。
 ああ、やっぱり冗談か何かだったんだ・・・と、ミミは安堵と愛しさで泣きそうになって、うっとりとキスに溺れた。だが、ようやく唇を離してイザヤールが言った言葉に、再び心臓が凍るような感覚に襲われた。
「すまなかった・・・。私は、なんてことを・・・ミミに、こんな・・・」
「どうして・・・」ミミは、ぽろりと涙をこぼして、呟いた。「イザヤール様、私のことを嫌いになっちゃったの?」
 するとイザヤールは、寂しげな、ぎこちない微笑みを浮かべ、諭すような口調で言った。
「それは違う。だが、いくら愛していても、妹にこんなことをしてはいけない、そうだろう?」
「だから、私たちは兄妹じゃないの」
 ミミは泣きながら必死に訴えた。すると、イザヤールの顔が強ばり、痛いくらいの力で彼女の肩をつかんで、固い声で尋ねた。
「どこでそれを?!・・・オムイ村長しか、知らない筈なのに・・・!誰から聞いた?!」
「え・・・なんのこと・・・」ミミは震え声で呟いた。「私は今、きっと悪い夢を見ているの・・・。イザヤール様と私は、兄妹なんかじゃなくて、恋人、なんだから・・・」
 イザヤールの顔が、寂しげに和らいだ。そして彼は、切なそうな優しく低い声で、囁いた。
「本当にそうなら、どんなにいいだろうな・・・。今が夢で、目が覚めたら、おまえと堂々と本当に恋人として、一緒にいられるのなら・・・」
 その寂しげな言い方にミミは不安と恐怖を覚えてただ違う、違う、と首を振り続けた。天使だったこと、いろいろあってイザヤールと恋人同士になれたことの方が夢で、兄妹として暮らしている今が現実だなんて、そんなことはあり得ない。絶対に、違う・・・。そんなミミの頭を優しくなでて、イザヤールは再び同じ質問をした。
「私たちが本当は兄妹でないと、誰から聞いた?」
 誰からも聞いていないのだから、ミミはただ首を横に振り続けるしかなかった。イザヤールは溜息をついて、諦めたように呟いた。
「まあいい。・・・この際だから言っておこう。ミミ、私は・・・。捨て子だったそうだ。子の居なかったおまえの両親が私を見つけて、息子として育ててくれた。その後に実子のおまえが生まれてからも、分け隔てなく育ててくれた。
・・・成人した時に、村長からそのことを聞かされた。私は、赤い立派なマントにくるまれて、不思議な剣と一緒に置かれていたから、ただの捨て子ではなく何か理由があるのではないかと、本当の両親を探して理由を聞いたらどうかとオムイ村長は言ってくれた。
だが、私は・・・おまえを置いて行きたくなかった・・・せめて、おまえが、嫁に行くまでは、兄として見守ってやりたかった・・・そうすることが大切に育ててくれた両親への恩返しだと思った。けれど私は・・・おまえを手離さなければならない時のことを思うと、とても苦しかった・・・ずっと、愛していた・・・」
 お兄様だけれど本当は兄ではなくて、恋人ではないけれどずっと愛してくれていて・・・混乱は続いていたが、ミミの不安と恐怖はいくらか薄らいだ。愛してくれている・・・。たとえ状況が変わっていたとしても・・・。ミミは、イザヤールをそっと抱きしめて、彼の体に己の体を預けた。そして、囁いた。
「イザヤール様、私も愛してる・・・。妹じゃなくて、恋人として傍に居させて」
「ミミ・・・」彼もまたミミを抱きしめた。だが、すぐに身を離した。「いや、いけない。私の本当の両親がどんな人間なのか、はっきりするまでは、私はおまえに触れる資格さえ無いんだ。私の本当の親は罪人かもしれない、おぞましい秘密で私を捨てたのかもしれない」
「そんなことない、それに、イザヤール様がどんな人から生まれていたって、関係ないもの・・・」
 目に涙を溜めながらも、決意で陰影を濃くした瞳で見上げるミミに、イザヤールもまた決意したように晴れやかな顔になって言った。
「ミミ、私が両親を探してくるまで、待っていてくれるか?自分が何者かはっきりわかったら・・・そのときは、おまえを、妹ではなく愛する伴侶として、迎えに来る。・・・たとえどんな残酷な事実を突き付けられても」
 ミミもまた晴れやかな顔になり、素直に頷いた。だが、少し緊張した声で囁いた。
「でもね、探しに行くのに、私もお供するから。・・・一緒に、連れていって」
 我儘と叱られるだろうかとミミが不安そうに見上げると、イザヤールは笑って大きく頷き、今度はためらいなく抱きしめた。
 しかし出発を決意した翌日、最寄りの王国からルイーダとロクサーヌという二人の美女が村を訪れた。彼女たちは、昔赤子の頃に戦乱で行方不明になった王子を探していたのだった。証しは王者のマントと光の剣だという。捨てられていた時に傍らにあったマントと剣がそれで、思いがけずも王の子と判明し、兄エルギオスと妹ラヴィエルと再会したイザヤール。
 イザヤールは、敵国の王ガナサダイに殺されそうになっていたところを、妖精サンディとアギロに救われ、安全な山奥の村の優しい人々のところに、将来の身分の証の品と共に連れられて匿われたのだった。
 ミミはただの村娘の自分が王子と共に居ることはできないと悩み苦しむが、イザヤールは王子の身分を捨てて懐かしい村に帰ろうと彼女に告げた。小さな村の小さな家で、ただし今度は夫婦として、共に暮らすことになった・・・。
 一連の騒動で繕いかけでそのままになっていたシャツの続きにかかって、幸せそうに針を運ぶミミ。そんな彼女を見つめイザヤールも幸福な微笑みを浮かべる。疲れたのか、ついうとうとする彼女に、イザヤールはそっと優しく毛布をかけて・・・・・・

「・・・きろ、起きてくれ、ミミ・・・!」
「ミミー!マジ起きてよー!ワサビ鼻に塗っちゃうわよー!」
 ミミは目を開けた。毛布をかけられてはいたが、椅子に座った状態ではなく、ベッドに横たわっていた。焦点が合ってくると、心配そうに覗き込むイザヤールとサンディの顔が見えた。
「あれ?私・・・」
 ミミが不思議そうに長い睫毛を瞬かせると、サンディが言った。
「ホント超ゴメン!『ゆめみるルビー』をいたずらでアンタの枕の下に入れといたら、何かいい夢見てるみたいで、めざめの花やザメハやツッコミでも起きなくて~!どうしようって思ったんですケド!」
「しばらく寝かせておこうと思ったが、一昼夜起きなくてさすがに心配になってな・・・」とイザヤール。
「ごめんなさい・・・」
「おまえは全く悪くないぞ。謝る必要などない。・・・サンディ・・・」
「キャー!イザヤールさん顔が超スペシャルマックスハイパーコワイんですケド!ゴメンってば~!じゃあアタシはこれで!お詫びのせかいじゅパフェ作ってくるからっ」
 サンディは逃げ出した!
 イザヤールは渋面でピンクの光がマッハで逃げ出す様を見送っていたが、ミミの心配そうなおずおずした声で、表情を和らげた。
「ねえ、イザヤール様・・・」
「うん?どうした?」
「イザヤール様、私のお兄様じゃないよね・・・?王子様だったり、しないよね・・・?元天使でお師匠様の、イザヤール様、だよね・・・?」
「?当たり前だろう。・・・そんな夢を見ていたのか?」
「うん・・・でもね、夢の中でもちゃんと・・・恋人、だったの・・・」
「・・・そうか。後で聞かせてくれ、今はとりあえず、何か食べよう。ずっと眠っていたから、お腹が空いただろう?」
「はい・・・ぺこぺこです」
「よしよし、今すぐ何か作るからな」
 可愛くきゅるると鳴った空腹音に、ミミは顔を赤らめてうつむく。でも、真っ先に口にしたいものは。
「イザヤール様・・・今が本当に夢で無いなら、キスして・・・恋人のキスを」
 返事の代わりに即座に実行され、ためらいなく抱きしめられる。心からの安堵と愛しさを覚えて、ミミは夢の中のどのときよりも一番幸せそうに微笑んだ。〈了〉
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